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 壁一面を気送管が這い回り、模様を描いているのでした。あっちへ曲がりこっちへくねりくるりと回って輪を書いて、もひとつ余分に輪を書いて、朝顔のつるみたいにくるくる巻いているのもあります。交差点だってたくさんあります。圧を逃さないように、きちんと交通整理がされています。

 交差点のひとつひとつにみどるさんが立っていて、右から左へ上から下へ、右折を左折を職人芸で指示していきます。来たなと思ったときにはもう目の前を過ぎているので、みどるさんにも自分が何をしているのか、あまりよくわかっていません。勘でさばいているのです。そういう風にできています。

 しゅっという音と一緒に、金属製の筒が管の中を進んできます。パチリとみどるさんは指を鳴らして、筒が交差点をどちらへ進むか決めるのです。気送管でできた網目の中を、たくさんの筒が動いています。みどるさんがどこかでちょっと気を抜くだけで、筒が詰まってしまうかも知れないし、ひどいときには正面衝突してしまうかもわかりません。とても大事な仕事なのです。

 筒の中にはラブレターが入っていると言われています。言われている、というのはみどるさんの誰も、筒の中身を見たことなんてないからです。キャビアや白い粉が入っているという噂もあります。でもみんな、中に入っているのがラブレターだといいなと思っています。

 筒のほとんどは、床から伸びた管を通って、天井の向こうへ消えていきます。そういうところもどこかラブレターっぽいと、みどるさんたちは考えています。天井の彼方から戻ってくる筒は滅多にありません。きっと事情があるのでしょうし、筒を地下に戻す仕事をしている別のみどるさんたちがいるのかも知れません。

 ああ自分たちに、と、みどるさんたちは思っています。もし自分たちが神様だったら、この流れていくラブレターを全部きちんと届けてあげられるのに、と。できるだけ説明もしてあげられるのに、と。ちょっと気持ち悪い文章を書く子だけれど、いい子だよ、とか。それとも、うまいことばかり書いているけど、この子は同じラブレターを誰にでも見境なく送り続けているんだよ、と教えてあげることになるかも知れませんけれど。

 でもみどるさんたちは筒の中の手紙に応えるどころか、その内容も知らないわけで、そもそもそこに手紙が入っているのかどうかさえも知らないのでした。筒の中身にアクセスする機能を持っていないのだから当然です。

 でも、こうして筒を交通整理することで、どこかで何かが叶っているのだろうと、みどるさんたちは思っています。そうだといいなと思っています。自分たちのこんな想像も、どこかでまた別のみどるさんたちが実行し、叶えてくれているのではないかと思っています。

中間試験に答えて、みどるちゃんグッズをもらおう!

中間試験です。
この小説のお題はなんでしょう?

中間小説は、実は事前に設定されたある「お題」に基づいて書かれています。
お題は毎回かならず変わります。
お題は毎回かならず「る」で終わる動詞です。
たとえば、第9回『王国の鍵』のお題は「かぶる」。
第8回『**な草をあなたに』のお題は「忘れる」。

さて、ここで問題です。

今回の『おねがい工場』に設定されたお題は何でしょうか?
いつものように、「〜〜る」で終わる動詞です。

SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと

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