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Open Middleware Report Web

数理的発想法9 バーコードリーダーが「本」と「図書館」をオープンにする 文:仲俣暁生

オープンソースのマインドを本棚に持ち込む

リブライズはウェブのサービスだが、「図書館っぽい」小道具も用意している。
リブライズはウェブのサービスだが、「図書館っぽい」小道具も用意している。

 オープンソースとコワーキングという流れから始まったリブライズだが、その登場は図書館関係者にとっても大きな衝撃だった。まったく「本」や「図書館」とは関係ないところから、簡単かつローコストに図書館的な場所を実現できるシステムが生まれてしまったからだ。

 しかしそれ以上にリブライズを歓迎したのは、プログラミングとも図書館とも関係のない、一般の人たちだった。人々はリブライズの掲げた「すべての本棚を図書館に」というメッセージを素直に受け止め、小さな図書館の環を広げていった。こうした小さな図書館は、いつしか「マイクロライブラリー」と呼ばれるようになった。2013年にはリブライズも参加して、第1回マイクロライブラリー・サミットが大阪で行われている。

 リブライズ自体は、オープンソース・ソフトウェアではない。しかしこの仕組みをつかった図書館の広まり方は、とてもオープンソース的に思える。

河村「リブライズは、オープンソースのマインドをそのまま本棚に持ち込んでいるんです。たとえばこの町の場合でも、地元の人がどんな知識をもっているのか、その実態はクローズドになっている。商店街にある金物屋のオジサンが何を専門にしているかは誰も知らないし、パン屋のお兄さんには工学系の知識があることも、誰も知らない。でもパン屋さんに、パンについての本だけでなく、工学の本が置いてあったらハッとするわけです。オープンソースとおなじで、そういう本をリブライズでどんどん公開していってほしい」

 私がはじめて「下北沢オープンソースCafe」を訪れたときも、図書室にプログラミングやデザインの本に混ざって置かれていた、認知科学系の本にまず目が留まった。大学時代の河村さんの専門分野を知り、彼への理解が深まった。本棚は、その人の関心や専門領域を可視化してくれる装置でもある。リブライズは本の貸し借りのためのシステムであるだけでなく、さまざまな関心や専門領域をもつ人たちが協業(コワーキング)できるための仕組みでもあるようだ。

河村「『図書館』という概念が、すでに世の中に普及してくれてよかった。リブライズは、その文脈を変えただけです。本とコミュニティの接点は、これまでは図書館にしかなかったと思うんです。本の世界でも、ビブリオバトルや一箱古本市といった、コミュニティとかかわるイベントが生まれてきた。これはコワーキング・スペースができはじめたときに、勉強会やイベントのかたちで人を集めたのと似ている。でもいったん常設の場所がでると、イベントを仕掛け続けなくても、何かが回り出した。それと同じように、本についてのイベントを仕掛け続けなくても機能する場所として、マイクロライブラリーがある気がします」

 リブライズの快進撃は続いている。ちょうどこの取材のとき、ニューヨークのブルックリンにある日本語学校からのお客さんが、「下北沢オープンソースCafe」を訪ねてきていた。リブライズのユーザーは国境を越え、海外に広がっている。「本」と「図書館」が、人と人を、コミュニティとコミュニティを結びつけていくさまを、リブライズは日々、可視化してくれているのである。

河村 奨 Kawamura Tsutomu

オープンソースとコワーキングとの親和性に気づき「下北沢オープンソースCafe」を2011年にオープン。以後、子供向けのプログラミング道場「CoderDojo」をアジアで初めて開くなど、カフェを拠点とした活動多数。ソーシャル図書館サービス「リブライズ 」の共同創始者兼デザイナー。コワーキング協同組合理事ほか。

地藏真作 Chikura Shinsaku

大学在学中に友人と教育系ソフト開発会社を起業。その後独立し、大規模プロジェクトの立ち上げ・開発指揮を執る。最近では、リブライズの他、コンセプト型シェアハウスサービスColish、テキスタイルサイトHappyFabricなど、スタートアップを中心に、運営や技術サポートを行っている。

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