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みどるな求人サイト 場所と人をつなぐ「日本仕事百貨」 文:西村 佳哲

取材は旅行より楽しい

打合せを終えて、施設内の案内を受け、屋外の散策へ。歩きながらお話もしつつ、撮影もされるところが器用でした。(酒井) 打合せを終えて、施設内の案内を受け、屋外の散策へ。
歩きながらお話もしつつ、撮影もされるところが器用でした。(酒井)

中村 そしてひと区切りついたあたりで、「お前こういう奴なんだな」とか、「社長ってこんな人だったんですね」という言葉を彼らが交わし合っている状況によく出会うんです。

 「他のスタッフの知らないところでそんな仕事をしているんだな」とか、「そういう休日を過ごしているのか」とか。

──あらためて、互いに発見がある。

中村 「会社をどうしてゆきたいのか」ということまで語られるし。意外と言葉を交わしていないんですよね。あらためて互いのことが共有される機会にもなる。それはそれでとても喜ばれます。取材だけど、よく「ワークショップを受けているみたいだ」と言われるんです。僕もすごく楽しい。

 そんな時間を経てできてゆく求人情報は、やっぱり求人票を出してもらって、そこに記入されていた給与等の項目情報を並べてゆくのとは違うものになる。

──諸条件でなく空気や相性を大事にしながら、人と職場がつながってゆくのが可能になりそう。

中村 そうですね。話を聞きながら疑問を感じたら、「いま人を採る必要があるんですか?」と訊いてみることもあるんです。「そうだね」ということもあるし「確かにそうだけど、それはこうなんでね」と更に解説をもらって納得することもある。そんな交わし合いを通じながら、求人記事の落としどころを見つけてゆくんです。

 家族には言いにくいけど、この出張は普通の旅行より楽しい。たとえば旅館に行っても普段なら観光客としか見られないけど、とても深いところまで聞かせてもらえるし入ってもゆける。メチャメチャ楽しい。あたらしく何かを見る・知る・経験するという意味では旅行よりずっと深い。取材は僕にとっても、いろいろなことを互いに知れる機会になっているんですね。

そこに合っている人がいる、ことが一番重要

地の物でつくられたお食事を、何度も「美味しい」と言いながらおかわり。ちょっとした仕事のお悩み相談会のような場がつくられていました。既に信頼されているようで、びっくり。(酒井)
地の物でつくられたお食事を、何度も「美味しい」と言いながらおかわり。ちょっとした仕事のお悩み相談会のような場がつくられていました。既に信頼されているようで、びっくり。(酒井)
地の物でつくられたお食事を、何度も「美味しい」と言いながらおかわり。ちょっとした仕事のお悩み相談会のような場がつくられていました。既に信頼されているようで、びっくり。(酒井)

中村 日本仕事百貨はこの夏で6年目です。最初は1人で始めました。1年後に法人化して今は6名。春からもう1人増えます。

──転機はありました?

中村 ないですね。方向性もやっていることも、劇的に変わったことはない。サイトのアクセス数は月間65万件くらいですが、これも毎年10万刻みで上がってきた感じ。常にじわじわと変化してきた。

 始めたことが一番大きな転機でした。人材業界にいたわけではないし、文章の仕事の経験もなかったし。最初の頃に書いた記事を読むと笑ってしまう。頼んでくださった方に「これくらいの金額です」と伝えたら、「この文章でこの金額はあり得ないでしょう(高い)」と言われました。いまにして思うとその通りです(笑)。

 最初から100%できるわけはない。にしても、まったく準備していなかったなと思う。でも何でしょうね。僕、始めるのが得意なので。

──始めるのが得意。

中村 得意なので、他の人なら始めないような状態でも、やってしまうんでしょうね。

 建築の大学院を出て、ある会社に3年7ヶ月勤めました。不良債券化した物件をまとめて売買したり、潰れかかっている会社の不動産を売却したり、ときには有効活用して、不良でない資産に戻したりしていた。建築分野に進んだのは、親が転勤族だったから地元がなくて欲しかったし、子どもの頃から秘密基地づくりが好きだった。自分の場所をつくりたかったんだと思います。

地の物でつくられたお食事を、何度も「美味しい」と言いながらおかわり。ちょっとした仕事のお悩み相談会のような場がつくられていました。既に信頼されているようで、びっくり。(酒井)
地の物でつくられたお食事を、何度も「美味しい」と言いながらおかわり。ちょっとした仕事のお悩み相談会のような場がつくられていました。既に信頼されているようで、びっくり。(酒井)

 そして場所をつくる仕事に近づいたけれど、「このままではいつまで経っても"自分の場所"はつくれないぞ」と思うようになって。日々悶々としながら、週6日あるバーに通っていたんですよね。定休日以外のほぼ毎日。家に帰る前に寄って、カウンターで時間をすごしていると心が落ち着いた。お酒も飲めばご飯も食べたし、内装の居心地もよかったけれど、あるとき「やっぱり自分は人に会いに来ているんじゃないかな」と思ったんです。

 「人」はいい場所をつくる上で、とても重要なものではないかなと。カウンターで酔っぱらいながら、そんなことを思った。

 もちろんどんな人でもいいわけじゃない。その場所に合う人をちゃんとつなぐことができれば、いい場所が世の中に増えてゆく。場所、というか職場とそこに合う人がつながると、その人もいきいきと働くし、店の居心地もいいし、僕は週6日も行くわけですよ。そこに合う人が、そこでいきいきと働いて居ることで。

 デザインとか、事業計画とか、場所づくりにはいろいろな要素があるけれど、やっぱり「そこに合っている人がいる」のが一番重要なことではないか。で、「それは求人なんじゃないか」と思い至ったわけなんです。それをやってみようと思った。