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みどるな求人サイト 場所と人をつなぐ「日本仕事百貨」 文:西村 佳哲

仕事を探している人は多い。
みんな、なにを求めているんだろう。

仲間を探している職場も多い。
どんな烽火(のろし)をあげれば、
いい出会いに恵まれるのか。

場と人の組み合わせをつくる、
ある求人支援サービスの話を
うかがってみた。

生きるように働きたい

取材先は福岡県宗像市にある「正助ふるさと村」。ほとんど目をそらさず、まるで自分が働く会社を面接しているかのように身を乗り出してお話をうかがう姿勢が、印象的でした。(取材に同行した写真家の酒井咲帆さん談) 取材先は福岡県宗像市にある「正助ふるさと村」。ほとんど目をそらさず、まるで自分が働く会社を面接しているかのように身を乗り出してお話をうかがう姿勢が、印象的でした。(取材に同行した写真家の酒井咲帆さん談)

中村 日本仕事百貨は求人サイトです。でも普通のそれではなく「生きるように働く人の仕事探し」をお手伝いしている求人サイトです、と答えている。

 逆の「生きるように働かない」とはどういうことか僕なりに言葉にしてみると、たとえば朝起きて「ああ会社か…」とため息をつき、電車に揺られ、仕事中は心を殺して働き、終業時間になって「よっしゃ! 終わったー」となるような。こんな質のオンオフがある働き方は「生きるように働く」こととはおそらく違う。共感できないものを売らなくてはならなかったり、「どうせ辞めるだろう」と思いながら働いているようなあり方も。

 みんな常に、「自分は生きている」なんて思いもせずに生きている。「生きている」というのはそれぐらいあたり前のことで、時間や環境、まわりの人々や、自分にかかわるあらゆるものと自然につながっている状況だと思うんです。全体が自然につながって連続している。ワーカホリックのように24時間働けますかという話ではなくて、そんな自然な感覚をもって働いていたい人たちの気持ちを、僕は「生きるように働く」という言葉で表現しているのだと思います。

みどるな求人サイト

 だから給料さえよければいいというスタンスとは、少し違いますよね。たとえばブルースタジオという建築のリノベーションや設計の会社があるのですが、そこは1人の担当者が、設計に限らずいろんな仕事をするんです。図面を引いて建物が竣工すれば一般的な建築家の役割は終了だけど、彼らは建った後も、そこからどうしてゆくか一緒に考えたりかかわってゆく。それが自分たちの仕事なのだと考えている。そこには、建築をめぐるあらゆることができる仕事がある。「そこまでやらなきゃいけないの」と思う人もいるかもしれないけれど、そこまでやってみたい人も、必ずいる。

──慣習的な業務範囲を越えて、仕事と暮らしが連続した生き方を、ごくあたり前の感覚で求める人たちはいると。

中村 はい。で、その人たちはどんな仕事を求めているかというと、職種や業種ということではなく、やっぱり「生きるように働く」人たちがいる職場なのではないかな、と思うんです。

その場の日常を伝える

中村 給与や勤務地、雇用条件だけを載せても、職場の輪郭というのは適切に捉えられないと思う。人事のコメントが添えられていても。

 実際に自分がそこで働いたとき、どんな風景が見えるのか。目に見えるものだけでなく五感を通じて感じられるもの。時間軸上の未来も含んで。求人記事を通じて、それを共有する必要があると思っています。

──働くと見えてくる風景を、働く前に見えるようにするには?

中村 そうですね。取材時には自分の予見や見立てにとらわれずに、アドリブを利かせて動いてゆくんです。たまたまお隣さんが訪れたらその方の話も聞いてみたり。そのときに入って来たお客さんと、お店の人のかかわりを見てみたり。偶然起こる状況に身を委ねる。

 取材が終わってから飲みに行こうという話になれば、相手の仕事が終わるまで同じ空間で仕事をしながら待たせてもらったり。近くをぶらぶら歩くこともある。昼食や夕食をご一緒させてもらうときは「行く頻度が一番高い店に連れて行ってください」とお願いします。お客さん扱いせずに。彼らが普段から通っている食堂で、そこのおばちゃんと話を交わしている様子に触れたり。こういう人たちと毎晩飲んでいるんだなとか思いながら、その雰囲気に一緒に浸ってみたり。

 そんなふうに時間をすごしていると、なんとなく見えてきますよね。その人自身のことも、上司・部下との関係にしても、彼らの日常の中に入ることで見えてくるものがある。そのどの部分が記事に反映されるのかは、そのときはまだわからないけど。構えていない、いつもの感じになってもらって、彼らの日常に入り込むようにしています。

──じゃあ、取材時間(長さ)は、あらかじめ決められない?

中村 「少なくとも2時間程ください」と伝えています。

 みなさん最初は緊張しているんです。ラジオやテレビの収録ではなくて、クライアントの立場の求人取材でも。それでも取材を進めてゆくと段々慣れてきて、いつもの感じになってゆく。

 すごくいいなと思うのは、まるで僕がそこにいないかのような会話に入ってゆくときです。いつも大体、そこの代表と、入る人の上司になるような人と、入ってまだ間もない若手の人。そんな3人と机をはさんで話を交わしてゆくのですが、普段の打合せの延長のような感じで勝手に話が始まるときがある。

 そんなとき代表の方は、「社長」と呼ばれていることもあれば、「○○さん」と苗字で呼ばれていたり、「××さん」と下の名前で呼ばれていることもある。そんなところに、いつもの風景が見えている。

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