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みどるな会社をつくる パタゴニア日本支社の“働くプロセスづくり” 文:西村 佳哲

自分の存在意義を感じながら働く

みどるな会社をつくる
スタッフについて。「上手い下手にかかわらず、生活の中でアウトドアスポーツを大切にしているかどうかは大事なポイントです。特に店舗スタッフは、自分で製品を使ってそれを言葉に出来ることが重要なので」(辻井)

─この会社に集まるのはどんな人たちですか?

辻井 あくまで僕の印象ですが、必ずしも環境問題を解決したい人だけではないと思います。ある人は子どもを育てながら働きやすいから、ある人は季節単位で働いて好きなアウトドアスポーツを思う存分やれるから。もちろんビジネスを通じて環境問題に貢献したいという人もいる。

 でも共通して言えるのは、自分に嘘をつかなくていい生き方や働き方をしたい人が多いことじゃないかな。「自分の信念と違うことをやらずに働ける」ことが、人がこの会社に抱いている期待じゃないかと僕は思います。

─働く中で「自分である」感覚を持てる。

辻井 そうです。そういう意味での自己実現が出来る。そんな会社のあり方に価値を見い出して来る人が多いと思います。

─辻井さんはどうでしたか?

辻井 僕自身はパタゴニアのミッションは全く知らなかったし、正直なところイヴォンのことも知らなかった(笑)。

 パタゴニアに入る前は、カナダのバンクーバー島で一夏、シーカヤック・ガイドをしていたんです。パタゴニアは、日本に戻ったとき人に薦められた。好きなシーカヤックの時間も持てそうだし、かつ月給を貰えて、働いている人たちも興味深い。こんな良いことはないなと思って入りました。

 でも、環境問題にまったく関心がなかったわけではないです。僕は25歳頃まである会社で働きながらそこの企業選手としてサッカーをやっていて、でも3年目に辞めた。理由はいろいろありますが、一つには勝ち負けを競うスポーツの世界で負けつづけて、そのあり方に興味を失ったことがあります(笑)。会社を辞めて1ヶ月もすると社会への劣等感が芽生えてしまったのですが、モラトリアム的な感覚で入った早稲田の大学院ですごく面白い先生たちに出会えて。欧米人とは異なる日本人の自然とのかかわり方や、環境に対する意識の違いに感じるものがあり、「日本人の自然観」という研究テーマを自分は選びました。

 だから関心はあったんです。環境問題に。ガイド業をしていたバンクーバー島の西海岸は人の住んでいないエリアで、人目につかない場所で広大な森が皆伐されていた。その現場を見ていたし、現地の友人らは反対運動を行っていた。そしてパタゴニアで働き始めたら、そのときの環境キャンペーンのテーマがちょうど「クリアカット(森林皆伐)」で、これは見てきたことそのものだし、自分のこれまでの経験はここの仕事の基盤になりそうだなと思った。僕自身はこの会社を、そんなふうにあとから理解していったクチです。

─スタッフに何を期待していますか?

辻井 パタゴニアに入ることをゴールにはしないで欲しい。自分の強みや特徴を活かして、組織のミッションになんらかの影響を残して欲しい。自分がどんなインパクトを与えたいか、与えられるのかを自覚しながら働いて欲しいと思っています。僕自身の経験としてもその方が楽しく働けるし、それは存在意義を感じられる一つの方法だと思うので。

─自分の存在意義を感じながら働いて欲しい。

辻井 そうですね。解決しなければならない日々の事々にどっぷり浸かっていると、仕事が課題解決に終始してしまう。でも「これは何のためにやっているんだっけ?」という視点があれば、仕事により意味が生まれてくるものだと思います。