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みどるな仕事を訪ねて みどるな被災地支援 ETIC.の「右腕派遣」プロジェクト 文:西村 佳哲

生きたコミュニティに

みちのく仕事
プロジェクトの情報共有を目的としたウェブサイト「みちのく仕事(michinokushigoto.jp)」には、現地に入った右腕たちのインタビューや、募集中のプロジェクト紹介が並んでいる

 NPOの世界には、中間支援組織と呼ばれるNPOが存在する。たとえばNPOを通じた市民活動が盛んな地域としてアメリカ西海岸のサンフランシスコ市とその周辺を含むベイエリアがあり、有機農業関係の団体、港の水質監視を行う市民グループ、街路樹の手入れを自分たちで行うNPO、刑務所で受刑者とともに野菜や花を育てて高齢者施設に無償で届けているNPOなど、エリア全体で数万にも及ぶさまざまな活動団体が存在する。「中間支援NPO」はそれらのインキュベーターで、インターミディアリーと呼ばれている。

  "NPOを支援するNPO"である彼らは主に創業期の団体を対象に、組織を立ち上げるためのノウハウの提供や、資金運用などの支援を行う。インキュベーターであると同時に、NPOとNPO、NPOと企業、NPOと行政の協働の橋渡し役としても機能するため、ブリッジセンターと呼ばれることもある。

 エティックの右腕派遣プロジェクトも、分類すれば中間支援の一形態であることは間違いない。しかし、山内さんに訊ねてみると、「中間支援をしているつもりはないんです」という言葉が返ってきた。

  「震災復興リーダー支援プロジェクトにおいてエティックは、"起業家精神による東北の復興"ということを考えています。3ヵ月に一度くらいのペースで『右腕合宿』を開いて話し合っているのですが、"自発的で自律的な復興と再生がどう実現されてゆくか"がなによりも大事なことだと思うんですね。

 そんな動きに寄り添えたり、必要なものをつなげてゆくことができれば、と思っている。小さな動きでいいから、なにか問題意識を持って動き出した人たちの活動が再生産されてゆくことが可能になるのなら、たとえそれが合理的なものでなかったとしても、守ってゆくべきだと僕は感じているんです。

 日本社会には、行政や大企業に市民が依存してきた構造があると思います。けど長い目で見れば、そうした依存の中で自力を育む機会の喪失は、後の世代のツケにもなってしまう。『今できることをやっていこうよ』という気運のようなものが、やっぱり"誇り"になってゆくと思うし、それがなによりも取り戻さなければならないものだと思うんですよね。

 僕らは確かにやっていることも、成り立ちも支援的です。けど、事業をやってきたつもりなんです。僕ら自身も"起業家的"でありたいし、そんな文化や、ものごとに対する姿勢を広げてゆければと思っているんです。だから現地のリーダーたちはパートナーだと思っているし、彼らが現場で戦っているのに自分たちは安全な場所にいて支援だけ送っているような、そんな関係性だけはつくりたくない。

 もしそんなふうになってしまったら、"生きたコミュニティ"にはなりませんよね。キャパシティも専門性も高まってゆかないだろうし、そんなところでは化学反応も起こらないと思う。

 "自分たちは本当になにをめざしているのか?"というミッションや理念の根の深さが、結局のところ、取り組みの深さになると思うんです。そんなふうに考えていると『中間支援』という言葉は、自分たちにとっては、どうも主体性に欠けてしまう印象があるんです」

 相互作用的なかかわり合いを通じて、人が成長したり変化してゆくときは、必ず片方だけでなく双方が同時に成長し変化する。この現象は親と子の間にも、先生と生徒の関係においても同じく見出せる。

 また、支援という言葉は「する/される」という関係性も生んでしまいやすい。しかしそれでは新しい依存関係の再生産が進んでしまうだけだ。「なにか」と「なにか」の間に身を置きながら、世の中で言うところの支援的な仕事に携わる人たちに、どんな姿勢やあり方が要るのか。ある被災地支援プロジェクトの存在に学んだ。

ETIC. 特定非営利活動法人エティック

1993年、早稲田大学の学生・宮城治男など起業家をめざす学生らの勉強会として始まり、94年より日本初のベンチャー企業での長期実践型インターンシッププログラムを開始。2000年に法人化。12年3月時点のスタッフ数は50名(専従18名)。渋谷・公園通りの上にあるビルのワンフロアーにオフィスを構える。さまざまなフィールドで新しい価値を創造する、起業家型リーダーを育成し、社会のイノベーションに貢献することを目的としている。

「社会起業塾」や、経済産業省との「産学連携人材育成事業(起業家人材育成事業)」など、企業や大学・自治体・官庁とともに、数多くの取り組みを形にしてきた。2011年の東日本大震災においては、直後から社会的課題の解決に注力する同世代の他団体とともに被災地支援プロジェクトを開始。5月以降は独自の動きとして「ETIC.震災復興リーダー支援プロジェクト」を展開している。

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