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IT機器とファシリティ、相互の稼動状況をJP1で一元管理

省電力とCO2削減に貢献する運用管理基盤

株式会社NTT ファシリティーズと日立は2009年4月、データセンターにおける省電力運用の全体最適化を実現する基盤技術の開発に成功した。新システムでは、サーバの各種稼動情報をもとに空調機出力の最適値を判断し、冷房や風力を制御することで消費電力を約10%抑えることができるという。IT機器とファシリティ、双方の稼動情報を収集・管理し、全体状況の「見える化」と、運用ポリシーに沿った連係制御を担っているのが日立の統合システム運用管理「JP1」である。年間7万トンのCO2排出量を削減できるという技術が誕生した背景と今後の展開について、NTTファシリティーズのキーマンに話を聞いた。

さらなる省電力化に向けた全体最適のアプローチ

小泉泰之 氏の写真
NTTファシリティーズ
取締役
データセンター環境構築本部
本部長
小泉泰之 氏

植草常雄 氏の写真
NTTファシリティーズ
研究開発本部
環境・エネルギー部門長
植草常雄 氏

 オフィスビルやデータセンター、高信頼な電源・空調システムなどの企画・設計から維持管理まで、幅広いファシリティソリューションを提供するNTTファシリティーズ。同社は省エネ・環境対策にも力を注いでおり、増加の一途を辿るデータセンターの電力消費を削減する取り組みを続けている。

 「当社は、データセンター内で特に電力消費の大きい空調と電源の効率化という観点から、PUE※を指標としたデータセンターのグリーン化に取り組んできました。しかし空調や電源といったファシリティ単独での省エネには自ずと限界が出てきます。サーバやストレージなどのIT機器とも連係した全体最適なアプローチにまで踏み込まなければ、抜本的な省エネ対策は見いだせないと考えていました」と語るのは、同社取締役データセンター環境構築本部本部長の小泉泰之氏である。

 従来のデータセンターではIT機器とファシリティがそれぞれ個別のシステムで運用管理され、相互の連係が取れていない。これまで以上の環境負荷の軽減と省電力化を実現するには、両者を連係させた全体最適化が必須の課題となっていたのである。そこで2008年7月、NTTファシリティーズと日立は協業を発表し、互いのノウハウを駆使した新技術の共同開発に着手。翌2009年4月に完成させたのが、サーバと空調機、相互の稼動状況を統合システム運用管理「JP1」上で一元管理できる省電力運用管理基盤システムだ。

※PUE(Power Usage Effectiveness):データセンター全体の消費電力を、サーバやストレージなどのIT機器の消費電力で割った値。データセンターの省電力化を推進する業界団体「The Green Grid」などが推奨する指標の1つで、最も効率が良いデータセンターはPUEが1.0になる。

運用情報の「見える化」と連係制御までを実現

 この基盤システムのプロトタイプでは、NTT ファシリティーズの高効率空調機「FMACS-V(エフマックス・ファイブ)」と、日立の統合サービスプラットフォーム「BladeSymphony」の稼動状況をJP1で一元監視し、運用ポリシーに沿って制御する。両者から送られる温度や風量、消費電力などの情報をJP1がSNMP(簡易ネットワーク管理プロトコル)を使ってトータルに収集・管理し、設定された運用ポリシーに沿って各機器を柔軟に制御している(図)。

図■空調機側、サーバ側の両方の情報をJP1上に統合し、一元的に温度や風量を管理できる

 「IT機器とファシリティ、双方の運用情報を同一画面上で“見える化”できたことが最大のポイント」と語るのは、研究開発本部環境・エネルギー部門長の植草常雄氏だ。これまで空調機は、センサーでフロア内の温度は感知できても、その先にあるサーバやストレージがどのような稼動状態にあり、どの程度発熱しているかまでは知ることができなかった。このため温度を適正に設定できずエネルギーを浪費するケースが少なくなかったという。

 これに対し新システムでは、サーバラック個々の温度や稼動状態を、空調機側の情報も含めてビジュアルに統合監視できる。このため問題箇所の容易な発見と運用改善への迅速なアクションが可能となるのである。

 「サーバ側からの情報収集によって、冷却すべき対象とタイミングがきちんと見極められるようになりました。IT機器の負荷状況や業務スケジュールに応じた空調機の運転制御はもちろん、過剰な設備投資の抑制などにも貢献できると考えています」(植草氏)

CO2排出量を年間約7万トン抑制

藁谷至誠 氏の写真
NTTファシリティーズ
研究開発本部
環境・エネルギー部門
主幹研究員
藁谷至誠 氏

手島周正 氏の写真
NTTファシリティーズ
データセンター環境構築本部
副本部長
手島周正 氏

 運用ポリシーに沿ったIT機器とファシリティの連係制御でも、長年にわたってシステムの自律運用を支援してきたJP1の強みが活かされている。例えば複数のサーバルームがある場合、仮想化技術などを利用して1室のサーバに負荷を集中させることで、他の部屋のサーバと空調機の運転を停止するといった運用も実現できる。

 こうして過剰な冷却や送風を抑制することで、空調機の消費電力は約10%削減可能と予想されている。既存のデータセンターに適用すれば、CO2排出量を年間約7万トン抑制できる計算だ。この数値は電力換算で約1.2億kWh、一般世帯なら約3万4000世帯が1年間に消費する電力に相当する。

 研究開発本部環境・エネルギー部門主幹研究員の藁谷至誠氏は、本プロジェクトがもたらすデータセンターの省電力運用の展望を語る。

 「ITベンダーもファシリティベンダーも、これまでは互いの設計思想を理解し合う機会が足りませんでした。しかし今回、それぞれの運用情報を1つの画面で統合的に管理し、連係制御できる基盤ができたことで、全体最適を図るためのシナリオが徐々に明確になってきました」(藁谷氏)

 また、省電力運用管理基盤システムはこれから本格化するSaaS やクラウドコンピューティングを支えるインフラとしても期待が寄せられている。データセンター環境構築本部副本部長の手島周正氏によれば、今後データセンターは仮想化技術の進展も相まって、顧客のサーバを個々に預かり運用する形から、大きな1つのコンピュータリソースをマルチに提供する形態へ変わっていくという。

 「今後はIT資産やファシリティも含めたデータセンター全体でのコスト低減と運用の効率化が、さらに重要な課題となります。今回の基盤技術はこうしたニーズに応える強力なポテンシャルを持ったソリューションといえます」(手島氏)

 NTTファシリティーズは、国内のデータセンター環境構築関連の30%以上に携わってきたリーディングカンパニーである。その実績と多様なソリューションに、今回の日立との協業成果が加わったことで、日本のデータセンターにおけるグリーン化の流れが、一段と加速していくことは間違いないだろう。

Partner Profile

株式会社NTT ファシリティーズ

100 年に及ぶ日本の電気通信の歩みをサポートしてきたNTT ファシリティーズ。長年の経験と実績をもとに「IT×エネルギー×建築」の3つの分野を融合し、地球環境を考えた統合ファシリティサービスを提供している。

住所:東京都港区芝浦3-4-1 グランパークタワー
TEL:03-5444-5660
URL:http://www.ntt-f.co.jp/