ITサービスマネジメントの導入を支援
ITサービス管理のグッドプラクティスとして2000年以降、ITILが日本で注目されている。日立グループでは、ITILが提唱する活動を80年代より社内にて実施。90年代から本格的な研究を開始し、2000年以降、ITILの普及活動に取り組んできた。その取り組みについて、日立情報システムズ(日立情報)の森川 寿義 氏、日立ソフトウェアエンジニアリング(日立ソフト)の道下 芳紀 氏、日立製作所の八木 隆に話を伺った。

森川 寿義 氏
Kazuyoshi Morikawa
株式会社日立情報システムズ
ERP事業部
ビジネスソリューション本部
第三システム部
主任技師
ITサービス管理の方法論を体系化し、ITサービスマネジメントを実践するためのガイドラインとして標準化されたITIL。日立グループは80年代よりITILが提唱する活動を、社内で実施。そして90年代から本格的な研究を開始し、2000年以降、ITILの普及活動に取り組んできた。
ITILに関する活動の1つがITILの普及団体「itSMF Japan」への積極的な関与だ。日立はitSMF Japanの発足から参画しており、その中でもITILのライブラリ(書籍)を日本語化するという役割を担ってきた。もちろん、最新のITIL Version3(ITIL V3)の日本語化にも取り組んできた。
しかし、日立の取り組みは国内にとどまるものではない。最新のITIL V3が開発されるにあたり、世界各国のベンダー、ユーザーなど約30の組織から専門家を集めたアドバイザリグループが発足した。日立はその取り組みが評価され、開発元からの参加依頼を受け、2005年の発足からアドバイザリグループに参加している。
ITIL V3は英語版が2007年5月に公表され、現在は日本語化を進めている。2008年夏には全5冊の日本語版がそろう予定だ。
ITIL V3は、基本的にITIL V2がベースになっている。もともとV2におけるコアのプロセスは、そのままV3でも受け継がれ、基本的な考え方に変化はない。ただし、V3では新たにライフサイクルというアプローチが追加されている。また、2008年5月に発売開始された「サービスストラテジ」に記述があるように、IT部門の戦略を考え、IT部門が提供するサービスを戦略的な資産として位置付けるという活動を行うことが明確に打ち出された。さらに、COBIT*をはじめとしたさまざまなフレームワークや規格との関連性を整備しているのも、ITIL V3の特徴の1つだ。

道下 芳紀 氏
Yoshiki Michishita
日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社
ソリューション開発本部
ソリューション開発部
シニアコンサルタント
このように、ITILに深く関わってきた日立は、そのノウハウを活用するとともに日本独自の市場を考慮したソリューションの整備に取り組んでいるという。
「ITIL V3に関しては、日立製作所だけではなく、日立グループが総力を挙げて整備しようとしています。すでに、V3対応として用意できているものもありますが、全体的なサービスマップとしては、現在整備の過程にあります。日本では、ITIL V2の取り組みも進んでいたわけではありません。現在は日本市場の特徴も踏まえ、V3の整備を進めています。どのような形でITIL V3のサービスを本格的に紹介するかは、日本市場の特性を活かした形で十分に整備することが重要だと思います」(八木)
日立グループ各社の役割は、明確に決めるのではなく、各社の特性を活かしながらゆるやかに連携してITIL V3に対応するサービスや製品の提供を目指している。例えば、日立製作所では、ソフトウェア事業部が展開する統合システム運用管理ソフトウェア「JP1」の豊富なツール群を用意しているのをはじめ、ITサービス全体の豊富な活動実績に基づいたコンサルティング部隊を整備。日立グループ各社と連携して、リソースを共有しながら、サービスを提供できるような体制を準備しているという。
「日立のITILソリューション体系ではJP1のほかに、組織の現状を的確に評価する「簡易アセスメント」と「フルアセスメント」を「IT サービス管理アセスメント」として整備しています。人間の健康管理同様、問診や人間ドックのイメージでサービスがあるわけです。ITILでは、まず最初のステップとして現状を把握することが大切です。ソリューション体系でも現状を把握するためのステージであるアセスメントのサービスを強化しています。このアセスメントから明らかになった課題を解決する製品やサービスとして、ITサービス管理の活動をライフサイクルで支援する「ITサービス管理導入コンサルティング」やJP1、日々のITサービス活動を支援する「ITマネジメントサービス」などがあり、いわば“治療”や“健康維持”の支援をするわけです(図)」(八木)


八木 隆
Takashi Yagi
株式会社日立製作所
情報・通信グループ
サービス事業開発本部
担当部長
日立グループの1社、日立ソフトでは、従来より日立製作所と連携してITILおよびISO/IEC20000の規格に対するコンサルティングを提供してきた。
「ITILのグッドプラクティスには、よいこと、やるべきことがたくさん書いてあります。ただし、本来はITILのグッドプラクティスの中から、自分の会社にとって効果のありそうなものを取捨選択して活動を開始すべきですが、日本企業は取捨選択が苦手で、書いてあるものをすべてやらなければならないと考えがちです。そうなると、ITILは非常にハードルの高いものになってしまいます。そこで、日立ソフトでは日立製作所と連携して、ITILのギャップを分析し、課題を明確にするアセスメントサービスを提供します。そのギャップへの対策として、マネジメントシステムというフレームワークを作ったり、JP1 のようなツールを使ったりする解決の入口の部分までを私たちがコンサルティングします」(道下氏)
一方、日立情報が得意とするのは、具体的なシステムとして落とし込む実装の支援という部分だ。
「ITILを導入する際のアセスメントは非常に重要な役割を担っていますが、いざ実装しようとすると、ツールを使ってすべてを行うのは困難です。何をすべきかというシステム的な考え方で整理したうえで、取捨選択することも必要です。アセスメントで目標を決め、その次にシステム要件を整理して、実際の業務活動とプロセスとのギャップをツールの視点から整理することが、私たちの得意とする範囲になります。上流工程を支援しながら、JP1というツールに行き着くまでの過程について、実装への道筋を支援できるソリューションを日立グループで連携しながら考えています」(森川氏)
ITILソリューションについては、日立グループ内での競合がないように、グループ全体のリソースを活用し合うという。
「基本的には、日立製作所がプロジェクトマネジメントを行う立場になり、一気通貫でソリューションを提供します。各ステージでは、日立グループ各社が参加しながら日立グループ一丸となってお客さまに適したソリューションをご提供していきます」(八木)