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在庫30%圧縮を目標に月次生販から週次生販へ
グローバル・サプライチェーン構築にチャレンジ。
「JP1」で高可用性を確保し安定した運用を実現

パイオニア株式会社(以下、パイオニア)は、月次生販から週次生販へのスピードアップを目指して、グローバル・サプライチェーンの改革に取り組んでいる。全世界の既存システムを動かしながら調達/生産/物流を統合するため、新規システムと既存システムはEAI(Enterprise Application Integration)によって連携させる。新規/既存システムの間で発生する約5,000もの膨大なジョブを確実に運用するため、日立の統合システム運用管理ソフトウェア「JP1」を採用。JP1は、ジョブ管理だけではなく、ネットワーク監視、ハードウェア監視などの統合的な管理も実現し、ミッションクリティカルなグローバルシステムの安定稼働をがっちりと支えている。

パイオニアグループ全体のサプライチェーンをスピードアップ

平石 厚 氏の写真
パイオニア株式会社
連結情報戦略部
部長
平石 厚 氏

中村 正彦 氏の写真
パイオニア株式会社
連結情報戦略部
副参事
中村 正彦 氏

個別最適から連結最適へ。売上志向からキャッシュフロー志向へ。パイオニアは、利益追求型の企業グループへの脱皮を目指して、1997年から全社挙げての大改革に取り組んでいる。社内カンパニー制導入、間接部門のシェアードサービス化による本社のスリム化などを着々と進め、2001年には、サプライチェーンのプロセス改革がスタートした。

SCM(Supply Chain Management)改革は、「Speed」を全体のキーワードとして、計画サイクルの短縮、実需に基づく調達/生産/物流、可視化という3つの施策を推進するもので、施策の定着によって30%以上の在庫削減を見込んでいる。

パイオニアのSCM改革は、本社はもちろん、全世界約140社の連結子会社を含む調達/生産/物流を統合し、グローバルなシナジー効果を追及しようという大規模で思い切った改革である。改革を推進するプロジェクトは、「グローバルSCMの開拓者」の意味を込めて「Pプロジェクト」と呼ばれる。

「カンパニー単位で改革し、時間をかけて横展開するのではなく、グループを挙げて一気に改革を進め、短期間で目標を達成しようという意欲が、『Pプロジェクト』という名前には込められています」と、パイオニア株式会社 連結情報戦略部 部長 平石 厚氏は改革に賭ける熱い思いを語る。

全世界同時に改革を進めるため、Pプロジェクトは、2つの考えかたを採用した。ひとつは、各社の既存システムは稼働させたままで、ハブ的な役割を果たす共通インタフェースを設けて、サプライチェーンに関する情報をGDW(グローバル・データウェアハウス)で一元的に管理するという発想である。もうひとつは、SAP(R) APOのDP(需要計画)コンポーネントとSNP(生産計画)コンポーネントを導入してグローバルな需給計画システムを作り、計画業務の効率化を図ることである。計画系システムで使う情報はすべてGDW(HUB)から取り込むことで、全世界個別の既存システムを動かしながら、グローバルSCMを実現できる。

「短期構築を実現するには、単一のソフトウェアで統合するのではなく、いまあるパーツを連携させるEAIの発想が不可欠でした」と、パイオニア株式会社 連結情報戦略部 副参事 中村 正彦氏は説明する。

EAIで生じる5,000ものジョブを「JP1」で確実に運用

問題は、EAIを行う共通インタフェース部分、GDW、APOというそれぞれのサーバグループ間でデータをやりとりするときに、膨大な量のバッチジョブが発生することだ。しかも、世界中のシステムと連携するため、24時間稼働が必須であり、バッチジョブも常時行われる。

5,000本に達するバッチジョブを人手作業では実行できない。プログラム開発でも追いつかないし、自前のプログラムでは変更が発生したときに機敏な対応ができない。また、複雑なデータ連携システムであるだけに、バッチジョブの1つ1つを確実に管理する機能が不可欠であった。

そこで、膨大なバッチジョブを実行するジョブ管理ツールとして、日立の統合システム運用管理ソフトウェア「JP1」のジョブスケジューラ「JP1/Automatic Job Management System 2(JP1/AJS2)」を使うことにした。大規模システムでの稼働実績が豊富にあり、シェアも高く、安定した製品であるからだ。

ネットワークノードの監視でも、JP1のネットワーク管理基盤「JP1/Cm2/Network Node Manager(JP1/Cm2)」を採用。ジョブスケジューラ「JP1/AJS2」と連携して、ジョブ管理とネットワーク監視を統合できるからである。

さらに、ログ監視とプロセス監視、サーバなどのハードウェア監視をJP1の統合コンソールにより一元管理し可用性を高めている。

「すべてを改革しようというプロジェクトには、すべてを統合管理する運用管理システムが不可欠でした。新しいSCMのありかたを開拓しようというわれわれのシステムの要件に、JP1がぴったりと適合したのです」と中村氏は言う。

複雑なグローバルシステムを支える統合運用管理

Pプロジェクトは、第1フェーズとしてGDW(実績系)がすでにカットオーバーし、2004年4月のAPOスタートに向けて、検証を重ねている段階だ。

現在、GDWで実績系のデータ統合をしているのは本社と連結子会社40社であり、これらのグループ企業の間では、生産と販売のサイクルを週単位で回すことができるようになりつつある。

まず、4〜5週間先のグローバルな売上予定を月曜、火曜で確定。火曜夜には、全世界の仕入れ要求がGDW(HUB)に集まる。水曜朝には、仕入れ要求を各国の生産拠点ごとの生産計画へ割り振り、水曜夜には生産指示が配信される。生産拠点では木曜から金曜で生産スケジュールを立て、部品を発注する。このサイクルが毎週回転していくため、需給の誤差は極小化され、在庫が大幅に圧縮される。

EAI、APO、GDWの各システムが極めてミッションクリティカルであることは言うまでもない。万一機能が停止すれば、全世界のサプライチェーン・サイクルがストップしてしまう。JP1のジョブ管理は、単に設定した時刻になるとジョブが自動的に動くスケジューリングだけでなく、1つのジョブが完了したことを確認して次のジョブを起動させたり、さらには、データの到着を待っての起動や正常に完了しなかった場合の対応まで個別に管理し、問題が発生したときには管理者のポケベルを鳴らすところまで確実に対処して、グローバルシステムの安定稼働を支えている。発売されて間もないSAP(R) APOのジョブ管理についても、総力を挙げた1ヵ月にわたる入念な確認の結果、安定稼働するということが立証されている。

統合管理による省力化効果も大きい。グローバル・サプライチェーンの新システムが稼働して、十数台のミッションクリティカルなサーバがデータセンターへ新規追加になったが、オペレータはまったく増員していない。警告や異常のメッセージがでたときに集中コンソールを見て対処すれば済むため、管理負荷が大幅に軽減できている。

JP1の使いやすさは、データセンターのオペレータが「他のシステムでもJP1を使いたい」と要望するほどだ。パイオニアは、個別のノード監視の負担を軽減し、システムの可用性を高めるために、今後JP1の利用を広げていく計画である。

パイオニアSCMシステム統合運用管理概念図

最適なシステムの構築・運用を支えた日立ソフトのSI力

津野 哲也 氏の写真
日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社
公共社会システム事業部
社会システム本部
第1社会システム部
技師UL
津野 哲也 氏

運用管理システムを含めて、Pプロジェクトにおけるシステム構築は日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社(以下、日立ソフト)が担当した。

「EAI部分で採用したMicrosoft(R)のBizTalk(TM)関連の開発をはじめ、システム設計・構築、監視や運用の設計・構築など、何をやってもらっても安心感があります。複雑で大規模なシステムほど、きっちりとこなす実力がはっきりわかります」と中村氏は評価する。

また日立ソフト側も、「Pプロジェクトは経営戦略が先行するプロジェクトであるだけに、技術的なスキルだけでなく、ビジネスのセンスや視野の大きさを重視して、プロジェクトメンバーを選定」(日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社 公共社会システム事業部 社会システム本部 第1社会システム部 技師UL 津野 哲也氏)して、パイオニアの要望に応えたのである。

パイオニアはPプロジェクトによって、従来の月次生販から週次生販へと、サプライチェーンの大幅なスピードアップを実現しつつある。在庫削減も着々と進んでいる。

「自由になったキャッシュを工場設備へ投資して、利益率の高いPDPや有機EL事業を伸ばしていくのが経営方針です。Pプロジェクトの成功で、経営目標の達成に向けて大きな一歩を踏み出せます」と平石氏は意欲的に語った。

USER PROFILE

パイオニア株式会社

[本社] 東京都目黒区目黒1-4-1
[創業] 1938年1月1日
[設立] 1947年5月8日
[資本金] 490億4,900万円(2003年3月末現在)
[売上高] 7,122億6,800万円(連結、2003年3月期)
[従業員数] 34,656名(連結、2003年3月末現在)

カーエレクトロニクス、プラズマTVなどのホームエレクトロニクス、DVDなどのコンポーネントビジネスが事業の柱。カーナビおよびパソコン用記録型DVDドライブでは世界トップシェアを誇る。2006年3月期までの事業目標として、「DVD事業世界No.1」「PDP/有機EL事業基盤の確立」「ネットワーク対応」「キーデバイス&キーテクノロジー型事業形態へ」の4つを掲げる。

PARTNER PROFILE

日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社

[本社] 東京都品川区東品川4-12-7
[設立] 1970年9月21日
[資本金] 341億7,600万円(2003年3月末現在)
[売上高] 2,178億7,200万円(連結、2003年3月期)
[従業員数] 6,519名(連結、2003年3月末現在)

「DIGITAL & GLOBALのパイオニア」を自負するソフトウェア開発会社。メインフレームから.NETまで幅広くカバー。多角的アライアンスにより、高度なIT技術分野をカバーした統合ソリューションの提供を目指す。バイオ、地図情報等、新事業も活発。

特記事項

  • この記事は、「日経コンピュータ」 2004年1月12日号 に掲載されたものです。
  • JP1の詳細については,ホームページをご覧ください。
  • MicrosoftおよびBizTalkは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における商標または登録商標です。
  • Oracle9iは、米国Oracle Corporationの商標です。
  • SAPおよびSAPロゴ、SAP R/3、mySAP.com、その他のSAP製品は、ドイツおよびその他の国におけるSAP AGの商標または登録商標です。
  • その他記載されている会社名、製品名は、各社の商標もしくは登録商標です。
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