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グループ企業14社が利用するSAP(R) R/3(R)の安定稼働を支える「JP1」。
コストミニマムで、かつ、投資効果を最大化する統合システム運用管理を実現

2005年4月、呉羽化学工業株式会社(以下、呉羽化学)は基幹系システムの再構築と13社のグループ企業への展開を完了した。合計14社が利用するSAP(R) R/3(R)の運用は、日立の統合システム運用管理ソフトウェア「JP1」で管理。合計約60台のIAサーバで構成するシステム全体に対し、ネットワーク、ハードウェア、アプリケーションの各レイヤを一元的に監視・管理できる統合管理機能と、1万ジョブをきめ細かく制御するジョブ管理機能により、呉羽化学グループの新・基幹系システムは安定稼働と快適なサービス提供を続けている。

「選択と集中」をグループ全体の基幹系システム再構築で支える

企業間競争が激化するなかで、経営のスピードアップと効率化を目指し、基幹システムの再構築に取り組む企業が増えている。

呉羽化学は、2001年度からの「中計DC(Dynamic Conversion)」において、「大胆な変革」を掲げ、「選択と集中」による高収益体質への転換を目指して、ERPパッケージ「SAP(R) R/3(R)」を導入し、グループ全体の基幹系システムの統合を推し進めた。

まず、2002年4月には呉羽化学本体が、財務会計、管理会計、販売、購買、生産、品質、設備保全、人事と、主要な基幹業務をすべてERPパッケージに置き換えた。さらに、2004年4月と2005年4月にはグループ企業13社も、順次基幹業務をすべてERPパッケージに置き換え、新システムをネットワーク経由で利用する形態へと切り替えた。

ミッションクリティカルなシステムの安定稼働を支える統合管理

小野 陽造氏の写真
呉羽情報システム株式会社
取締役システム部長
小野 陽造氏

面川 浩身氏の写真
呉羽情報システム株式会社
システム部
グループリーダー
面川 浩身氏

蛭田 敏氏の写真
呉羽情報システム株式会社
システム部
蛭田 敏氏

基幹系システム統合の成果のひとつは、TCO削減と、経営のスピードアップを両立させることができたことだ。メインフレームを撤廃して、約30台の日立のIAサーバ「HA8000シリーズ」に置き換えたため、システム維持にかかるコストは大幅に削減できた。

一方、合計14社の業務の中枢を担うシステムには、高度な可用性と信頼性が要求される。システム構築と運用を担当する呉羽情報システム株式会社(以下、呉羽情報システム)は、コストを増大させることなく安定したサービスを維持するという重大な責任を果たすために、豊富な実績を誇るJP1を選択した。

「システム企画の段階で、将来的なシステム管理のあり方を検討しました。すでにネットワークやサーバの監視にJP1が導入されていましたが、ERPを含めた統合管理としてJP1が最適と判断しました」(小野氏)。

呉羽情報システムは、JP1のジョブ管理、ストレージ管理、アベイラビリティ管理、ネットワーク管理、資産・配布管理の機能をほぼすべて導入し、それらを統合管理することで、信頼性の高いシステム運用を実現した。

ネットワークは、ルータやスイッチングハブのレベルまで常時監視。サーバに搭載された管理ツールとJP1が連携して、ハードウェアも詳細レベルの監視を行っている。SAP(R) R/3(R)のトラブルはもちろん、OSのログやアプリケーションのイベントも、運用情報を詳細に把握。そのうえで、ネットワーク、サーバ、アプリケーション、ストレージなどの一元管理と、各種プラットフォーム上の管理業務を、単一の統合コンソールから集中的に実行できる。

「すべての要素を一元的に見られるため、問題が発生したときにも短時間で原因を特定できますし、障害が連鎖するのを未然に防ぐことができます」と面川氏は語る。

さらに蛭田氏は、「もともと約30台のERPサーバを監視するためにJP1を導入しましたが、現在では、メールサーバ、ファイルサーバなどのOA系サーバ約30台も、一元管理の輪の中に入れています。各種サーバを含んだマルチベンダー環境でも統合管理にはまったく問題ありません」と付け加えた。

障害が発生した場合、JP1は障害箇所を判別し、それぞれ適切な担当者へメール通知を行う。たとえばロジスティックス業務関連なら福島県いわきのチームへ、会計業務関連であれば東京の管理チームへ通知する。したがって基本的に監視は、いわきのシステムセンターで行っているが、監視のための専任者はいない。昼間も夜間も常駐者ゼロで、約60台のサーバの安定稼働を実現している。

1万件以上のジョブをきめ細かくスケジュール運用

SAP(R) R/3(R)の運用に欠かせないのが、JP1のジョブ管理機能である。

「サーバ上の後継処理や印刷など、SAP(R) R/3(R)と別の処理を組み合わせるためにはJP1が必要です。また、業種も業態も異なるグループ会社全体の月次処理は時間がかかります。データの受け渡しなど業務全体のバランスを見ながら、夜間に無人でスケジュール運用していくといった高度なことは、JP1でなければ到底できません」と小野氏は言う。

現在、JP1が管理しているジョブは1万件以上あり、そのうち、毎日動くジョブが1,000件近くにもなる。こうした会社ごとに内容も処理時期も異なる膨大なジョブネットは、障害時のメール通知や担当者への電話連絡まで、きめ細かく作成されている。

コストミニマムで信頼性の高い運用管理サービスを実現

呉羽情報システムは、統合管理とジョブ管理のほかにも、JP1の豊富な機能を随所で活用している。たとえば、約2,500台のクライアントPCへプログラムを配布するときは、構成管理と資源配布の機能を使う。14社が使っているクライアントPCは、OSのバージョンもWebブラウザの状態もさまざまだが、JP1はそれらの状況を把握して、いくつかのグループに分けて的確な配布を行う。中でも、OSのセキュリティパッチ配布の自動化は、ユーザーをわずらわせることなく、セキュリティの向上にも貢献している。

リモートサポートも便利な機能である。情報システムの使い方の質問やPCの故障の連絡は、いわきのシステムセンターで集中的に受け付ける。

遠方にいる質問者のPC画面をリモートで動かしながら説明することもできるため、ヘルプデスクの評判は高い。こうした個別機能も含めて、JP1は、TCO削減に多大な貢献をしている。「SAP(R) R/3(R)をグループ展開しインフラ統合をしたことで、2002年に比べるとPC台数は3倍に増えましたが、JP1を使って運用管理のスリム化も同時に進めたので、運用管理の工数は2分の1程度に減少しています」と面川氏は言う。

SAP(R) R/3(R)のグループ展開が完了した呉羽化学は、2005年6月からは、四半期ごとの連結決算を実施するなど、変革の成果を出す段階に突入した。JP1による堅牢なシステム運用が、呉羽化学グループのこれからのチャレンジをがっちりと支えていく。

呉羽化学グループ新基幹システム概要
呉羽化学グループ新基幹システム概要

USER PROFILE

呉羽化学工業株式会社

[本社] 東京都中央区日本橋堀留町1-9-11
[創立] 1944年6月21日
[資本金] 124億6,000万円(2004年3月31日現在)
[従業員数] 1,441名(2004年3月31日現在)

NEWクレラップ、キチントさんシリーズなどのヒット商品で知られる大手化学メーカー。このほか電子・自動車部品、工業用炭素材料、各種化学品、農材・農薬、医療用医薬品など、多彩な製品群を市場に供給している。2005年10月1日(予定)から社名を「株式会社クレハ」に変更する。

PARTNER PROFILE

呉羽情報システム株式会社

[本社] 東京都中央区日本橋堀留町1-9-11
[創立] 1990年8月30日
[資本金] 5,000万円
[従業員数] 40名


呉羽化学工業の電算部門を母体として設立。呉羽化学工業のネットワーク・インフラ構築・運用と基幹業務システムの開発・運用を担当している。2003年度から国内グループ各社のネットワーク統合と基幹業務システム再構築にも着手した。

特記事項

  • この記事は、「日経コンピュータ 2005年6月27日号」に掲載されたものです。
  • JP1の詳細は,製品ホームページでご覧ください。
  • 記載されている会社名、製品名は、各社の商標もしくは登録商標です。
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