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ミドルウェア

uVALUE 実業×IT

Hitachi

メインフレーム資産のオープン移行により
内部統制強化とデータベース活用の向上を実現

TCO※1のさらなる削減と、環境変化にすばやく対応できる情報システムの構築をめざし、 メインフレーム上の既存資産をオープン環境へ移行するマイグレーションの動きが活発化しています。

高品質な産業用ディーゼルエンジンやトラクターを中心に、グローバル市場への展開を加速させている 株式会社 クボタ(以下、クボタ)の筑波工場では、株式会社日立システムアンドサービス(以下、日立システム)の協力のもと、 「COBOL2002」「XMAP3」「JP1」といった日立オープンミドルウェアを活用し、 工場系基幹システムのプラットフォームを「AP7000」から「BladeSymphony」の小型高集積モデル「BS320」へと移行。

従来どおりの画面と操作性を維持しながら、処理能力の大幅な向上と柔軟なデータベース活用、 TCO削減といったメリットをあわせ持つ戦略的なIT基盤を構築しました。

※1
Total Cost of Ownership

グローバル市場への挑戦を続けるクボタ

根小屋 裕一 氏の写真
株式会社クボタ
筑波工場
生産技術課
担当課長
根小屋 裕一 氏

農業機械から産業インフラ、環境エンジニアリングなどの幅広い 分野で事業を展開し、2010年4月に創業120周年を迎えたクボタ。

同社は現在、世界生産累計300万台を突破したトラクターや世界 トップクラスのシェアを誇る小型産業用ディーゼルエンジンを核に 海外市場へも積極的に進出し、グローバル企業としての地位を確 立しています。

「その経営戦略の中で筑波工場は、国内はもとより海外市場 に向けたトラクターや産業用エンジンなどの生産を行っています」 と語るのは、クボタ 筑波工場 生産技術課 担当課長の根小屋 裕一氏。

筑波工場では、多様化するお客さまニーズに対応し、約 3,000種類ものトラクターを1つのラインで生産する多品種少量生 産を展開しており、その生産管理を担う基幹システムには長年、 日立のメインフレームを採用してきました。

しかし市場環境が一段と厳しさを増す中、さまざまな局面でコス トダウンを図ることが全社的な課題となっていたことから、2007年に 始まった工場中期計画「筑波プラン120」の中で、情報システムの 維持・運用コストを低減しながら、生産性向上と内部統制のさらな る強化を図るため、「AP7000(VOS1)」上の既存資産をオープン システムへ移行することを決断。

2008年からスタートした移行プロ ジェクトのパートナーには、筑波工場の基幹システムに精通し、マイ グレーション実績も豊富な日立システムが選定されました。

オープンミドルウェアを活用し既存資産のスムーズな移行を実現

松本 裕一郎 氏の写真
株式会社日立システムアンドサービス
東京産業本部
第1システム部
主任技師
松本 裕一郎 氏

「移行にあたってまず取り組んだのは、既存資産の棚卸しでし た。30年以上前から稼働していたシステムには、われわれ担当 者も知らないプログラムが相当数眠っていたからです」と当時を 振り返る根小屋氏。

そこでクボタと日立システムは、ユーザーから のヒアリングをもとにプログラム内容やロジック連携を詳細に分 析。移行対象となるプログラムを従来の約2/3に抜粋し、大幅に スリム化しました。

そしてマイグレーションの効率化を図るツールとして利用 されたのが、COBOL資産の継続的な活用を可能にする 「COBOL2002」、高信頼なトランザクション処理を実現する 「uCosminexus OpenTP1」、画面移行を容易にする 「XMAP3」、メインフレームと同様のジョブ管理を支援する「JP1」 といった日立のオープンミドルウェア製品群です。

「さまざまな機能に特化したミドルウェアを活用すれば、移行作 業を効率化しながら信頼性も確保できます。今回のプロジェクトで も、その恩恵をお客さまとともに実感することができました」と語るの は、日立システム 東京産業本部 第1システム部 主任技師である 松本 裕一郎氏。

豊富なマイグレーション実績を持つ日立システム にとって、オープンミドルウェア製品群は移行手法の標準化と納期 短縮に欠かせない存在になっているとのこと。

今回、クボタの既存資産には1970年代に開発された 「KCORAL」で記述されたものが多く含 まれていましたが、日立の「KCORALCOBOL 変換ツール」によってコンバート の自動化を推進。

「一部、変換が難しいプ ログラムが見つかりましたが、カスタマイズ することで30年以上稼働しているシステ ムを、ほぼそのままコンバートできました」と 松本氏は語ります。

「問題が発生し進ちょくが遅れた際に、 すべてのタスクを模造紙に書いて壁一面 にはり、1つひとつ消し込みながら作業を 進めたことも、今となってはよい思い出で す。日立さんが持つ豊富なミドルウェアと 変換ツール、そして日立システムさんが持つ優れたノウハウとSEの 熱意、これらのシナジーが移行プロジェクトを成功させた原動力に なりました」(根小屋氏)。

操作性を変えないまま内部統制の強化を図る

BladeSymphony BS320 の写真
新たなプラットフォームとなった
BladeSymphony BS320

約1年後の2009年6月に、新たなプラットフォームとなった 「BladeSymphony BS320(Windows Server® 2003)」上で本 稼働を開始した新基幹システム。

そこではユーザーに負担をか けないため、従来どおりのユーザーインタフェースを維持すること が絶対条件となっていましたが、XMAP3の活用で、まったく変 化を感じさせない操作画面をブラウザ上に再現。

また移行前の システムはJCL※2やプログラムなどをだれでも修正できる状況に あったことが内部統制面で大きな課題となっていましたが、新シ ステムではActive Directoryと連動しユーザー権限を割り当て ることで問題を解決。

「管理者権限を限定することで、開発環境 と運用環境の分離に成功しました。これにより、IT統制の強化を 大幅に推進することができました」と松本氏は笑顔を見せます。

その一方で、システムの柔軟性と使いやすさは大きな変化を遂 げました。

「最も顕著なのはデータベースを自在にハンドリングでき るようになったことです。例えば生産台数や生産計画をデータ ベースから抽出しようとすると、従来ならそのつど、帳票用のプログ ラムを組まなければなりませんでした。しかし新システムではSQLで 容易にデータ抽出が行えるため、ハンドリングできるスタッフの数が 倍増しました。すでにオープン基盤で作られていたサブシステムや 本社システムとの連携も容易になりましたし、新業務の開発でも SQLやJavaを操れる豊富な人材を活用できることがコスト削減に 大きく寄与しています」(根小屋氏)。

プラットフォームがBS320になったことで、処理スピードも大幅に 向上。

「これまで12時間ほどかかっていた部品展開の定期発注 処理が、移行直後は3時間で終了し、さらに処理見直しを行った ことにより30分で終了します。時間がかかるため月に数回しか展 開できなかった処理がデイリー化できるようになったことで、生産計 画と調達のリードタイムが短縮したほか、夜間に詰めていたオペ レーターを削減できたことも大きな成果です。システム保守や運用 にかかる費用も含め、全体で約1/3ものコスト削減を図ることがで きました」(根小屋氏)。

※2
Job Control Language:ジョブ制御言語

データベースの活用を積極的に推進

今後は、2010年4月から始まった新たな中期計画の目標となる「モ ノづくりへのIT活用」を本格化させるため、業務フローの再構築とと もに、システム全体の要となる統一データベースの構築や経営コッ クピットの導入を図りながら、「オープン基盤の柔軟性を活かし、業務 改革を積極的に推進していきたい」と根小屋氏は語ります。

既存資産を最大限に活用することで、ミニマムなコストで競争 力強化に向けたIT基盤を構築することに成功したクボタ 筑波工 場。

これからも日立は、オープンミドルウェアを核としたサービスプ ラットフォーム製品群と、日立システムとの密接なパートナーシップの もと、グローバル市場における同社の企業価値向上を力強くサ ポートしてまいります。

移行後のシステム構成図

USER PROFILE

株式会社クボタ

株式会社クボタ

[本社] 大阪市浪速区敷津東1-2-47
[筑波工場] 茨城県つくばみらい市坂野新田10
[創業] 1890年
[資本金] 840億円(2009年3月31日現在)
[従業員数] 25,140名(2009年3月31日現在、連結)
[事業内容] 農業機械、エンジン、産業機械、環境施設、ポンプ、住宅機材、空調機器などの製造販売

PARTNER PROFILE

株式会社日立システムアンドサービス

[本社] 東京都港区港南2-18-1
[設立] 1978年
[資本金] 41億9千万円(2009年3月31日現在)
[従業員数] 5,215名(2009年3月31日現在、連結)
[事業内容] システムインテグレーション(SI)事業、ソフトウェアパッケージ事業、情報処理機器販売事業

特記事項

  • この記事は、「はいたっく 2010年4月号」に掲載されたものです。
  • 記載されている会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。
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