中国有数の金融機関で
高度なシステム運用を実現した「JP1」
経済成長が続く中国の金融機関では、業務量の増加にともない
金融サービスを支えるITシステムの運用管理が一段と高度化・複雑化しています。
そこで中国農村部に展開する金融機関 農村信用社の中でも全国トップの成長を記録している
江蘇省農村信用社連合社(こうそしょうのうそんしんようしゃれんごうしゃ)は、データセンターにおけるITシステム運用と
メンテナンス管理レベルを高めるため、日立の統合システム運用管理「JP1」を導入。
大量のジョブ管理とシステムの性能/稼働監視を自動化し、運用負担の低減とサービスレベルの向上を実現しました。
国内の運用管理ソフト市場において、14年連続トップシェア*1 の評価をいただいている統合システム運用管理「JP1」。その信 頼性や品質は、著しい成長を続ける中国にも着実に浸透してい ます。2011年にJP1の導入に踏み切ったのは、経済先進地域と して知られる上海経済圏の一角を占める江蘇省の金融機関で ある江蘇省農村信用社連合社(以下、江蘇農信)です。同社は 1つの市連合社*2と82の県/市連合社の共同出資で設立され たもので、農家向けの金融サービスをベースに、県/郷レベル*3 の経済発展をサポートする役割を担っています。
江蘇農信は2001年の設立以来、地域の金融機関として経営 力を強化し業務は迅速に発展、2010年6月末時点での貯金残 高は7,121億元と、その増量幅は全国農村信用社の中で1位に ランキングされました。また貸付金の残高も5,196億元となり、トッ プの成長を維持しています。
こうした業務量の拡大に対応するため、江蘇農信が保有す るデータセンターである江蘇省情報決算センターはIT基盤と業 務システムの強化・整備に注力。現在は省内61の銀行と2つの 村/町銀行、2,700余りの営業所のシステムを統括する45の業務 システムを運用しています。その取引件数は1日平均約443万 件、取引金額は1日平均約554億元に達し、「技術者個人の努 力や熱意だけではハイレベルな運用の維持が難しいことがわ かってきました」と、江蘇省情報決算センター 副社長の傅暁三 氏は振り返ります。
従来、江蘇農信の業務システムは、それぞれ独立した稼働 監視ソフトによって運用されていました。このため、膨大な数の サーバやストレージの稼働状況を見極め、トラブルの芽を事前 に摘み取るのは非常に困難な状況でした。また、統計やレポー ティングといった業務システムの定型処理も手動作業に頼って いたことから、処理スピードだけでなく、操作ミスやオペレーショ ン品質のバラツキなどにより、江蘇省情報決算センターが掲げ る運用・メンテナンスレベルを堅持し続けるのは難しい状況に なってきたのです。
江蘇農信はITシステム運用とメンテナンスの品質を高める ツールを模索する過程で、同社のIT構築を担当するパート ナー企業 南京紫金社から日立のJP1を提案されました。そし てJP1が持つシステム運用と性能/稼働監視の自動化・効率 化といった特長とその実績を評価して採用を決定。南京紫金 社と日立の現地法人*4 は、同社の幅広い要求項目をくみ取り ながら、ジョブ管理製品「JP1/AJS2」*5 とアベイラビリティ管理 「JP1/PFM」*6 を適用した統合管理プラットフォームを構築す ることに成功したのです。
南京紫金社の技術ディレクターを務める仲澄氏は、「JP1は日 本において十数年にもわたる開発と運用の実績があります。こ のため技術とノウハウの蓄積が豊富で、細かい部分のチェックま で網羅されています。例えば、日々のミッションをもれなく実施する ため、担当者はどのようなプロセスで業務を行えばいいのか、シ ステムに変更が発生したら、どのように設定し直すべきかなど、 細かな業務に対応したノウハウテンプレートが用意されていま す。このため、すぐにレベルの高い運用管理業務を行うことがで きるのです」と江蘇農信にJP1を提案し た理由を語ります。
JP1の導入後、江蘇農信のシステム運 用・メンテナンス作業は、手動から自動 へと切り替えられました。同時に、複数に 分散した環境でメンテナンスを行ってい たシステムを総合管理プラットフォームに 集約することで、運用・メンテナンスの効 率と品質はさらに高いレベルへと引き上 げられました。
江蘇省情報決算センター 稼働保障 部 副経理の邵中峰氏は、「これまで運 用・メンテナンスを行う際には、バッチ処 理の再編成作業が多数発生していまし た。再編成は論理関係が複雑で、広範 なプロセスに影響を与えるため、負荷の かかる作業でした。しかしJP1の導入に より、ジョブ管理が自動化されたため、担 当者は複雑な変更作業から解放され、操作ミスも防げるようにな りました。さらに、サーバのCPUやメモリーの利用状況、業務プロ セス上で発生しているイベントやログの解析なども、すべて一元 的に把握できるようになり、業務効率と品質が大幅に向上しまし た」と語ります。
江蘇省農村信用社連合社のシステム構成図
中国には「上医は未病を治す」という言葉があります。"名医 は病が未(いま)だ生じないうちにそれを見極め治す"という意味で、シ ステム運用に当てはめれば、"サーバの稼働状況やジョブの処 理状態を監視することで、性能劣化やトラブルの予兆を早期に 発見・対処すること"になるでしょう。江蘇農信の金融技術部門 はJP1/AJS2とJP1/PFMが実現するこうした機能をフルに活用 し、システム運用状況の可視化と一元化によるプロアクティブな 運用管理を実現したのです。
「45もの業務システムをすべて手動で管理・監視しようとする と、ミスも出やすく安定稼働を確保できません。そこでわれわれは JP1を利用して、システム全体の稼働状況を画面上に見やすく 表示することで、異常な傾向を早期に発見し、問題が顕在化す る前に撲滅できる体制を整えたのです」と邵中峰氏は語ります。
このほかにも江蘇農信は、JP1をホストの金融システムに接続 して業務データを迅速に抽出し、各連合社に提供するサービス も行っています。従来この作業は手動でスクリプトを作成し、デー タを抽出する方法で行っていました。しかし連合社ごとにニーズ が異なり、抽出データの要求も多様であったため、時間がかか り、管理も不便であったといいます。これもJP1が実現した業務の 自動化と効率化の一例となります。
江蘇農信は2011年から「ISO20000品質規格認証プロジェクト」 を立ち上げ、ITサービスマネジメントの品質向上を実現するため の体制強化を進めています。今回導入されたJP1は、その活動の 推進を強力に支援するツールとして、「運用・メンテナンス管理のレ ベルアップに大きな効果があった」と、評価されています。
中国やインド、東南アジア諸国などでも、ビジネスの進展にとも なって高信頼なシステム運用や業務の自動化、効率化が強く求 められています。日立はJP1のグローバル提供を今後も積極的に 推進し、海外で活躍する日系企業やローカル企業の幅広い問 題解決を強力にサポートしていきます。
USER PROFILE
江蘇省農村信用社連合社
[事業概要]
全国農村信用社の改革試行拠点であり、江蘇省政府の許可の下、中国
人民銀行の承認を得て2001年9月19日正式に開業した省レベルの金融
機関。農家向けサービス提供をベースに農業の産業化を推進、県・郷レ
ベルの経済発展と社会進歩をサポートする役割を担っている。設立以来、
業務は迅速な発展を遂げ、2010年6月末時点で、江蘇省農村信用社の
貯金残高は7,121億元にのぼり、貯金の増量幅は、全国農村信用社の中
で1位を記録している。
関連リンク