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「守りの整備」と「攻めの運用」への挑戦を支援するJP1
〜600ノードものマルチベンダーシステムを統合監視〜

ビジネス環境の急激な変化やサービスレベル向上への対応を図るため、 システム運用部門には「守り」から「攻め」への転換が強く求められています。

ふくおかフィナンシャルグループ(以下、FFG)のシステム運用を担う 福岡コンピューターサービス株式会社(以下、FCS)は、 3銀行のシステム統合にともない、監視対象が600ノード以上に増えたことを契機に、 株式会社 アシスト(以下、アシスト)の協力のもと、日立の統合システム運用管理「JP1」を導入。

監視要員を増やすことなく、システム全体の障害対応と内部統制を強化するとともに、 キャパシティプランニングや障害対策のナレッジ化といった 「攻めの運用」も実現する統合監視基盤を構築しました。

3銀行のシステム統合を契機に監視対象が急増

菅野 嘉則 氏の写真
福岡コンピューターサービス株式会社
システム運用部
部長代理
菅野 嘉則 氏

1979年に福岡銀行のシステム部門より分離独立して設立され たFCS。

同社は福岡銀行グループの基幹系バッチシステムや ATMなどの運用を担いながら、幅広い企業に向けたシステム構 築・運用のノウハウを蓄積してきました。

2007年4月からは金融持 株会社として設立されたFFGの一員として、株式会社 福岡銀行、 株式会社 熊本ファミリー銀行、株式会社 親和銀行といった九州 を営業基盤とする地域金融グループのシステム運用を担う存在 へと業務範囲を大きく拡大。

そして2009年1月から開始された3行 のシステム統合を契機に、複数拠点に分散していたサブシステム の監視・運用もFCSが一手に担うことになりました。

「マルチベンダー構成のシステムが約170、合計ノード数では 600を超える大規模サブシステムの統合運用を支援するにあたり、 われわれは人員やコストを増やすことなく、いかにシステム全体の 安定稼働を図れるかを重点目標に据えました。そこで、これまでバ ラバラだった運用の標準化と障害対応のさらなる強化、内部統 制への対応などをテーマに、新たな統合管理基盤の構築をめざ したのです」と語るのは、FCS システム運用部 部長代理の菅野 嘉則氏。

菅野氏とともに運用現場を率いるシステム運用部 調査 役の荒木 史郎氏は、同社の要件に合った運用管理ソフトウェア と導入支援ベンダーの調査に着手。FFGの意向も含めた慎重な 審査の結果、日立の「JP1」と豊富な実績を持つアシストがプロジェ クトパートナーに選定されました。

効率的な構築・展開に向け、さまざまな工夫を実践

荒木 史郎 氏の写真
福岡コンピューターサービス株式会社
システム運用部
調査役
荒木 史郎 氏

「当社では以前からポイントソリューションとしてJP1を導入して おり、その性能を高く評価していました。しかしこれだけ大規模な 統合管理にJP1を適用するのは初めてでしたので、マルチベン ダーな大規模システムへの導入実績と、要件定義から運用までを しっかりサポートしてくれるアシストさんに協力していただくことにし ました」(荒木氏)。

今回、FCSへのJP1導入を支援したアシストは、JP1の機能を熟 知したSEを多数擁し、サポート品質でトップクラスの評価を得てい る日本有数のパッケージソフトウェアインテグレータです。

FCSとアシストはシステム全体の安定稼働や内部統制への対応を図るた め、豊富なJP1製品群の中から稼働監視、プロセス監視、性能監 視、ログ監視、障害通知といった機能を選択。

展開時のトラブルを 未然に防止するため、JP1のエージェントプログラムなどのインス トール時にリソースや競合の問題がないかを確かめるヒアリング シートを各ハードウェアベンダーへ配布するなどの工夫をこらしな がら、各業務システムの要件やOS仕様に合わせた詳細な統合 監視設計を実施しました。

「まず初めに監視のマスターポリシーを定義して、システムごとに 必要な項目をコピーすることで、監視基準の統一化と設定ミスの 防止を図りました。この間、ハードウェアベンダー各社から、詳細な 情報提供にご協力いただいたこともスムーズな導入に役立ちまし た」と菅野氏は当時を振り返ります。

また、膨大なノード数にのぼる 各システムそれぞれの“しきい値”を見極めることは非常に困難 だったため、初期はJP1のデフォルト値(警戒値70%、危険値90%) を採用し、運用しながらそれぞれ適正な値に調整していく手法を 選択。統合監視コンソールに表示される検知イベントについても、 デフォルトの8段階から3段階(エラー・警告・情報)に選別すること で、運用現場の過剰反応を抑制しつつ、対応レスポンスの迅速化 を図るスタンスで実装を進めました。

そして2009月1月より、FCSデー タセンターにおける統合運用基盤の本稼働がスタートしたのです。

TCOを当初予想の半分以下に抑える

「導入効果はすぐに現れました。従来はユーザーからの一報で 知ることがほとんどだった障害がJP1によってリアルタイムに検知 でき、無人となる夜間でもメール通知などで迅速な対応が行える ようになったのです」と語る荒木氏。

同時に、定期的なリブート処 理を実施していなかったために起こるメモリーリークや、不要な データを削除していなかったためのディスク不足など、これまでな らサービス停止で初めて状況が把握できたようなトラブル要因も その予兆をとらえ、警告段階で察知できるようになりました。

「こうした監視運用の“見える化”によって致命的な障害の芽を 事前に摘み取れる環境が整備されたことも、システムの安定運用 に大きく貢献しています」(荒木氏)。

JP1では統合コンソール上の監視マップに障害個所や影響範囲 がわかりやすく表示されるため、障害切り分けの一時判断が容易 になったほか、障害履歴のデータベース化(ナレッジ化)も実現し、 各ベンダーへの展開スピードと監視品質が大幅に向上しました。

さらに、データセンターでは法定点検や電源工事などで定期的 に全システムを一斉停止しなければならないケースがあります。従 来は600ノード以上ものシステムを限られた時間内でシャットダウン するのに大きな人的負担がかかっていましたが、「JP1による一括 シャットダウンで作業量が1/10ほどに減りました」と菅野氏。

これら 一連の監視業務の効率化と自動化により、当初、3行のシステム 統合を見据えてオペレーターを30人体制と予想していたものが現 状の20人に維持することができました。そして従来、LTO※1や DAT※2などでシステムごとに取得していたバックアップもストレージ 上に一括集約したことで、「人件費や媒体装置、メディア削減など でTCO※3を当初予想の半分以下に抑えることができました」と菅 野氏は胸を張ります。

このほかにも、バックアップログや障害ログ、各処理の履歴をい つでも参照可能となったため、内部統制のさらなる強化も達成す るなど、FCSは大規模システム統合に向けた「守りの整備」を適正 なコストでトータルに実現することに成功したのです。

※1
Linear Tape Open:磁気テープ記憶装置
※2
Digital Audio Tape
※3
Total Cost of Ownership

「守りの整備」から「攻めの運用」に向けた取り組みを展開

「今回の統合運用基盤の構築はそもそも、業務の増大が予想 されるシステム統合において、当社側の要員確保が困難な状況 からスタートしたものでした。しかしアシストさんや日立さんのご協力 のおかげで、結果的には期待以上の効果を上げることができまし た。今後われわれ運用部門としては、この基盤と、そこで得られた データをフルに活用し、「守りの整備」から「攻めの運用」に向けた 取り組みを進めていくつもりです」と意気込みを語る菅野氏。

その 具体例として荒木氏は、「性能監視データを基に、サーバ統合や 機器増設などをタイミングよく提案するキャパシティプランニング、障 害や事例のナレッジ化によるサービスレベルの向上、災害対策を 視野に入れた、より実用的で現実的な復旧戦略の策定など、さまざ まな提案を行っていくための準備を進めています」と付け加えます。

ミッションクリティカルな金融系システム基盤の安定稼働とTCO 削減を強力にサポートするFCS。その企業価値向上を支援する ため、これからも日立はアシストとの緊密なパートナーシップのもと、 JP1製品群のさらなる強化と拡充を図っていきます。

システム構成図

USER PROFILE

福岡コンピューターサービス株式会社のロゴ

福岡コンピューターサービス株式会社

[本社] 福岡市博多区博多駅前2-6-6
[設立] 1979年10月
[資本金] 5,000万円
[従業員数] 212名(2009年3月末 現在)
[事業内容] オンラインサービス、ソフトフェア開発、業務受託サービスなど

PARTNER PROFILE

株式会社 アシスト

[本社] 東京都千代田区九段北4-2-1 市ヶ谷東急ビル
[設立] 1972年3月
[資本金] 1,000万円
[従業員数] 800名(2009年4月 現在)
[事業内容] コンピュータ用パッケージ・ソフトウェアの販売、技術サポート、教育およびコンサルティング

特記事項

  • この記事は、「はいたっく 2010年5月号」に掲載されたものです。
  • 記載されている会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。
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