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システム開発の課題と解決策をプロが語る!
疎結合型のワークフロー基盤を構築し段階的な基盤統合によるサービスの共通化を実現


ますます加速する経営スピードに対応できるシステムを構築するとともに、システム開発コストや運用コストを削減していく――。

今、多くのシステム開発者がこの課題に直面している。その解決に役立つのが、企業情報システムの将来像を見据えたミドルウェア。例えば、SOAベースのワークフロー基盤だ。これを使うことによって、どのような成果が得られるのか。

中小企業経営者向け保険のリーディング・カンパニーである大同生命保険のシステム開発を手がけるT&D情報システムの国富隆氏と内田浩貴氏、そしてミドルウェアを提供する日立製作所の吉村誠氏に、日経BP社の田島篤氏がシステム開発の課題と解決策を聞いた。

最小のコストで高品質を得るシステム開発とは

国富氏の写真
国富氏

日経BP社 コンピュータ・ネットワーク局 プロデューサー 田島 篤氏(以下、田島氏) ビジネスを取り巻く環境が急速に変化する中で、企業情報システムにもさらなる変革が求められています。実際、ソフトウェア開発の現場ではどのようなことが起こっているのでしょうか。

日立製作所 情報・通信システム社 ソフトウェア事業部 第2AP基盤ソフト設計部 担当部長 吉村 誠氏(以下、吉村氏) 日立製作所(以下、日立)では、技術がお客さまにどう貢献できるかを考えてソフトウェアを開発・販売しています。これまではお客さまの三つの立場、すなわち、アプリケーション開発者、システム運用者、業務主管のそれぞれに向けて価値をご提案してきました。最近では、さらに、第4の立場である経営層に向けてIT投資に対する効果をお見せすることも求められるようになりました。

内田氏の写真
内田氏

T&D情報システム 事業三部 シニアマネージャー 国富隆氏(以下、国富氏) 当社は、T&D保険グループのシステムを支える会社として、システムの開発から運用までの全フェーズを担当しています。以前はコストをかけても先進的で良いシステム、役に立つシステムを作ることが求められてきましたが、この3〜4年は特に、最小のコストでソフトウェアの品質と生産性を高めることが最優先の課題となりました。

T&D情報システム 事業三部 新契約システム開発課 プロフェッショナル 内田浩貴氏(以下、内田氏) 例えば、大同生命保険の基幹系オンラインシステムは営業と事務の2系統に分かれており、サーバーもそれぞれに数十台ずつあります。これだけの台数があると運用管理コストも高くなりますし、システム開発や更改も別々に行わなければなりません。コスト効率を高めるには統合する必要があると考えています。

システム統合への第一歩として疎結合型ワークフロー基盤を構築

田島氏 2系統ある基幹系オンラインシステムを統合することが、新システムを構築するにあたっての重要テーマになっていたわけですね。

国富氏 元々はリスク分散が目的でした。仮に一方のシステムが止まっても、もう一方の業務は続けられるようにしたいという考え方です。しかし、最近は営業と事務の間で業務をきれいに切り分けられなくなっていますし、コストがかさむという問題もあります。そこで、2010年に開発がスタートした新契約システムでは2系統あるシステムの統合を見据えた"次世代"のワークフロー基盤をまず構築し、そこに新契約システムを再構築することにしました。

吉村氏 現行の事務システムには日立のワークフロー基盤をお使いいただいております。新契約システムの構築にあたって「業務ロジックとワークフローコントロールを分離して保守性を高めたい」とのご要望がありましたので、疎結合にも対応したSOAベースのワークフロー基盤を日立から提案し、ご採用いただきました。

国富氏 実は、現行の事務システムでは業務とワークフローの間に自社製ミドルウェアを介在させているのです。このミドルウェアは業務ごとに作りこまれてきたシステムであったため、ワークフローの開発やテストには大きな工数が必要でした。そこで、本来はシステム基盤整備を狙ったプロジェクトではなかったのですが、新契約システムを開発する際に疎結合のワークフロー基盤も併せて構築し、将来の本格的なシステム統合に向けた第一歩にしようと考えました。

大同生命保険の新契約システム概念図
大同生命保険の新契約システム概念図

段階的な移行で統合を着実に進めて本社事務部門の工数を削減

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吉村氏

田島氏 稼働中のワークフロー基盤を入れ替えるのは、かなり難しい作業になると思いますが。

国富氏 新契約システムは2012年の本稼働を目指しており、その時点で事務システム内の新契約に関する部分は新しいワークフロー基盤に乗ることになります。営業システムはその後に更改することになると思いますので、そのタイミングから順次新ワークフロー基盤に乗せる予定です。最終的には一つに統合するとしても、一度で実現するには"体力"が必要ですし、リスクも伴います。稼働しているシステムへのリスクを抑えつつ、出来るところから段階的に進めていくことが重要でしょう。

内田氏 営業システムにも事務システムにもたくさんの業務があります。すべての乗せ替えが完了するのは数年先になると思います。

吉村氏 欧米では、SOAを利用して一気にシステムを統合することが多いと聞いています。しかし、日本では、現在の仕事を動かしながら統合を進めていかなければならないのが現実です。まず基盤を統合し、業務を共通モジュール化して段階的につなぐ手順のほうが日本の企業風土には適しているでしょう。

田島氏 ワークフロー基盤を統合することによってどのような効果が期待できますか。

国富氏 新契約システムの稼働後は本社事務部門の作業工数が減ると見込んでいます。現状では営業システムにはワークフローが備わっていないため、支社の営業部門から送られてきた契約書類を本社事務部門で審査し、不備が見つかると、メールなどで連絡して対処しています。メールでの処理が介在すると、審査処理の進捗がシステム上に残らないため、案件の状況管理が難しくなります。新契約システムではそうした不備への対処もワークフローで一元管理できるため、人手による介入は最小限で済みます。

クラウド・コンピューティングの利活用

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田島氏

田島氏 IT基盤について、システム統合以外にも中長期のテーマをお持ちですか。

国富氏 やはり、クラウド・コンピューティングへの対応でしょう。社内でも「クラウドを利用すればシステムをもっと短期間にシステム構築できるのではないか」と質問を受けています。政府のエコポイントの申請システムがあれほど早く稼働したのはSaaSを採用したためだということをよく理解しています。今後、何を開発するにしても、クラウド・コンピューティングは、キーワードになってきますね。

内田氏 クラウド・コンピューティングには、開発環境としての役割も期待しています。既存システムに影響を及ぼすことなく、担当者別や言語別にテストを行えるようにするには、複数の専用環境がどうしても必要になります。仮想マシンを使うとしても社内で準備できるリソース量には限界がありますから、外部のリソースを期間限定で使いたいですね。ただし、テストデータをどうやって安全に社外に持ち出すかという課題はあります。

吉村氏 業務量に応じてリソースを柔軟に割り当てできるクラウド技術をお客さまにご提供することは、日立の使命であると考えております。また、ソフトウェア開発でクラウドを使いたいというご要望があることは承知しておりますので、仮想マシンと開発ツールのライセンスを組み合わせた開発環境クラウドの仕組みもいずれご提供することになるでしょう。さらに、経営層向けに「IT投資の価値を"見える化"してくれるクラウド」といったものも構想中です。

田島氏 それはITポートフォリオ分析のような機能ですか。

吉村氏 プラットフォームとしてご提供するPaaSの中にアプリケーションの稼働状況を監視・分析する仕掛けを組み込んでおき、既存の社内業務であれ、新規に開発したシステムであれ、クラウドに乗せるだけで分析結果をグラフなどで見られるようにするというものです。

国富氏 当社でも、稼働状況を可視化していく必要があると思います。

吉村氏 ご提供を開始するまでに、それほど時間はかからないものと思います。ご期待ください。

田島氏 本日は、どうもありがとうございました。

USER PROFILE

大同生命保険株式会社

[本社] (大阪)大阪府大阪市西区江戸堀1-2-1  (東京)東京都港区海岸1-2-3
[設立] 1947年7月14日(創業1902年7月)
[資本金] 1100億円
[従業員数] 内務職員3520名、営業職員3954名(2011年3月末現在)
[事業概要]
T&D保険グループの中核企業として、企業市場に特化した独自のビジネスモデルを展開する生保大手。お客さまに「最高の安心」と「最大の満足」をお届けするために、質を重視した経営の推進による持続的な成長の実現に向けて、「コアビジネスの強化」「さらなる成長に向けた"業務革新"」「財務基盤の一層の強化」に取り組んでいる。

PARTNER PROFILE

T&D情報システム株式会社

[本店所在地] 埼玉県さいたま市浦和区針ヶ谷4-2-18
[東京事業所] 東京都港区海岸1-2-3
[大阪事業所] 大阪府大阪市西区江戸堀1-2-1
[設立] 1999年7月15日
[資本金] 3億円
[従業員数] 722名(平成23年7月1日時点)
[事業概要]
事業概要:戦略的IT投資により先進的サービス提供とコスト競争力強化を図るため、太陽情報産業株式会社と大同生命保険株式会社システム部および大同生命計算センターとシステム組織を統合。常に先進的で高度な技術を探求し、T&D保険グループ企業各社に対して、システム構築・運用などのサービスを提供している。

特記事項

  • この記事は、「ITpro 2011年8月19日」に掲載されたものです。
  • 記載されている会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。

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