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ミドルウェア

uVALUE 実業×IT

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既存資産のマイグレーションとシステム共同利用で
システム運用コストの低減を実現

いま多くの企業では情報システムのランニングコストや開発コストの低減が重要な課題となっています。

そこで長崎市中央卸売市場において卸売業を営む株式会社 長果(以下、長果)と 長崎大同青果株式会社(以下、長崎大同青果)は、 これまで個別に運用していたシステムの共同利用を決断。

日立のメインフレームで稼働していた長果の基幹システムをオープンミドルウェアによる マイグレーションによって継続利用するとともに、業務効率を向上させる「仕分システム」を新規導入するなど、 コストメリットと柔軟性をあわせ持つIT基盤を構築しました。

吉村 五興 氏の写真
株式会社 長果
管理部 次長
吉村 五興 氏

前田 裕樹 氏の写真
株式会社 長果
管理部 主任
前田 裕樹 氏

江口 勝憲 氏の写真
長崎大同青果株式会社
管理部 電算課 課長代理
江口 勝憲 氏

水田 晋 氏の写真
長崎大同青果株式会社
管理部 電算課 主任
水田 晋 氏

システム共同利用によるコスト低減を図る

古くから貿易港として栄え、いまでも街の随所に異国文化の香り が漂う長崎市。

その市民生活に欠かせない青果物の安定供給を 担う長崎市中央卸売市場において、出荷者や生産者から集荷し た青果物を、仲卸業者や小売業者と取り引きしている卸売会社が、 互いに競合関係にある長果と長崎大同青果です。

両社は長年、 それぞれ異なるベンダーのメインフレームで情報システムを構築し、 業務運営を行ってきました。しかし、量販店の産地直結取引をはじ めとする市場外流通の増加や手数料自由化などの波を受け、IT 投資のスリム化を決断。

「その第一歩として、メインフレームからオー プンシステムへの移行と、新システムの共同利用によるコスト低減 を図ろうと考えました」と語るのは、長果の管理部次長を務める 吉村 五興氏です。

競合関係にある2社が同じシステムを利用するという判断は、卸 売業界に限らず非常に珍しいケースといえますが、「システム全体 のコストを2社で折半すれば、運用コストや新規開発コストの削減に よって、将来に向けた業務改革にも弾みがつきます」と続ける吉村氏。

また長崎大同青果の管理部 電算課 課長代理の江口 勝憲氏も、 「どちらのシステムが存続することになっても、青果卸としての業務 内容にそれほど大きな違いはありません。それよりもコスト低減と将 来に向けた柔軟な基盤の確立が何よりも重要な課題でした」と語り ます。

そこで両社は、双方のシステムベンダーに次世代システムの 構築プランを要請。長果と長崎大同青果が公平な立場で優れたプ ランを採用し、新システムへ共同移行する流れとなったのです。

既存業務のオープン化に加え、大胆な業務改革プランも提示した日立

そして、2社共同利用システムの継続ベンダーとして選ばれたのが、 長果の基幹システムを約20年にわたって担当していた株式会社 日立システム九州を中心とする日立グループでした。

日立は、複数の 青果卸売業向けシステムとして高い完成度を誇っていた長果の VOSK資産を、オープンマイグレーションによってそのまま新環境へ移 行するとともに、既存OCRの有効活用を図る「OCR荷受システム」や、 分業体制で効率的な相対振り分けが行える「仕分システム」を新規 に提案。

「既存業務のスピーディなオープン化だけでなく、将来を見 据えた大胆な業務改革プランも合わせて提示してくれたことが決め 手となり、日立さんに決定しました」と長果の吉村氏は振り返ります。

現在、日本の多くの生鮮卸売市場では、従来の「セリ売り」から 「相対取引」へと販売手法が急速に変化しています。

売り手が複 数の買い手に「いくらで買うか」を競争させ、最も高い値段を出した 相手に売る「セリ売り」は当日仕入・当日販売が基本。これに対し、売 り手と買い手が直接交渉して値段を決める「相対取引」では、前日 に予約で注文を受け、モノが着荷した時点で仕分けるため、業務内 容はまったく異なります。

長果と長崎大同青果の業務システムは、長 年主流だったセリ売りをメインに組まれており、近年主流となってきた 相対取引は、すべて銘柄担当者の指示を仰ぎながら前日・当日の2日 間にわたって仕分と入力が行われる手作業が中心でした。このため、 勤務時間が長く不規則になっているという課題を抱えていたのです。

そこで日立は今回のプロジェクトを契機に相対取引のさらなるシス テム化を推進し、注文・入荷情報の発生時点入力によるリアルタイム 処理と、担当者以外の振り分けも可能とする新シス テムを提案。この、物流業務の平準化による長時 間勤務の解消策が両社に高く評価されたのです。

移行作業を効率化したオープンミドルウェア

HA8000/70 の写真
新しくプラットフォーム
となった「HA8000/70」

共同利用の基幹システムとしてオープン環境で の継続運用が決定した長果のVOSK資産には、 効率性と移行性を考慮して日立オープンミドルウェ アを活用したマイグレーションが実施されました。

基本プログラムの移行には、既存業務ロジックをその まま流用できる「COBOL2002」が適用され、当初は 移行の困難さが指摘されていたEAGLE/4GLも 問題なくコンバージョンすることに成功。また「XMAP3」により、従来 の画面イメージをストレートに移行できただけでなく、連続帳票からカッ ト紙に変更された帳票定義についてもマージン(余白)の微調整だ けで済みました。

さらに、ソート機能やデータ抽出などに使われていたNHELPも 「NHELP実行支援ライブラリ」により引き続き活用できるようになっ たほか、「JP1/AJS2※」によってジョブネットも一段と高い操作性と 運用性が提供されました。

「JP1の導入により、システムトラブルの際には携帯電話へメールで 通知されるようになったため、監視負担が軽減でき、運用も楽になり ました」と、長果の吉村氏は笑顔を見せます。

日立は、オープンミドルウェアを活用したスピーディかつ高品質なマ イグレーションの成果物を、新プラットフォームとなった日立アドバンスト サーバ「HA8000/70」に実装。1つのシステム筐体に両社の環境を 構築し、ユーザーデータとユーザープログラムを別々に管理する手 法で、運用コストを最小化しながら、両社の業務セキュリティも確保 することに成功したのです。

JP1/Automatic Job Management System 2

業務全般のスピード化と省力化を実現

青果卸売市場では、さまざまな取引形態で、伝票入力時間の短 縮と仲卸向け請求書の発行、日次バッチ処理の短縮などが重要な 課題となっています。

オープン環境への移行にともなう最新ハードウェ アと仕分システムの導入により、「これらの課題が一気にクリアできま した」と語るのは、長果の管理部 主任を務める前田 裕樹氏。

「日次 バッチは従来100分かかっていたのが12分、月次バッチも120分がわ ずか10分に短縮しました。仕分システムの導入で、相対取引の伝票 入力が前日に行えるようになったことも大きいですね。営業担当者が ボールペンで書いた伝票をシステムに再入力していた作業もOCR で直接読ませる形へ進化させたことで、入力業務全般の効率化と 省力化に貢献しています」(前田氏)。

そして長崎大同青果の管理部 電算課 主任の水田 晋氏も、「今 まで手作業で行っていた業務がシステム化されたことで、すべての ステップが効率的に流れていくようになりました。当初はシステムに 慣れていないスタッフへの教育にかなりの労力を費やしましたが、そ の効果は着実に出てきています」と、オープン化による業務改革を高 く評価。

これらの効果によって両社とも、伝票処理にかかわる日々の 業務負担やケアレスミスが減少し、事務部門スタッフの労働時間短 縮や数値管理の向上を実現できたとのことです。

両社の相乗効果で、さらなるシステム改革を

「今回のプロジェクトは、非常に厳しい環境にありましたが、日立さん にお願いしたおかげで、ワンストップショッピングではないですが、トー タルでサポートしていただき、オープンシステムにありがちな原因不明 の現象に対するトラブル対応、問い合わせ対応などがスムーズにで きました。これは、ワンストップシステムサポートをモットーとする日立オー プンミドルウェア製品群のおかげだと思っています。これからは、さら なる勤務時間の短縮や営業活動への集中を図るため、仕分システ ムの機能強化を推進するとともに、今回販売原票の一行単位に損 益を網羅した販売ファイルが実現したので、買受人別(売先別)、担 当者別の損益管理なども実現していきたい」と語る吉村氏。

長崎大同青果の江口氏も、「営業部門は現在もライバルですが、 われわれシステム部門は互いに助け合いながら、さらに使いやすい 環境をどう作っていこうかとオープンに話し合える関係になりました。 将来的に、両社の発想と工夫の相乗効果をうまく出していきたいで すね」と新システムへの期待を述べます。

全国の卸売市場を取り巻く環境変化と市場変革に対応するため、 柔軟性とコストメリットをあわせ持つオープンシステムへの移行と、業 務改革を支援する新システムの導入を果たした両社。

日立は、その 積極的な取り組みをオープンミドルウェアを中心としたITプラットフォー ムの拡充によって、これからも強力にサポートしていきます。

マイグレーションの実現イメージ

USER PROFILE

株式会社長果のロゴ

株式会社長果

[本社] 長崎市田中町279番地4
[取扱数量] 41,838トン(2008年度)
[従業員数] 正社員:57名(役員・契約社員含む)、パート:6名 合計63名(2009年11月16日現在)
[事業内容] 青果物およびその加工品の受託販売ならびに売買

USER PROFILE

長崎大同青果株式会社のロゴ

長崎大同青果株式会社

[本社] 長崎市田中町279番地4
[取扱数量] 46,656トン(2008年度)
[従業員数] 正社員:58名(役員・契約社員含む)、パート:6名 合計64名(2009年11月16日現在)
[事業内容] 青果物およびその加工品の受託販売ならびに売買

特記事項

  • この記事は、「はいたっく 2009年12月号」に掲載されたものです。
  • 記載されている会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。
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