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企業情報ニュースリリース

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2017年12月12日
株式会社日立製作所
Partners HealthCare

日立とPartners HealthCareが、AIを用いて
心疾患患者の再入院リスクの高精度な予測に成功

患者に適切な再入院予防プログラムを実施することで、
患者1人あたり年間約80万円の医療費低減効果を見込む

[画像]本AIを用いた、再入院リスク予測の活用イメージ
本AIを用いた、再入院リスク予測の活用イメージ

  株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:東原 敏昭/以下、日立) は、心疾患の入院患者が退院後30日以内に再入院するリスクについて、その根拠を提示するとともに、高精度に予測する人工知能(AI)技術を開発しました。米国の代表的な医療機関の一つであるPartners HealthCare(President and CEO: David Torchiana, M.D./以下、PH)と共同で、PHの有する医療データを用いた効果検証を行った結果、AIが患者の再入院リスクを高精度*1に予測できることを確認しました。さらに、AIが予測したリスクに応じて、適切にPHの退院後ケアプログラムを適用した場合のシミュレーションを行った結果、従来基準に比べ2倍以上の患者の再入院を防止し、1人あたり年間約80万円(7,000ドル)の医療費低減効果があることを確認しました。今後、日立とPHは、今後の入退院患者に対する本AIの効果検証や、医療従事者による評価を進め、実際の医療現場への提供をめざします。

  高齢化が進む先進国を中心に、医療費の増大が社会問題となる中、政府と民間医療保険会社の双方で、医療サービスの質の向上とコスト抑制の両立をめざす取り組み(バリューベース・ヘルスケア)が進められており、米国の病院経営では、医療の質の担保のために、30日以内の再入院率が重要な指標の一つとして管理されています。そのため、PHでは、特に再入院リスクの高い心疾患患者を対象として、退院後に脈拍データなどを収集し、メールや電話でのケアを提供するプログラム(CCCP*2)を実施し、再入院率の低減に取り組んできました。

  今回、さらなる再入院率の低減に向け、日立は、心疾患患者の再入院のリスクを予測し、その根拠を説明できるAI技術を開発し、PHと共に効果検証に取り組みました。

  本AI技術は、高精度な予測モデルを構築するために深層学習(ディープラーニング)*3を利用しており、PHが有する、入院患者に対して行われた処置や投薬、病歴などの医療情報と、過去の医療判断要素の蓄積である、医療ガイドラインの情報を学習することで、退院してから30日後に再入院するリスクを予測するものです。従来のディープラーニングは、利用した情報と予測結果との因果関係を説明することが困難なため、医療分野での活用において課題となっていました。そこで、日立は、ディープラーニングの学習結果を解析し、医師が理解でき、医療行為に反映するための判断ができるような数十個の要素のみを抽出して、リスク予測を行う技術を開発しました。このリスク予測式から、標準的な統計解析手法によって、再入院リスクと、判断要素の寄与度を算出することが可能です。これにより、高い予測精度と、医師が理解できるリスク根拠の説明の両立を実現しました。

  予測モデルの構築と効果検証にあたっては、2014年から2015年に入退院した心疾患の患者約12,000人の電子カルテに記載された治療内容や患者の容体などを用いました。この結果、本技術は高い予測精度(AUC 約0.71)と評価され、実用上の一つの目安となる70%を上回りました。この予測をCCCPに適用した結果をシミュレーションしたところ、入院中の医療費が高い順に適用患者を選ぶ従来の基準に比べて、再入院を防げる患者の数が最大2倍以上になり、患者1人あたり年間で約80万円の再入院コストを削減できる見通しが得られました。

  今後、日立とPHは、これから入退院する患者に対する効果検証や、医療従事者による評価を進め、実際の医療現場への提供をめざします。さらに、日立は今回開発したAI技術を用いて、医療向けのソリューションを提供するだけでなく、医療データを用いた予測が活用できる、健康保険事業者や製薬、救急サービスなどへの展開をめざします。

Partners HealthCare 医学博士 公衆衛生学修士 兼Connected Health Innovationシニアディレクター Kamal Jethwani博士のコメント

  「エンドユーザーである我々は、従来の機械学習プログラムの予測結果について、根拠が分かりませんでした。今回のイノベーションにより、医師や看護師は、なぜある患者が高い再入院リスクを持つのか、何をすれば良いのかが分かります。私たちはこの情報に基づいた医療サービス提供の実現をめざします。これは、機械学習の面でも、今日の最先端を一歩越えるものだと言えます。」

*1
AUC(Area Under the Curve) 0.71。AUCは統計・データ解析で用いられる、判断・分類精度の良さを0〜1で表す指標。完全に正しい判断・分類が可能な場合は1。
*2
CCCP: Connected Cardiac Care Program
*3
ディープラーニング(Deep Learning): 脳の神経細胞のメカニズムを取り入れたニューラルネットワークによる機械学習手法。

Partners HealthCare

Partners HealthCareは、Brigham and Women's Hospital と Massachusetts General Hospitalによって設立された米国の総合医療機関です。2つの大学病院、複数の地域病院や専門病院、医師ネットワーク、在宅医療や長期介護サービスなどを含む医療主体で構成されており、ハーバード大学医学大学院の主要な教育提携先です。http://www.partners.org/

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 研究開発グループ 研究管理部 [担当:加藤、石川]
〒107-6323 東京都港区赤坂五丁目3番1号
電話 : 03-6230-4200(代表)

以上

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