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企業情報ニュースリリース

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2016年11月22日

新型半導体コンピュータ向けに計算規模を10倍に向上する技術を開発

パラメータの処理を複数の要素で共有することで、回路規模を約10分の1に低減

  株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:東原 敏昭/以下、日立)は、イジングモデル*1を用いた新型半導体コンピュータ向けに、半導体デバイスのサイズを変えることなく、計算規模を10倍に向上する技術を開発しました。本技術は、演算回路と乱数発生器*2を複数の要素で共有するもので、FPGA*3と呼ばれる集積回路を用いて試作した新型半導体コンピュータに適用したところ、適用前と比較して、回路規模を約10分の1に低減し、低減前と同じ規模の半導体デバイスで約10倍の規模の計算処理が可能になることを確認しました。本技術により、FPGAを用いて、大規模な計算処理に対応することが可能になります。そして、新型半導体コンピュータの社会への適用を推進することで、大規模化・複雑化する社会インフラなどの最適化問題を解くことに適した技術の確立をめざします。

  新型半導体コンピュータは、都市における交通渋滞やグローバルサプライチェーンにおける物流コストなど、システム化された社会インフラの複雑な課題に対する実用解を計算処理により導き出し、システムの高効率化・高信頼化を実現するため、日立が独自に開発を進めているものです。これまで日立は、デジタル化により大規模・複雑化している社会課題を解決するため、膨大な計算量が必要な「組合せ最適化問題」を実用的な時間内で処理することができるコンピュータの開発に取り組んでおり、2015年2月には、20,480パラメータという膨大な規模に対応した専用チップの試作に成功し、実用解が高効率で求められることを確認しました*4。また、2016年6月には、社会課題を本コンピュータで計算処理可能な形に自動変換する前処理アルゴリズムを開発しました*5。しかし、社会課題が複雑化するにつれて、解く問題の規模が増加し、対応する計算機の大規模化が求められています。

  そこで日立は、大規模な計算処理に対応するため、演算回路と乱数発生器を複数の要素で共有する技術を開発しました。これらの技術により、FPGAを用いて試作した新型半導体コンピュータの回路規模を約10分の1に低減しても、本技術を適用する前と同規模の計算処理を実行することができ、また、低減前と同じ規模の半導体デバイスで約10倍の規模の計算が可能となります。
  開発した技術の特長は以下の通りです。

1. コンピュータ内の演算回路を複数の要素で共有する技術

  新型半導体コンピュータでは、経路や手順など、問題を構成している要素の状態を演算する回路が必要となるため、従来は、要素ごとに個別の演算回路を割り当てていました。今回、要素の状態が全て同時に演算されるわけではないことに着目し、同時に演算を行わない要素間で演算回路を共有できる技術を開発しました。

2. 乱数発生器を複数の要素で共有する技術

  新型半導体コンピュータでは、計算を行う際に乱数を用います。この乱数は、理論的にはそれぞれの要素で違う値を持つ必要がありますが、実証の結果、複数の要素に対し同じ乱数を用いても実用解が得られることが分かりました。

  今後、日立は、産学間での協創、オープンイノベーションを通じて、新型半導体コンピュータの早期実用化をめざし、複雑化する社会インフラに対応した大規模かつ高速な情報処理を可能とすることで、「超スマート社会*6」の実現(Society 5.0*7)に貢献していきます。
  なお、本成果の一部は、2016年11月24日に、広島で開催される「4th International Workshop on Computer Systems and Architectures」で発表する予定です。

*1
イジングモデル: 磁性体の性質を説明するために考案されたモデル。上向きか下向きの2つの状態をとる点(スピン)から構成され、隣接するスピン間の相互作用とスピンの状態からエネルギーが決まる。組み合わせ最適化問題をイジングモデルとして表現することが可能であり、その場合、エネルギーが最小になるスピンの状態が組み合わせ最適化問題の最適解と対応している。
*2
乱数発生器: 法則性(規則性)がない数の列を発生させる回路。最適な組合せを探索する際に使用する。
*3
FPGA: Field Programmable Gate Arrayの略称。製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路。特定用途向けの集積回路と比較して、低コストで開発が可能。
*4
日立製作所ニュースリリース「約1兆の500乗通りの膨大なパターンから瞬時に実用に適した解を導く 室温動作可能な新型半導体コンピュータを試作」
*5
日立製作所ニュースリリース「新型半導体コンピュータの実用化に向けて、要素間の複雑なつながりを規則的な構造に自動変換する前処理アルゴリズムを開発」
*6
超スマート社会: 必要なモノ・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細やかに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会。
*7
Society 5.0: サイバー空間とフィジカル空間(現実社会)が高度に融合した「超スマート社会」を未来の姿として共有し、その実現に向けた一連の取り組みのこと。狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続くような新しい社会を生み出す変革を科学技術イノベーションが先導していくという意味を持つ。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所
研究開発グループ 研究管理部 [担当:小平、安井]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
電話 : 042-323-1111(代表)

以上

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