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2007年9月28日
株式会社日立製作所

電気製品内部の熱や気流など、熱流体の状況を短時間で
解析・再現可能な製品まるごと熱流体シミュレーション技術を開発

製品内部の複雑な熱流体現象の影響を短時間で解析し、
製品設計に反映させることが可能に

  株式会社日立製作所機械研究所(所長:福本 英士/以下、日立)は、このたび、電気製品や電子機器内部の熱や気流などの熱流体の状況を短時間で解析・再現可能な、製品まるごと熱流体シミュレーション技術を開発しました。本技術は、解析対象となる製品全体を微小な六面体に分割するボクセルメッシュを用いた熱流体シミュレーションと、スーパーコンピュータによる並列計算技術を融合させることにより、製品内部の熱流体の状況を、従来の約6分の1の時間で解析し、影響を再現できる技術です。本技術により、製品全体の形状を数千万から数億個の要素で詳細に解析する大規模シミュレーションを短時間で行うことができ、製品設計の初期段階からシミュレーションを活用する解析主導型の設計が可能となり、設計時間の短縮が期待できます。

  近年、電気製品や電子機器の高性能化・小型化が進展し、部品の放熱などを考慮しながら高密度に実装するため、製品内部の気流や熱などの熱流体現象を解析することが重要になってきています。一方、迅速な製品化を行うため、開発期間を短縮することが求められています。
  このような背景から、製品設計の初期段階から製品内部の熱流体現象を定量的に予測し、早期に問題点を解決するため、製品全体の熱流体解析が可能な製品まるごと熱流体解析技術の確立が望まれていました。
  熱流体解析を行うには、まず、解析対象となる物体を一定の単位で分割するメッシュ作成作業と、そのメッシュをもとに計算機によるシミュレーションを実行する必要がありますが、従来、これらの作業時間を同時に短縮することが難しく、シミュレーションを高速に実行するためには、解析対象の形状に合わせた複雑なメッシュ作成を行う必要があり、その作成に多大な時間がかかっていました。特に最近の電子機器は実装が高密度であるため、製品内部が複雑な形状をしている場合が多く、形状に適合したメッシュを自動的に生成することが困難でした。一方、短時間に作成できる単純なメッシュを用いると、複雑な形状を表現するために膨大な数のメッシュ作成が必要になるため、製品まるごとのシミュレーションを実行する時間が膨大になってしまいます。そのため、製品サイクルの短い電子機器に対しては、製品まるごとシミュレーションを設計に適用することができませんでした。

  今回、日立は、メッシュ作成が容易なボクセルメッシュを採用するとともに、スーパーコンピュータによる並列計算技術を駆使した、高速解析・再現が可能な製品まるごとシミュレーション技術を開発し、製品設計への適用を可能にしました。本技術の特長は以下の通りです。

1.ボクセルメッシュによる製品まるごとシミュレーション

  微小な六面体要素の集合であるボクセルメッシュは、データ構造が単純なため、スーパーコンピュータの特長であるベクトル演算機能による高速処理や、データ通信量を節約した並列処理に適しています。そこで、ボクセルメッシュで生成された大量の要素を、スーパーコンピュータの処理能力を最大限に引き出して高速に実行する熱流体解析プログラムを開発しました。これにより、製品まるごとシミュレーションを製品設計へ適用できるようになり、高密度実装の電子機器に対して熱流体性能の定量的な評価が可能になります。

2.完全自動ボクセルメッシュ生成ツールによる高速メッシュ生成

  設計の初期段階でメッシュを作成する場合は、3次元CADデータをもとにメッシュを作成します。従来、この作業は手作業で行うことが主流であったため、多くの手間と時間がかかっていました。今回、要素サイズを指定するだけで、3次元CADデータから完全自動でボクセルメッシュを生成するツールを開発しました。人手による作成が不要なので、メッシュ生成を短時間に完了することができます。

  今回開発した製品まるごと流体シミュレーションを、ハードディスクドライブ(以下、HDD)の設計に適用し、装置内部に生じる3次元の気流のパターンや、各部品に及ぼす流体力の影響を詳細に解析しました。解析に際しては、まずHDDまるごとの形状を約5,000万要素のボクセルメッシュでモデル化しました。従来、約3週間かかっていたメッシュ作成が約30秒で完了するなど、大幅にメッシュ作成作業を短縮することができました。また、日立スーパーテクニカルサーバーSRシリーズを用いて解析プログラムを実行したところ、従来、約3週間かかるとされていたシミュレーションを、約1週間で終了することができました。さらに、シミュレーション結果を粒子画像流速計による流速分布の計測結果と比較検証したところ、HDDのように複雑な形状に対しても、ボクセルメッシュを用いて十分な精度で解析できることを確認できました。この製品まるごとシミュレーションによる解析結果は、HDD内部の流体部品の設計に生かされ、開発期間を約1ヶ月短縮することに貢献できました。

  なお、本成果は、2007年9月28日に茨城大学で開催される、日本機械学会茨城講演会にて発表する予定です。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 機械研究所 企画室 [担当:秋葉]
〒312-0034 茨城県ひたちなか市堀口832番地2
TEL : 029-353-3047(直通)

以上

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