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2007年2月16日
株式会社日立製作所
株式会社ルネサス テクノロジ

オンチップ不揮発性メモリに向けた、1.5V動作の
低電力・高速相変化メモリを試作

100μAの電流で書換え可能なセルにより、毎秒416キロバイトの書換えと
20ナノ秒の読出し動作を確認

  株式会社 日立製作所(本社:東京都千代田区/執行役社長:古川 一夫/以下、日立)と株式会社ルネサス テクノロジ(本社:東京都千代田区/会長&CEO:伊藤 達/以下、ルネサス テクノロジ)は共同で、次世代の高集積オンチップ不揮発性メモリに向け、電源電圧1.5Vで動作する512キロバイト(4Mビット相当)の相変化メモリモジュールを試作し、毎秒416キロバイトの高速書換え動作と、読出し時間20ナノ*1秒の高速読出し動作を実現しました。これは、これまでに両社が開発した書換え電流100μA(マイクロ*2・アンペア)の“低電力相変化メモリセル”を用い、今回、書込み、読出し動作に必要な周辺回路技術を新たに開発して実現したものです。
  本成果は、2007年2月11日から米国サンフランシスコで開催された国際固体素子回路会議(ISSCC:International Solid-State Circuits Conference)」にて発表しました。

  組込み機器向けマイコンは、近年、産業機器から車載装置や情報家電、携帯電話など様々な制御機器や情報機器のコア部品として利用されており、機器の高性能・多機能化によってマイコン上で扱う情報量が年々増大しています。このため、次世代の組込み機器向けマイコンでは、データやプログラムの格納に用いるオンチップ不揮発性メモリの高性能・高集積化が求められています。また、高い書換え耐性、さらに構造が単純で製造が容易であるという特長から、次世代のオンチップ不揮発メモリとして、相変化メモリが注目されています。
  相変化メモリは、電流により発生するジュール熱によって、膜の電気抵抗が異なるアモルファス状態*3(高抵抗)と結晶状態(低抵抗)に変化することを利用し、その電気抵抗の違いを“1”と“0”の情報として、記憶と読出しを行う不揮発性メモリです。これまで、日立とルネサス テクノロジは、五酸化タンタルを界面層に用いて、電源電圧1.5V、100μAの電流で書換え可能な低電力動作の相変化メモリセルを開発してきました。従来のオンチップ不揮発メモリに比べて書込み時の電圧を低くできるため、チップ内部に高電圧を発生させる電源回路が不要となり、モジュール面積を小さくでき、高集積化が可能という特長をもちます。しかし、メモリセルの読出し電流が小さいことから、小電流でも高速動作を可能とするメモリ回路技術の開発が重要となっていました。

  そこで今回、両社は共同で、既に開発済みであった相変化メモリセルを用い、低電力で高速な書換えと読出しが行える回路技術を新たに開発し、電源電圧1.5Vで動作する512キロバイト相変化メモリモジュールを試作しました。

  新たに開発した回路技術の特長は次の通りです。

(1) 小電流で高速の書換えを可能とする書換え回路技術

  新たに、以下の2つの方式を考案し、これらを組合せることで、小電流での高速書換え動作を達成しました。

“2段階電流切替え型データ書換え方式”
  • 書換え時に相変化膜に流す電流を、最初は100μA、次に100μAより小さい電流値と2段階で制御し、ジュール熱を効率的に発生させて高速な書換えを実現します。
“順次書換え方式”
  • 通常、メモリの書換えは、書換えが必要な複数のビットについて同時に行います。書換えに必要な電流は、「セルの書換え電流×同時書換えビット数」となるため、書換えビット数が多くなると、書換え時のピーク電流が大きくなります。今回、1ビットずつ順次書換えを行う方式を開発し、書込みを常に1ビットのみとしたことで、ピーク電流を抑制しました。

(2) 微小な読出し電流に対応した高速読出し回路技術

  • 先般、両社で開発した相変化メモリセルでは、小電流の書込み動作を特徴とする一方、読出し電流も微小となり、読出しに時間がかかるという課題がありました。今回、これを解決するために、2段のセンスアンプ(増幅回路)を用い、各センスアンプの動作電圧を最適化して少しずつ信号を増幅する読出し回路を開発しました。センスアンプが1段の場合に比べ、短時間で増幅することが可能であり、センスアンプの消費電流を280μAに抑えながら、読出し時間の高速化が可能です。

(3) ナノ・アンペア級の微小電流を測定可能な回路技術

  • 製造したメモリセルの品質を検査するためには、信号が増幅される前の読出し電流値を高精度に測定することが重要です。しかし、通常の動作時には、ナノ・アンペア級の極微小な読出し電流はメモリ回路に生じる漏れ電流にうもれてしまい、正確に測定することが困難でした。そこで今回、メモリ回路の電圧を最適化して漏れ電流を極力排除する回路技術を新たに開発し、メモリセルの極微小な読出し電流の高精度な測定を可能にしました。測定結果を製造工程へとフィードバックすることで、メモリセルの品質向上に貢献することが可能となります。

  100μA書換え可能なセルに、今回新たに開発した回路技術を用いて、130nmのCMOSプロセスで512キロバイトのメモリモジュールを試作しました。この結果、毎秒416キロバイトの書換え動作と、20ナノ秒の読出し動作が可能であることを確認し、低電力動作の相変化メモリセルの性能を維持しながら、高速動作を達成することができました。

  本技術は、次世代の高集積オンチップ不揮発性メモリの実現を促進し、今後の組込み機器向けマイコンの一層の進展を支えるものとして期待できます。

用語説明

*1
ナノ: 10億分の1。
*2
マイクロ: 100万分の1。
*3
アモルファス状態:固体を構成する原子、分子などが、結晶のような規則性のある構造を持たない、不定形の状態にあること。非晶質とも呼ばれる。

お問い合わせ先

株式会社 日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:花輪、木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
TEL : 042-327-7777 (ダイヤルイン)

株式会社ルネサス テクノロジ 経営企画本部 経営企画統括部 広報・宣伝部 [担当:佐藤]
〒100-6334 東京都千代田区丸の内二丁目4番1号(丸ビル)
TEL : 03-6250-5554 (ダイヤルイン)

以上

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