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2006年9月25日

複数のハイビジョン映像を同時に配信する新たな無線伝送方式に
おいて通信品質の向上をシミュレーションで確認

  日立製作所中央研究所(所長:福永 泰/以下、日立)は、このたび、複数のハイビジョン映像 などの大容量データを、高品質かつ高速で同時に無線伝送できる新たな伝送方式を検討し、その効果をシミュレーションによって確認しました。今回シミュレーションで評価した無線伝送方式は、家庭内のTVモニタなどの端末が要求するサービス品質(以下、QoS: Quality of Service)に応じて、送信信号を最適に制御することにより、安定した品質で高速の無線伝送を可能とする方式です。本方式は、HDDレコーダーやホームサーバから、家庭内の好きな場所に設置したTVモニタやPCで、ハイビジョン映像のストリーミングや大容量データの受信を可能とする、次世代無線ホームネットワーク向けの基本要素技術として期待されます。

  近年、家庭内の通信ネットワークとして、配線の制約を受けることなく自由に端末を設置して通信を利用できる無線LANへの期待が高まっています。無線LANは、アクセスポイント(基地局)と無線LANカードを搭載した端末からなり、その間で無線伝送を行っています。無線伝送の速度は、利用する電波の周波数帯域幅によって最大値が決まりますが、実際の伝送速度は室内の電波環境の影響を受け、周波数帯域幅によって決まる最大値に比べ、低い速度になってしまいます。また、電波環境はリアルタイムで変動するため、従来の無線伝送技術では、大容量のデータを安定した品質で伝送することが困難でした。さらに、複数の端末へ伝送する場合には、端末ごとに要求される伝送品質(QoS)が異なるために、きめ細かな制御が課題となっていました。

  このような背景から、日立では、1つのアクセスポイントから複数の端末へ、高精細なハイビジョン映像や大容量データを伝送可能な、高信頼かつ高速な無線伝送方式を検討し、その効果をシミュレーションによって確認しました。
  今回、シミュレーションで評価した無線伝送方式の特長は、以下の通りです。

(1)多入力・多出力(Multiple-Input Multiple-Output/以下、MIMO)技術を応用した高速無線伝送方式

  • MIMO技術は、複数の送受信アンテナを使い、伝送路を複数にすることによって、アンテナが1本の場合より伝送容量が増加するため、限られた周波数帯域内でデータ伝送の高速化が実現する技術*1です。今回は、アクセスポイント側で各伝送路の電波環境に応じて、送信信号の振幅や位相を制御して送信する方式を応用しています。

(2)電波環境に基づいてユーザが要求するQoSを維持する最適なリソース制御方式

  • 前述のMIMO技術をベースとし、複数の送受信アンテナを搭載した1台のアクセスポイントに対して、複数の端末による同時アクセスを可能とします。さらに、アクセスポイントとそれぞれの端末との間の電波環境と、それぞれの端末が要求する通信容量を考慮して、各端末に割当てられる通信容量を最適化し、端末ごとのQoSを実現します。

  今回、100MHzの帯域幅において、アクセスポイントに4本、端末1台あたり2本のアンテナを用い、6台の端末のうち、3台がハイビジョン映像のストリーミングを、3台がWeb閲覧やE-mailなどのアプリケーションを同時に利用するという状況を、一般家屋の電波環境を想定してシミュレーションで評価したところ、24時間続けて映像配信を行った場合、3台のハイビジョン映像が途切れる確率が、本方式を用いない場合は数時間に1回以上であるのに対して、1日に1〜2回程度に低減できることを確認しました。さらに残り3台に割当てられる通信容量は1.5倍程度向上することも確認しました。

  今回のシミュレーションによる評価結果によって、将来、家庭内の好きな場所に設置したディスプレイやPCにおいて、HDDレコーダーやホームサーバから、ハイビジョン映像のストリーミングや大容量データを受信できる見通しが得られました。本伝送方式を用いると、周波数帯域幅を拡大することなく伝送速度を高速化できるため、限られた電波資源を有効に利用できる無線伝送方式として期待できます。

  なお、本技術は、9月19日から石川県金沢市で開催された電子情報通信学会「2006年ソサイエティ大会」にて発表しました。

脚注

*1
今回、電波の反射による干渉を軽減して速度を高速化するOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式を組み合わせた技術を用いています。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 中央研究所 企画室[担当:花輪、木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
TEL : 042-327-7777(ダイヤルイン)

以上

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