日立製作所は、リハビリテーション用の２ベルト歩行訓練機の第３弾として、世界で初めて足への負荷を
軽減・制御するウエイトフリー方式（電動免荷機構）を採用した「ＰＷ−１０」を開発し、７月より受注を
開始します。

　高齢化社会の到来に伴い、身体機能の低下した高齢者や寝たきり高齢者・障害者のＱＯＬ（Quality of 
Life；生活の質）の維持、向上が望まれています。行政による「新ゴールドプラン」の推進や、２０００年
４月から施行される公的介護保険制度導入などにより、対策は着々と進められつつありますが、実際には、
介護者不足は大きな問題となっています。このため高齢者や障害者ができるだけ人に頼らずに自立した生活
ができるような機器が求められていました。

　日立では、高齢者・障害者の自立した生活を支援する、病院や福祉施設向けのリハビリテーション機器と
して、平成８年から高機能型歩行訓練機「ＰＷ−１」を発売し、平成１０年に「手動介助機構式」を採用し
た普及型歩行訓練機「ＰＷ−２」を発売してきました。主な設置場所は、市町村の保健センター、老人保健
施設、特別養護老人ホーム、老人福祉センター、老人デイサービスサンター、老人憩いの家、病院、整骨院
などです。

　このほど、第３弾として開発した「ＰＷ−１０」は、整形外科、例えば高齢者の大腿骨頚部骨折や変形性
関節症での術後の早期リハビリテーションなどを行う時に必要な、足への負担を軽減するウエイトフリー方
式（「力検知センサ」や「電動サーボ制御」で実現した「電動免荷機構」）が大きな特長です。免荷量を
１Kｇごとに最大１００Kｇまで設定できるため、早期リハビリテーションに必要な「部分荷重」「荷重コン
トロール」での歩行訓練が可能です。

　一般的なリハビリテーションでは、プールの中で水の浮力により足への負担を軽減したり、上からの吊り
下げ方式で体重を支え足への負担を軽減する方法がありますが、荷重コントロールが難しく、装置が大きく
なりがちでした。「ＰＷ−１０」では、サドル方式を採用したため支持部の痛みが少なく、楽に、かつ、木
目細かな荷重コントロールをしての歩行訓練ができます。装置の大きさはたたみ１畳相当で省スペースです。

　ＰＷシリーズの共通した特長としては、左右二本のベルト上を歩くことで左右の足を別々に訓練できる上、
蹴る力に合わせてベルトを制御するので個々人の歩行能力に合わせて訓練できます。例えば、片麻痺患者の
非麻痺側の訓練（片側ベルト固定）、片麻痺患者の左右差改善訓練（速度差モード）、歩行器や平行棒に代
わる訓練、などができます。
　また、ＰＷシリーズでは、オプションとして「映像システム」があります。これは、歩行ベルト速度に同
調した映像を見ながら、あたかも実際に野外を歩いているような臨場感（簡易バーチャルリアリティ）で、
楽しみながらの訓練ができます。

　この歩行訓練機は、ルームエアコンや冷蔵庫を製造する冷熱事業部が担当し、旧栃木工場時代の昭和５８
年から発売開始した組立ロボットの技術が生かされています。また、冷熱事業部では４月１日の全社事業構
造改革の一環として、「福祉FAビジネスユニット」（藤本担当部長）を設置し、施設用歩行訓練機で得た
ノウハウを生かし「福祉家電の創生」を目指した事業展開をスタートさせました。５０余年の家電品事業の
理念を元に、２１世紀高齢化社会へ新たな提案をして参ります。

　なお、本機は、５月２４日から２８日までパシフィコ横浜ホールBで行われる「第１３回世界理学療法連盟
学会　公開展示会」に出展します。

                                                               以　上