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News Release

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平成10年3月11日

超電導磁気分離方式アオコ連続除去装置を開発

−湖沼のアオコ等の藻類の高速かつ連続的な除去が可能−

 日立製作所は、このたび富栄養化した湖沼を浄化する「超電導磁気分離式アオコ除去装置」について、
アオコ等のプランクトンを磁性化する前処理部と、補足、分離し除去する後処理部の連続化を実現する
装置を開発しました。これにより、従来の20倍以上にあたる400立方メートル/日のアオコを処理する
ことが可能になります。

  湖沼は、飲み水や農業用水の水域であり、また、潤いのある水辺環境を与えてくれる貴重な水資源で
すが、その多くが、都市化に伴う生活廃水の流入などにより富栄養化が進んでいます。その結果、植物
プランクトンの過剰な増殖を引き起こして汚濁し、時にはアオコ(特定の植物プランクトンが過剰に増殖
して水面に青緑の膜を形成した状態)が発生し景観を損なうばかりでなく、異臭を発生したり、水道水の
異臭味の原因になるなどの問題を生じることもあります。このため、各地で、下水道の整備などにより汚
濁源の流入を防止して、清らかな湖沼を取り戻す努力が続けられていますが、それと同時に湖沼内に
夏場発生した大量のアオコを高速で除去する技術が望まれています。

  これまでアオコを除去する方法としては、凝集剤を用いてアオコを大きな凝集体(フロック)にしてから、
気泡等で水面に浮かせて掻き取る方法がありましたが、高速・大量の処理ができず、夏場のアオコの
大量発生時には処理が間に合いませんでした。
  当社では、大量に発生するアオコの処理を可能にすべく、強力な磁場を利用して水中のアオコを分離
除去する、高勾配磁気分離法の研究を進め、このたび前処理部と後処理部を連続的に処理できる超
電導磁気分離方式アオコ連続除去装置の開発に成功しました。

  高勾配磁気分離法は、磁場を発生する円筒状電磁石の中央内部に流路を設け、流路中に磁性材で
作られた金網などの磁気フィルタを挿入してこのフィルタ表面近傍に大きな磁気勾配を作り、流体中の
磁性物をフィルタ表面に捕捉、分離します。電磁石に超電導磁石を使用することにより、少ない電力で
強力な磁場を発生できるのでアオコを高速で分離することができます。アオコ等のプランクトンを磁性化
するためには、原水に水道水を作る時に用いられる凝集剤と少量の鉄粉を加えてプランクトンと鉄粉の
磁性凝集体(磁性フロック)を作る前処理を行い、この後、磁気フィルタに通し磁性フロックを捕捉分離し
ます。所定の時間分離運転した後、電磁石の磁場を無くしたのち、フィルタ上に蓄積した磁性フロックを
洗浄水で除去します。

  今回開発した超電導磁気分離式アオコ連続除去装置は、原水中のアオコを凝集剤、鉄粉の添加によ
り磁性フロックを生成する前処理部と、冷凍機直冷型超電導磁石の磁場空間に移動式磁気フィルタを
備え、磁性フロックの捕捉、分離と洗浄除去を行う連続磁気分離部、および遠心分離による脱水、鉄粉
の回収を行う後処理部から成り、一貫かつ連続的に処理できるシステムを構築したことが特徴で、アオ
コ除去率は90%以上であることを実証しました。また、脱水汚泥は、鉄粉を回収した後、コンポスト化や
一部を焼却等で処理し環境負荷を低減します。

  試作した装置は400立方メートル/日の処理能力を有し、その特徴は、以下のとおりです。

1. 円筒状磁石を上下に有するツイン型超電導磁石の間に設置した左右に移動するメイン磁気フィルタ
      と、下部磁石の漏れ磁場内で回転するサブ磁気フィルタにより超電導磁石に通電したままで、磁性
      フロックを連続除去可能な磁気分離構造となっています。
2. メイン磁気フィルタと大きい磁性フロックを予め分離・除去するサブ磁気フィルタの組み合わせにより、
      藻類の濃度が変化しても除去性能が良く、プランクトンを90%以上除去できます。
3. 冷凍機で直接磁石を冷却する冷凍機直冷型により、液体ヘリウム等の液化冷媒を必要とせずコンパ
      クトでかつメンテナンスが容易です。


  本方式では超電導磁石を使用しているので、処理容量の増加に伴う消費電力の増加は小さく、例えば、
磁気フィルタの直径を1.5mとして処理能力を毎分10m3に上げても、消費電力は約20kW程度で済み
ます。

                                                                                以  上


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