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News Release

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平成10年2月23日

撮影時間を大幅に短縮した高速型工業用X線CT装置を開発

−非破壊検査・生産技術開発・学術研究など幅広い利用が可能−

  日立製作所は、世界最高性能の工業用X線CT装置の実用化に成功しました。
  本装置は、電子線加速器で得られる透過力の強いX線と、小型で高感度のシリコ
ン半導体式放射線検出器(Si−SSD)を使用することにより、200mmを超え
る鋼材や、1mを超える厚さのアルミニウムやコンクリートでできた物体の断層撮
影について、従来は数分から10分かかっていたものを、10秒以下の高速で行う
ことを可能とします。

  これまで、自動車エンジンやポンプインペラなどの鋳造品について、内部の複雑
な形状の計測や欠陥の検出を非破壊的に行うためには、超音波検査や放射線検査
(X線ラジオグラフィー)などが用いられてきましたが、これらの方法には、計測
時間が長いことや形状精度が不十分であるなどの問題があり、必ずしも満足のいく
ものではありませんでした。
  一方、X線CT法(CTスキャナ)は、人体内部形状を正確に映像化する有力な
手段として、医療用として発達してきましたが、従来の装置では鋼材に応用した場
合には、4mm程度の厚さしかX線が透過しないため、そのまま工業用に使用するこ
とはできませんでした。
  当社では、これまで、医療用の100倍の透過力を得ることができる高エネルギ
ーX線とタングステン酸カドミウム(CWO)シンチレータの放射線検出器を組み
合わせた工業用X線CTを実用化し、宇宙ロケットや原子燃料の検査あるいは文化
財や化石・いん石の調査など学術研究分野で活用されています。しかし従来の装置
は一枚の断層撮影に数分から10分という長い時間を要することから、より高速で
撮影ができる工業用X線CT装置の実用化が望まれていました。
  そこで当社では、高速型工業用X線CT装置の開発を進めてきており、この度実
用化に成功したものです。

  断層撮影の時間を短縮するためには、放射線検出器の数を従来の数十個から、
500個ないし1,000個に増やし、それを1mm程度の狭い間隔で一列のアレイ
状に配列することが必要です。これを実現するためには、放射線検出器の小型化が
不可欠になります。しかし放射線検出器は、一般に小型化すると感度が低下すると
いう問題があります。そのため、本装置では従来使用してきたCWOシンチレータ
に代えて、より高感度のSi−SSDを採用しています。これは、原子力発電所の
放射線モニタの高感度化・高信頼化を目的に開発してきたものを適用したものです。
これによって、放射線検出器の配列ピッチを1.3mmとすることができ、従来使用
していたCWOシンチレータに比べ、感度が一桁向上し、しかも小型化することに
成功しました。本装置では、検出器を512個配列しており、1,024×1,024
画素のCT画像を10秒で撮影できるようになりました。
  さらに、多数個の検出器を狭い間隔で配列できたことにより、この装置はCT装
置だけではなく、ディジタルラジオグラフォ(DR)撮影にも利用できます。
Si−SSDは、ダイナミックレンジ(フィルムでのラチチュードのこと。検出可
能な最も強いX線と最も弱いX線の差のことで、フィルムでは1桁程度)が4桁以
上確保できることも大きな特徴です。このことにより、本装置で透視撮影(DR撮
影)した場合、従来のフィルム法以上に鮮明な画像を短時間で得ることができます。

  今回開発した工業用X線装置は、鋼材のような高密度厚物材の内部の形状を0.1
mm単位で正確に測定できるとともに密度分布が把握できるのが特徴です。このため、
次のような応用が可能です。
・ リチウム電池、NAS電池など、密封容器内での、化学変化の分布状況の把握
・ ポンプインペラ、自動車エンジンブロックなど鋳造品の内部形状計測や欠陥検出
・ モーター、トランスなどの巻線状態の把握
・ ガスタービン翼などセラミック製品の内部形状計測
・ 粉体の挙動解析
・ 化石、いん石、埋蔵文化財、古美術品の調査
・ 木材の内部状況観察
・ 橋梁等のコンクリート内部状況の観察

  なお、高密度厚物材を短時間で断層を撮影する技術は開発されたばかりであり、
工業用X線CT装置の利用分野については、さらに拡大する可能性を秘めていると
考えられます。そこで、工業用X線CTの応用分野に関して広く議論を深めること
を目的に、研究機関や企業関係者等による研究会の開催を計画しています。



用語説明
CT:Computed Tomography
DR:Digital Radiography
Si−SSD:Silicon Solid State Detector
CWO:CdWO4(タングステン酸カドミウム)

                                                 以  上  


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