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2002年6月27日
 
世界最速の超電導A/D変換器フロントエンド回路を開発
−40ギガヘルツの動作実証に成功−

    日立製作所基礎研究所(所長:長我部信行 以下、日立)は、このたび、超電導A/D(アナログ/デジタル)変換器用のフロントエンド回路を試作し、40ギガヘルツ動作の実証に成功しました。超電導フロントエンド回路は、変調器、分配器、超電導インタフェースから構成され、合計2,518個のジョセフソン接合(超電導回路の要素素子)が集積されています。今後、デジタル信号処理回路を組み合わせることによって、次世代無線通信基地局に向けた超電導A/D変換器の実現に道が拓かれます。本研究は、文部科学省の科学技術振興調整費による、「単一磁束量子(注1)を担体とする極限情報処理機能の研究」の一環として行われました。

    超電導現象を利用した単一磁束量子回路は、信号を伝達する単一磁束量子の電圧パルスが数ピコ秒(1兆分の1秒)であることから、数十〜百ギガヘルツという高周波帯域で動作するデジタル回路への応用が期待されています。日立では、平成9年度より文部科学省(旧科学技術庁)の科学技術振興調整費による総合研究「単一磁束量子を担体とする極限情報処理機能の研究」に参画し、これまで超電導A/D変換器の開発を進めてきました。
    超電導A/D変換器を実現するためには、(1)変調器、クロック信号発生器、(2)分配器、(3)超電導インタフェース等の、複数の回路を集積したフロントエンド回路を開発する必要があります。このためには、ジョセフソン接合を数千個集積する必要があります。しかし、ジョセフソン接合特性のばらつきにより、1,000個を越える多数の接合を集積した回路での、数十ギガヘルツでの高速動作は実績がなく、これが超電導A/D変換器実現の障壁となっていました。

    そこで、今回、下記の特徴を持つ超電導A/D変換器のフロントエンド回路を開発しました。
(1)変調器+クロック信号発生器:アナログ信号を高速クロック信号によって量子化し、単一磁束量子による電圧パルスに変調する回路。
(2)分配器(デマルチプレクサ)回路:変調器からの出力を、後段の半導体デジタル信号処理回路に伝送するために、多チャネル化することにより、出力信号の速度を低減する回路。入力データ信号を分岐して、出力と同時にクロック信号も次段の要素回路に伝送することが可能な回路構成としました。また、ジョセフソン接合の特性がばらついても、クロック信号とデータ信号のタイミングを数ピコ秒で一致させる回路設計を行いました。これらにより、多チャネル化による高集積化が初めて可能になりました。
(3)半導体回路との接続を可能にする超電導インターフェース回路:16段の超電導量子干渉素子により、0.1ミリボルトの信号を2ミリボルトまで増幅する回路。

    金属ニオブ材料を用いて超電導回路(注2)を試作した結果、(1)直流アナログ信号の、40ギガヘルツの高速サンプリングによる量子化、(2)その出力信号の、分配器回路による8チャネルへの分配、(3)半導体回路で処理できるレベルへの信号増幅が正常に行われていることを確認しました。これらの結果は、40ギガヘルツの超電導A/D変換器フロントエンド回路全体の正常動作が実証されたことを示します。

    今後は、後段の半導体デジタル信号処理回路を設計し、超電導A/D変換器の実用化を図ります。また、冷却コストの面でも有利な酸化物高温超電導材料を用いて、100ギガヘルツを超える超高速動作を目指します。さらに、将来的には、第4世代以降の無線通信応用に適用可能な、超電導A/D変換器の実用化を目指します。なお、本研究で用いた超電導チップは、日本電気株式会社(NEC)のニオブ標準プロセスによって作製されました。

【チップ仕様】
回路寸法―2.0mm ×2.5 mm、ジョセフソン接合数―2,518個、最小接合寸法―2μm ×2μm。

【用語の説明】
(1)単一磁束量子:超電導体に生じる、量子化された磁束の最小単位。
(2)ニオブ系超電導回路:ニオブの超電導電極、およびアルミニウム酸化物のトンネル障壁層で構成される超電導接合を基本要素とした、超電導回路。金属系の低温超電導回路として用いられる。臨界電流など、素子特性を揃えることができ、SQUIDや論理集積回路に用いられる。

以 上

   



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