日立概要ページへ トップページへ
日立の概要 ニュースリリース トップページへ

このニュースリリース記載の情報(製品価格、製品仕様、サービスの内容、発売日、お問い合わせ先、URL等)は、発表日現在の情報です。予告なしに変更され、検索日と情報が異なる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。なお、最新のお問い合わせ先は、お問い合わせ一覧をご覧下さい。

 
2002年3月22日
株式会社 日立製作所
独立行政法人 物質・材料研究機構
世界で初めてホウ素系新超伝導物質のコイル化に成功
写真1 二硼(ほう)化マグネシウム系超伝導線の外観 写真2 二硼化マグネシウム系超伝導コイルの外観

   株式会社 日立製作所 日立研究所(所長:児玉英世)と独立行政法人 物質・材料研究機構(理事長:岸 輝雄)は、昨年1月に青山学院大学で発見された二硼(ほう)化マグネシウム(MgB)系超伝導物質を用いて長尺の超伝導線を開発し、世界で初めて小型コイルによる磁場発生に成功しました。開発したコイルは、製造工程で一切の熱処理を用いておらず、従来の超伝導コイルと比較しても大幅なコスト低減が可能です。このコイルの特性を評価し、実用レベルの超伝導臨界電流が得られることを確認しました。

1.二硼(ほう)化マグネシウム(MgB)系超伝導物質の特徴
   2001年1月に青山学院大学の秋光 純教授らによって発見された新しい超伝導物質である二硼(ほう)化マグネシウムは、超伝導臨界温度(Tc) *1 が金属系材料として世界最高の摂氏マイナス234度であり、ニオブ・チタン(NbTi:マイナス263.5度)や、ニオブ・三・スズ(NbSn:マイナス255度)などの従来の金属系超伝導材料と比較してもTcが約20度以上優れています。また、マグネシウム(Mg)とボロン(B)からなる比較的簡単な化合物であり、合成が容易で資源的にも豊富であるという特徴があるため、世界中の研究者が実用化に向けた活発な研究開発を行っています。

2.研究の背景と今回の研究成果
   このMgBの結晶は、ダイヤモンドのように硬く、通常の方法ではセラミックスと同様に塑性加工は困難でした。しかし、この粉末を高強度の金属で被覆し、圧延などで線状に加工することにより、熱処理無しで一平方センチメートル当たり45万アンペアの高い臨界電流が得られる線材作製法を、物質・材料研究機構が開発しました(2001年6月既報)。そこでは、安価な金属材料を利用でき、かつ、熱処理不要なことから、従来の超伝導線と比較して製造工程の短縮や低コスト化が期待されました。

   その成果を受けて、日立研究所では、独自に特殊な圧延加工法により、MgB圧粉体を高密度で連続的に流動させる技術を開発し、10m級の長尺線材の製作に初めて成功しました(写真1)。更に、この線材を用いてコイルを製作し、初めて磁場発生を確認しました(写真2)。今回の技術によれば、安価で高強度な長尺線材製作が可能になるほか、超伝導線やコイルの製造工程が大幅に短縮でき、絶縁など周辺技術の低コスト化も容易と考えられます。MgB線材のコストは、同じ電流容量で比較した場合、NbTi線の約1/2程度と見積もられます。

3.研究成果の内容
   今回の成果のポイントは、MgB線材の長尺化技術を開発できたこと、及び、その長尺線材を用い、世界で初めてMgBの超伝導コイルを製作し、磁場発生を確認できたことです。

   今回開発した長尺線材化技術は以下の通りです。まず、太い径の金属パイプに微細に粉砕したMgB2の微粉末を充填し、一体化します。この複合体を、溝をきったロールを通しながら、太い径から細い径へと、徐々に、細く長く伸ばして線にする方法です。キロメートル級の超伝導線の作製に一般に用いられている方法と基本的に同じプロセスですが、MgB粒子が長さ方向に均一かつ高密度で形成されるように、線材に加わる圧力などの製造条件を最適化しました。更に、製造工程の途中に焼結プロセスなど、中間の熱処理は一切行わないようにしました。製作した線材は、厚さ0.3mm,幅2.7mmのテープ状で、長さは12mです。摂氏零下269度の液体ヘリウム中で線材の特性評価を行った結果、実用レベルである220Aの臨界電流を確認しました。そして、この線材の曲げ特性を評価した結果、曲げ直径で約30mmまで劣化がないことを確認しました。

   これらの結果を基に、10m長の超伝導線を用い小型コイルを製作・評価しました。これまで、MgB2系線材で磁場を発生可能なコイルの製作に成功した例はありません。ステンレス製の巻枠に、内径38mm,外径42.5mm,高さ70mmのサイズで、80ターンを巻き付けた小型コイルを作製しました。これを液体ヘリウム中に浸漬冷却し電流を通電したところ、数度のトレーニング現象 *2 の後、105Aと実用レベルの臨界電流を得ることに初めて成功しました。このとき、コイルに発生した磁場は1,300ガウスであり、MgBコイルとして、世界で初めて0.13テスラ *3 の磁場を発生することが出来ました。

4.今後の展望
   今後の実用化までには、超伝導接続技術やキロメートルレベルの長尺化技術などの開発が必要ですが、MgB2の高い超伝導転移温度を利用することにより、熱的に安定で、高い信頼性を持つ永久電流スイッチ素子などへの応用が期待できます。また、将来、医療用MRI *4 画像診断装置や研究用核磁気共鳴NMR分析装置などに適用できれば、装置の低コスト化や長期運転時の信頼性向上に大きく貢献すると期待されます。



[補 足]
   本研究成果は、文部科学省科学技術振興調整費の研究課題「ホウ素系新超伝導物質の材料化基盤研究」(研究代表者:青山学院大学 秋光 純教授)のうち、「ホウ素系新超伝導物質の線材化基盤技術」(分担責任者:物質・材料研究機構 熊倉浩明サブグループリーダー)の一環として、「長尺線材作製技術の開発に関する研究」を日立研究所が担当しており、その研究過程で得られたものです。

[用語説明]
*1 臨界温度、臨界電流密度 超伝導状態が維持できなくなる最高温度、或いは最高電流密度のことで、材料によって異なる。
*2 トレーニング現象 超伝導コイルの特性が電流を通電するごとに向上していく現象
*3 テスラ 磁場の単位のことで、1テスラは10000ガウス。地磁気は約0.3ガウス
*4 MRI Magnetic Resonance Imaging装置。核磁気共鳴現象を利用して、人体内部の断層撮影をする装置。X線などの電離放射線を利用しないため、人体にやさしい撮像法として需要が拡大している。

 

以 上




top of this page


(C) Hitachi, Ltd. 1994, 2002. All rights reserved.