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2001年9月5日
 
走査プローブ顕微法を応用したナノパターン加工技術を開発
-- 線幅25nmの複雑パターンを簡便に作成 --
  日立製作所基礎研究所(所長:長我部信行)は、線幅25nmの自在パターンを簡便に作製するナノパターン加工技術を開発しました。この技術は、原子の凹凸を観察する走査プローブ顕微鏡(SPM)1)を応用したもので、小型で操作が簡単であることから、ナノテクノロジー研究を加速する新技術として期待されます。本技術は、日立製作所の研究開発紹介サイト「i-engineering」(http://www.i-eng.hitachi.co.jp)で、11月1日より国内研究機関に向けて技術提供を開始する予定です。

  ナノテクノロジーは、物質をナノメートル(100万分の1ミリメートル)オーダーで制御することで、物質の機能や特性を大幅に向上させ、科学技術の進歩を促進する21世紀の基盤技術として注目されています。その研究段階においては、ナノメートルオーダーの構造・寸法で、自由に“もの”を形作る技術の必要性がますます高まっています。現在、半導体素子の製造に用いられている電子線描画装置がナノメートルレベルのパターン形成技術として実用化されていますが、近年、ナノテクノロジー研究の裾野の広がりとともに、研究者自身が実験室で簡便にナノパターンを作製したいという要求が高まってきました。

  このような観点から、もともと物質の表面原子を観察する手段であった走査プローブ顕微鏡を用いた、微細パターン加工の研究が国内外で活発に行われています。これは、先端を鋭く尖らせたプローブ(探針)とレジストを塗ったシリコン基板間に電圧を印加し、プローブから放射される電子線によって、局所的にレジスト膜に化学反応を起こしてパターンを形成する技術です。しかし、この手法では、電子線照射量の制御が難しいドットパターンを含むような複雑パターンの加工が難しいことが実用化の大きな障壁となっていました。

  そこで、今回、日立製作所では、任意の複雑パターン加工を可能とする二つの電子線照射技術を開発し、これを適用したナノパターン形成技術を実現しました。
(1)定電流制御技術:均一な線幅のラインパターンを再現性良く加工するために、レジスト膜への電子線照射量が一定となるように制御する定電流制御技術を開発しました。ネガ型レジストを用いた実験では、最小15ナノメートルのパターン形成を実現しました。
(2)定電圧制御技術:定電流制御をドットパターンの加工に適用すると、電流照射量を急速に切替えることが困難なため形状が崩れてしまいます。そこで、定電流制御によるラインパターン加工で印加した電圧値を用いて、ドットパターンを描画する定電圧制御技術を開発しました。これは、描画距離が短ければ、定電圧制御でも探針から基板への照射電流はほぼ一定に保たれることを利用した手法です。
  これらの二つの技術をパターンに応じて使い分けることによって、25ナノメートルオーダーの複雑かつ微細なパターンでも作製できるようになりました。今回開発したナノパターン形成装置は、小型で、かつ操作が簡単であることから、ナノテクノロジー研究を加速する基本技術として期待されます。

本技術は、8月27日〜30日の4日間、日立製作所基礎研究所で開催される第7回「量子力学の基礎と新技術」国際会議(ISQM: International Symposium on Foundations of Quantum Mechanics in the Light of New Technology) で発表されました。

【用語】
(1) 走査プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope):非常に鋭く尖らせた探針と試料表面間の相互作用を用いて試料表面を観察する顕微鏡。STM(走査トンネル顕微鏡)、AFM(原子間力顕微鏡)、MFM(磁気力顕微鏡)、NSOM(近接場光顕微鏡)等の総称。

以 上




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