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平成12年9月7日
両面100ギガバイト世代に向けた
光ディスク用ヘッドの要素技術を開発
−ディスクの厚さむらの自動補正にめど−
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 日立製作所中央研究所(所長:武田英次)は、このたび、ディスクの厚さむらによる光スポットの
ゆがみ(収差)を自動的に補正する“自己補正型光ヘッド制御方式”の要素技術開発に成功しました。
光ディスクの高密度化とともに、わずかなディスク厚さの変動が記録・再生不良につながる収差を発
生させるため、ディスク厚さの要求精度は急速に厳しくなっています。今回開発した、光ヘッド要素
技術は、ディスク厚さにむらがあっても高密度化に対応できる技術です。将来の両面100ギガバイ
ト世代の大容量光ディスクを、安価でかつ裕度の大きなプロセスで製造するためのキー技術として期
待できるものです。

 現在、光ディスクは、直径12cmのディスク片面で記録容量4.7ギガバイトのものが、パーソ
ナルコンピュータや情報家電向けの記録メディアとして実用化され、さらなる大容量・高密度化に向
けて研究開発が進められています。光ディスクの記録密度を向上する主要技術として、(1)記録再生
用光源の短波長化(注1)、(2)光ヘッドの対物レンズの高分解能化(注2)、(3)ディスク記録膜
の多層化(注3)の3つがあげられます。これらの3つの技術を同時に適用できれば、両面100ギ
ガバイトもの大容量が実現することになります。しかし、これらの手法のうち、対物レンズの高分解
能化と記録膜の多層化を同時に進めると、「球面収差」(注4)と呼ばれる光スポットのゆがみが問
題となり、これが高密度化の障壁となっていました。

 対物レンズは、ディスク基板の厚みを見込んで設計されています。しかし、分解能が高くなるにつ
れて、記録膜を覆っている保護膜厚の誤差が無視できなくなってきます。この誤差によって光スポッ
トの焦点精度が変動し、球面収差が急激に増大するという問題が生じるのです。このため、ディスク
の保護膜厚に対する要求精度が高くなり、20ギガバイト以降の光ディスクでは3μm以下の厚さ精
度が必要と言われています。
 一方、記録膜を多層化する場合では、複数の記録層に対して独立に情報の書き込みと読み出しを行
うため、記録層の間隔を30μm以上離す必要があります。しかし、記録層毎に対物レンズからの距
離が違うと、最適な位置からずれた記録層では球面収差が生じることになります。
 これらの問題を同時に解決し、大容量・高密度の光ディスクを実現するためには、光スポットの球
面収差量をリアルタイムで測定し、収差補正する機能を持った新たな光ヘッド制御技術の開発が必須
となります。しかし、球面収差のリアルタイム測定技術は、これまで実現されていませんでした。

 そこで、当社では、記録・再生中に光ヘッド自身で光スポットの球面収差をリアルタイムに測定す
る技術を開発しました。これは、球面収差が光スポットの軸付近の光線と、周辺部分の光線で、焦点
位置が異なる現象であることに着目し、この2つの光を分離して焦点誤差を個別に検出し、その差か
ら球面収差量を得る方式です。この方式に基づいて原理実験を行った結果、2つの光の焦点誤差を個
別に検出し、この差から球面収差量に比例した制御信号がリアルタイムで正確に得られることを確認
できました。この制御信号を用れば、従来用いられている収差補償素子(可動レンズや液晶素子など)
を駆動させることにより、球面収差を自動的に補正する光ヘッドの実現が容易に可能となります。

 本技術により、ディスク厚の誤差によって生じる球面収差を防ぐことが可能となり、ディスク製造
時の精度要求が大幅に緩和された製造プロセスの実現性に道が開いたと言えます。
 また、本技術を適用すると、多層記録膜の場合においても同様に球面収差も防ぐことができるため、
高分解能の対物レンズと組み合わせて使用することが可能となります。さらに、光源の短波長化と合
わせることで、光ディスクにおける3つの高密度・大容量化技術を同時に適用することが可能になり
ます。これによって、現行の光ディスクと同じ12cmのサイズで、将来の両面100ギガバイトの
光ディスクを実現できるものと期待されます。

 なお、本結果は、9月6日から北海道千歳市で開催される光メモリに関する国際会議
「International Symposium on Optical Memory(ISOM)2000」にて発表する予定です。

【用語説明】
1) 記録再生用光源の短波長化:現在、DVDでは650ナノメートルクラスの赤色レーザが用い
     られているが、次世代の記録再生用光源としては、400ナノメートルクラスの青紫色レーザ
     が期待されている。
 
2) 対物レンズの高分解能化:顕微鏡などの対物レンズの分解能性能は開口数(NA:Numerical 
     Aperture、焦点に集光される光線の最大入射角度のsin値)で表され、NAが大きいほど分
     解能が高い。光ディスクの記録密度は、NAの2乗に比例する。

3) 記録膜の多層化:ディスクの記録層を複数設け、各層に独立に対して独立に情報の書き込み、
     読み出しを行い、大容量化を図るもの。2層のDVD−ROMも、実際に市販されている。

4) 球面収差:レンズで集光される光線のうち、光軸から遠い周辺部の光線が集光される位置と、
     光軸近辺の光線が集光される位置が光軸方向に連続的にずれていくような焦点のゆがみ。





                                                                              以上




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