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社会貢献活動

Hitachi

講座概要
日時2007年3月26日(月) 18:30 〜 20:15
場所日立製作所 日本生命丸の内ビル 大会議室
講師山梨日立建機株式会社代表取締役 雨宮清氏

「つくろう。」CMシリーズでも取り上げられた日立の地雷除去活動。「本業を通して社会に貢献する」活動が、大きな反響を呼んでいます。
今回の社会貢献イブニング講座では、地雷原に済む人々の暮らしを取り戻すべく、まさに「命を賭けて」地雷除去機の開発に取り組んでいる山梨日立建機の雨宮氏をお迎えし、開発までの長い道のりについてお話しいただきました。

山梨日立建機株式会社代表取締役 雨宮清氏

「地雷」それは悪魔の兵器

画像:山梨日立建機 雨宮清氏
山梨日立建機 雨宮清氏

地雷は現在世界73カ国に1億1千万個も埋まっていると言われています。中でも致命的な殺傷力を持たない対人地雷は、人々の手足を奪い、「死なない程度」に傷つけることで、生きる気力を失わせると同時に、多くの障がい者を生み出すことで国力を疲弊させる、という目的を持った、まさに「悪魔の兵器」です。
内戦の傷跡が今も色濃く残るカンボジアでは、こういった対人地雷の他、ビルを爆破させるほどの強烈な殺傷能力を持つ対戦車地雷、クラスター爆弾などが今もなお膨大な数放置されたままになっています。
そんな中、経済的な理由から地雷原の中で暮らすしかない人々、おもちゃや食べ物と間違えて地雷を触ってしまい死傷する子ども、農地として利用することもままならない、荒れ果てた土地…。長く続いた内戦時代の負の遺産は、人々の生活を今も苦しめ続けています。

田舎の町工場にも「国際貢献の道」がある

1994年、私は内戦終了後のカンボジアに商用で訪れました。山梨日立建機は、中古の建設機械の販売が主な業務であるため、戦後復興をめざすカンボジアにビジネスチャンスがあると考えたためです。
ところが、カンボジアに到着した私が目にしたのは、町中に溢れる、地雷によって手足を失った人々の姿でした。
そこで出会った、負傷した女の子を連れた年老いた女性に「この国を助けてください」と言われたときに、若いころ亡くした母親から「人のためになるような人間になれ」と言われた記憶がよみがえってきて、何とかこの人たちを助けてあげられないかと思ったことが、その後私が地雷と関わってゆくきっかけとなったのです。

当時の私には、地雷についての知識はまったくありませんでした。しかしカンボジアの人々が置かれている悲惨な状況を目の当たりにして、自分にも何かできることがあるのではないかと、帰国後すぐに内外の地雷専門家や政府、関係機関などあらゆる場所に赴き、地雷についての勉強を始めました。
そこで地雷の除去には危険と隣り合わせの地道な手作業が行われており、死傷者が後を絶たないということ、埋設されている地雷すべてを取り除くのには千年以上かかると言われていることを知りました。さらに未だに対人地雷を作り続けている国があることから、処理で減るどころか新たに埋設されてその数が増え続けているということも判ってきました。
早速私は社内に対人地雷除去機の開発プロジェクトを設置しました。従業員がおよそ60名の山梨日立建機にとっては大きな経営リスクでしたが、「田舎の小さな町工場にも国際貢献の道がある。世界の地雷と戦わせてほしい」と訴える私に、社員とその家族は応えてくれたのです。

長く苦しい戦いの末に

画像:講演会場の様子
講演会場の様子

1980年に日立建機の特販店・指定工場となって以来、扱ってきた世界トップレベルの日立建機製油圧ショベルの技術を応用するとはいえ、地雷除去機開発は悪戦苦闘の連続でした。1,000℃にもおよぶ爆発温度や衝撃に対する耐久性、石や岩盤に対する耐磨耗性、切削性。度重なる試作を繰り返し、油圧ショベルの先端に高速回転カッターを付けた一号機「ロータリーカッター式対人地雷除去機」ができるまでに約5年の月日がかかりました。
期待どおりの性能が得られず開発を断念せざるを得ない状況にも追い込まれましたが、苦しくとも続けるように日立建機からも励まされて、その後も粘り強く改良を重ねていくことができました。
こうして現地での耐爆試験で安全性を確認しながら改良を重ねた結果、1998年の供給開始以来、現在までに累計56台の日立建機製地雷除去機が、日本政府から国連やNGOを通じてカンボジア、タイ、ベトナム、アフガニスタン、ニカラグア、アンゴラの6カ国に納入され、対人地雷・不発弾の撤去作業や潅木の除去作業に稼動しています。また、これらの対人地雷除去機に加え、大型地雷を除去する地雷除去機、広範囲な土地から地雷を除去する地雷除去機など、開発は現在も続いています。

目ざすのは「人々の自立」

私たちが地雷除去機の開発において特に重視しているのは、除去後の土地の有効活用であり、それはつまり、現地の人々の自立支援を意味しています。現在では複数のメーカーが地雷除去機の開発に着手するようになりましたが、このように地雷除去後の人々の生活にまで目を向けて開発を行っているのは、日立の地雷除去機だけです。
地雷除去機の納入時には運転指導教育やメンテナンス指導を行い、現地の人々に機械管理の技術移転を行います。こうすることで雇用創出にもつながっています。また、機械に汎用性を持たせ、アタッチメントの付け替えによって農地や宅地の造成、肥料や作物の種まきもできるようにしました。最近開発した地雷除去機では、地雷除去と耕地作業が同時にできるようになっており、現地の住民にとても喜ばれています。
このようにもともと複雑な地形や狭い場所でも対応可能な建設機械である油圧ショベルのメリットを最大限活用することで、地雷除去後の土地を住民たちが活用できるようになればと考えております。
この技術はインフラ整備にも役立っており、地雷除去後の土地には学校や病院が建ち、農地や農業研修所ができるなど、各地で成果が目に見える形になってきました。地雷除去後の土地が農園として生まれ変わり、出荷収益が生まれるようになったという嬉しい知らせが、感謝状と共に送られてきたことも記憶に新しいできごとです。現在ではCM放送をきっかけに、全国の小中学校をはじめとしてお話をさせていただく機会が増えてきましたが、講演を通して、地雷のことを知ってもらい、地雷廃絶にむけて人々の理解が得られることを期待しております。
技術者はモノづくりの挑戦者であり、技術の根源はモノづくり、人づくりにある、と考えます。
危険と隣り合わせの開発を続けていく中で、いつ命が果てるかはわかりません。
それでも、地雷に苦しんでいる人がいる限り、現場の声に耳を傾けながら、これからもできることを精一杯していきたいと考えております。
「世界中の子どもたちが笑顔でいられる世界」の実現を目ざして活動を続けていくことが、私の「Inspire the Next」です。

日立建機が「特定非営利活動法人豊かな大地」を設立

住民の自立支援を目ざして

その後、日立建機から、地雷埋設地域の住民の生活基盤の整備・再建を支援する「特定非営利活動法人豊かな大地(GEJ)」を設立した、との報告がありました。今後、GEJは、世界各国で地雷除去後土地のインフラ整備や農地転換、住民に対する農業訓練への支援を行い、人々が自立し、子どもが笑顔でいられる平和で豊かな国際社会の実現に寄与することを目ざしてゆくとのことです。その手始めとして、カンボジア政府の地雷除去機関CMAC(Cambodian Mine Action Centre)や、行政、農業技術指導を行う現地のNGOと連携してこの活動を既に推進しています。

事務局メモ

講演内でも実証実験の模様など迫力ある映像が紹介され、地雷の恐ろしさを改めて考えさせられましたが、中には蝶の形に似せた地雷も。子どもが手にとらずにいられないように仕立て上げる製作者の「恐ろしさ」を感じると同時に、真っ向から対峙し、本業を通して社会に貢献しようと挑戦を続ける雨宮社長の熱意と、現地住民や子どもたちの嬉しそうな笑顔に、会場は感動に包まれました。
雨宮氏の率直な語り口と飾らない人柄に魅了されて、講演終了後には多くの参加者が集まっていたのですが、一人一人と丁寧にお話をされている姿も大変印象的でした。参加者からは「困難に立ち向かった雨宮社長の姿勢に大変感銘を受けた」「『モノづくりは常に挑戦者』と、技術者魂の本質に正面から向き合って範を示す態度に感動した」という感想がありました。