
日本は、昨年の政権交代以降、新たな経済発展への道筋が明確に示され、経済成長への期待感が高まってきています。米国経済も緩やかではありますが、回復に向かいつつある一方で、欧州債務危機の長期化や中国経済の減速、新興国における輸出の減少などから経済成長の減速傾向が続くなど、2012年度の世界経済の動向は強弱が交じり合った複雑な状況となりました。そうしたなか、日立は、株主の皆様やお客様の力強いご支援を頂戴しながら、2010年度から展開してきた「2012中期経営計画」を完了しました。複雑な経済情勢のみならず、東日本大震災や多くの自然災害などの試練に立ち向かってきたこの3年間、これまで進めてきたさまざまな事業展開と改革の結果、日立は、安定的に当期純利益を計上することができる企業集団になりました。改めて振り返り、「2012中期経営計画」の中心課題は経営危機からのリカバリーであり、その大略は実現できたと考えています。ここに至るまで、株主の皆様やお客様をはじめ、すべての関係する方々に深く感謝申し上げます。
こうした成果を踏まえ、2013年度からの日立は、リカバリーから新たな成長へとその経営の軸足を移していきます。本年5月に策定、公表した「2015中期経営計画」では、これまで進めてきた「社会イノベーション事業」をさらに進化させ、グローバルに展開していくことを宣言しました。経営計画のもっとも基本となる点は、お客様の視点で事業運営していくことです。持続的な成長に向け、お客様の経営課題をともに見い出し、革新的(イノベイティブ)な解決策(ソリューション)を創り上げ実行していく、こうした取り組みを世界各地で推進していきます。その推進にあたっては、グローバルな営業力・エンジニアリング機能の拡充が不可欠であり、競争力の源泉となる多様な人財の育成と採用が鍵となります。そのための施策として、日立グループ共通のグローバルな人財評価基準の策定や、人財育成プログラムの開発を進めてきました。こうした施策を世界中の日立グループに適用していきます。
社会イノベーション事業による成長にとって基軸となるもう一つの柱は、サービス事業の拡大です。お客様とともに革新的な解決策を創り上げる過程のなかでは、機器やシステムの保守、運用にとどまらず、経営戦略の立案に関わるさまざまな課題が見い出されてきます。そこで、クラウドコンピューティングなど、最先端のIT(情報技術)や日立が幅広く培ってきた制御技術を徹底的に活用していきます。ネットワーク上につながり制御されている多くの装置やシステムから集められる膨大なデータを蓄積、分析するビッグデータ利活用はその典型です。日立はこうした最先端のITや制御技術を応用し、お客様の課題解決に貢献する多面的なサービス事業を拡大していきます。
こうした事業展開により、日立は2015年度に売上高10兆円、EBIT(受取利息及び支払利息調整後税引前利益)率、営業利益率はともに7%超、当社株主に帰属する当期純利益3,500億円超を実現します。これが「2015中期経営計画」のゴールであり、日立がグローバル市場での成長を実現するために、最低限達成すべき目標です。私たちは、利益水準の改善や財務体質の強化を図り、安定的な株主還元を念頭におきつつ、積極的に投資を行うことで、株主の皆様の期待に応える成長を実現していきます。
株主を含む市場の視点からガバナンスの責を負う日立の取締役会の構成は、社外取締役が過半数を占めるようになりました。昨年は外国人社外取締役2名が就任し、本年6月には新たにシンシア・キャロル氏を迎えました。取締役会メンバー14名のうち、8名が社外取締役となり、外国人取締役は4名となりました。日本や日立の枠にとらわれない、より深いグローバルな視点で、日立グループの経営の方向や執行側が取り組んでいる経営課題について、率直な意見を交わしながら、日立グループの企業価値向上に向けた方向付けをしています。
本年5月に、日立グループのあるべき姿を「日立グループ・ビジョン」として策定しました。
「日立は、社会が直面する課題にイノベーションで応えます。優れたチームワーク
とグローバル市場での豊富な経験によって、活気あふれる世界をめざします。」
日立は、グローバルな人財・知見を最大限に生かした製品・システムの競争力向上と、クラウドコンピューティングやビッグデータ利活用に代表される最先端のITや優れた制御技術を活用したサービス事業の拡大を通じて、社会やお客様の課題解決に貢献していきます。株主の皆様には、引き続きご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
2013年7月
執行役社長
(アニュアルレポート2013より抜粋)