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第1回 阪神・淡路大震災から学んだ教訓

「阪神・淡路大震災」から11年。西宮市は未曾有の大災害にどう対応し、何を学んだのか、情報政策部長 吉田稔氏を中心にお話をお伺いしました。

[写真] 吉田 稔 氏
情報政策部部長
吉田 稔 氏

[写真] 野中 新兒 氏
総務総括室
情報公開室
課長補佐
野中 新兒 氏

[写真] 岩崎 敏雄 氏
情報政策部
情報システムグループ係長
岩崎 敏雄 氏

1. 阪神・淡路大震災の衝撃

日立:
本日は、電子自治体が災害対策にどのように貢献できるかについてお伺いしたいと思います。まずは震災の時の様子から教えていただけますでしょうか。

[写真] 吉田 稔 氏

吉田氏:
西宮市内はライフラインがほとんど全滅しまして、全半壊した家屋は6万2,000世帯、亡くなられた方は1,146人にのぼりました。8階建の庁舎は、6階から上が壊滅的で、とても入れるような状況ではありませんでした。電算室は5階にあったのですが、入口が潰れてしまっていて、やむなく天窓を破ってようやく部屋に入れました。部屋の中はもう見るも無残な状態で、ホストコンピュータは倒れ、磁気テープなどの媒体が派手に散在していました。まさに大惨状といったところです。

あの状況を最初に見た時は、1ヵ月は復旧できないだろうなと思いました。それを助役に報告したところ、「何が何でも復旧してほしい」と言われました。10年前のあのころでも、ほとんどの行政業務はコンピュータを導入していましたから、コンピュータがダウンした状態が続けば日常業務に大変な支障をきたすことが目に見えていたんですよね。そういう意味で助役としても「なんとかしてくれ」という心境だったと思います。

そんな状況からすぐさま復旧作業に取りかかったわけですが、震災で自らも大変なところを駆けつけてくれた職員の力と、ベンダの方々の協力支援がありまして、思った以上にスムーズに復旧作業が進みました。夕方にはベンダの要員の方々が入れ替わり立ち代わりで対応いただいて、翌日にはかろうじて動かせるところまでこぎつけました。

[写真] 岩崎 敏雄 氏

岩崎氏:
まさか1日でホストコンピュータが復旧するとは思っていませんでしたから、実際に動いたときはその場にいた全員が「本当に動いたー」というちょっと感動的な状況でした。こうしてわずか1日足らずでなんとかコンピュータが動くところまでこぎつけ、被災者支援システムの構築にとりかかることができたわけです。

2. 40万枚以上の被災者証明書を発行

吉田氏:
私たち自治体が被災者のために何をするべきかということを考えた時に、まずは被災者救助など、人命にかかわる部分があるわけです。それから、避難所や緊急物資の問題、仮設住宅や倒壊家屋の問題、それから亡くなられた方の遺体安置の問題などやらなくてはいけないことはいくらでもあります。こういった状況の中で、何にITを使えば一番役に立てるのかを考えて選んだのが被災者支援システムで、特に被災者証明書の発行や義援金・貸付金といった分野の業務が不可欠だと判断しました。

日立:
たくさんの業務がある中で、システム構築には多くの人員をかけられなかったと思います。何名くらいで取り組まれたのでしょうか。

[写真]
地震直後の庁舎の様子

吉田氏:
被災者支援システムは2名で構築しました。先ほども申しましたが、やるべきことは山ほどありますので、ITに割くことのできる人員は非常に限られていました。

日立:
震災でひどい状況の庁舎の中で、たった2名で開発作業を行うのは大変なことですね。

吉田氏:
そんなことはありません。やはり現場での仕事が一番大変です。私たちのようなITに携わる職員が現場の方々の支援をすることは当たり前なわけで、ITで現場を支援できるというのは本望なわけです。また、すぐに開発に取り掛かれたのは西宮市がシステムを自己開発できる体制を整えていたということがあげられます。これは震災時に大変有効でした。 結局、40数万枚にのぼる被災者証明書を被災者支援システムで発行しました。手作業でやると7〜8時間の業務が、システムを使えば1時間足らずで済みますから、まさにITの特性を十分に発揮したわけです。被災者証明書に限らず、義援金や災害援護金の貸し付け金業務など、第1次義援金から、第5次義援金までの各種業務を被災者支援システムで処理しました。

図 被災者支援システム
[イメージ]被災者支援システムの説明図。被災者支援システムでは被災者証明書の処理だけではなく、被災者台帳、災害援護資金貸付金、各種義援金、各種業務記録といった処理も行なった。

3. 震災から得た教訓

日立:
そういった大変なご経験をされながら震災を乗り切ってこられたわけですが、今振り返ってみて、これは教訓になったということがあれば教えてください。

吉田氏:
昨年、台風23号が上陸した際は10年ぶりに被災者支援システムを使いましたが、10年の歳月が、震災の教訓を風化させ、被災者支援システムを活用することを忘れさせていました。災害というのは頻繁に起こるものではないのでやむをえない部分もありますが、いつ災害が起こるかわからないという前提で平常時から準備をしておく必要があることを改めて感じました。震災から10年目の2005年に台風被害の多発や新潟県中越地震といった天災があったことで、危機管理の重要さを再認識させられましたね。喉元過ぎれば熱さ忘れるではいけないなということです。

[写真]
震災で犠牲となった方の追悼の場
西宮震災記念碑公園

日立:
色々なシステムがある中で、被災者支援システムのように、重要だけれども利用頻度が低いシステムというのは存在します。こういったシステムをうまく運用していく定期訓練のようなものが必要なのかもしれないですね。

吉田氏:
西宮市では、コンピュータの障害を回復させる訓練を定期的にやっています。このおかげで震災の時は支所・サービスセンターなどの出先のコンピュータにトラブルがあっても、ある程度は職員が自分で復旧することができました。もちろん障害が発生した際はベンダの皆さんも応援してくれますが、職員自ら対応できたことは大きかったと思います。これはやはり定期的に訓練していたからこそで、こういった実践に基づいた訓練は行っていく必要がありますね。ただ、情報部門の職員に関してはこういった訓練を実施できますけれども、他部門の職員はまだできていません。これは、これからの課題だと思います。

(2005年11月11日取材)

今回は西宮市が経験した阪神・淡路大震災時の状況と、その状況に対してどのようにITを活用したかを伺いました。中でも多くの業務を処理した被災者支援システムの働きに、ITの有効性を再確認できたのではないでしょうか。また、重要なシステムも利用頻度が低いと緊急時に活用することが難しくなるという現実があり、やはり日ごろの訓練がポイントとなるようです。
次回は西宮市が災害に備えて整備しているシステムについて詳しく伺っていきます。

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