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自治体向けソリューション

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第4回 CIOの存在理由

CIOの役割は何なのか、どのような権限をもっているのかをお伺いします。

9. CIOの役割

日立:
今の長崎県におけるCIOの存在理由を端的な言葉で表すとどうですか。

島村氏:
「おかしいものはおかしい」って言う役目です。
価格が高いと思ったら高いと言い、無駄があると思ったら削る。行政の仕組みについては知らない部分もありますが言うべき事を言う。そこだけは変えません。
私のように民間から行政組織に入った者でも、2年も経つと慣れてしまいがちですが、初心忘れずです。

日立:
考え方を一貫し、民間マインドを持ちつづけるということですね。

島村氏:
その通りです。
「おかしい」って言うだけでは、職員は信頼してくれません。そこで、ビジネスモデルを呈示し、さらに特許申請するようにしています。ビジネスモデルは、やり方やルールを定着化させるいい方法です。ただし、そのためには実証を通して理解、納得してもらったうえで、権威付けを行い制度化することが必要です。
「おかしい」と文句を言うだけでは単なる評論と同じで、思いつきで怒られているように職員は感じます。しかし、ビジネスモデルにするとルールとか約束事に変わります。特許を申請しているのは、そのビジネスモデルがいいものだと納得してもらうのと併せて権威付けを行うためです。モデルが呈示されただけでは、それが正しいのか間違っているのか、最善なのかそうでないのかわかりません。特許申請することによってモデルの理解も進みますし、心理的にもいいものなんだと思えるようになります。もちろん、業務の中で成功事例をいくつも作り、思いこみから、いいものだと確信してもらいます。
特許出願後は知事に記者会見をしてもらい、ビジネスモデルがルールとして制度化されるようにします。私の発言だけでは、県の全組織は動きません。しかし、トップの後押しがあれば、全組織へ確実に波及します。県議会でも質問が出たりしました。

日立:
CIOの職務として個別の案件への関わり方について伺います。企画〜調達の段階で原課にはどれくらいのタイミングで関わられているのですか。

島村氏:
最初の企画段階と執行段階の二回です。
企画段階は、企画に無理がないのかのチェック、方法論のチェック、費用としての妥当性のチェックをします。執行段階では発注の仕方をチェックしていきます。

日立:
それには先ほどおっしゃっていたビジネスモデルが活用されるのですね。

島村氏:
そうですね。活用するというよりも制度化しているわけですから、ビジネスモデルと照らしながら進めるスタイルです。

日立:
CIOは未来永劫とまではいかなくてもかなり長い間必要なのでしょうか。短期でやるのは結構難しそうですね。やめたあとに元に戻ってしまう可能性もあるわけですし。

島村氏:
戻らないようにするためにビジネスモデルの制度化を進めているわけですが、元に戻る危険はあります。
そこでまずは、職員を信じつつ、知事にチェックをしていってもらおうと思っています。「大手だけでなく地場企業も入札に参加しているか?」や「大規模化せず、分割して発注しているか?」などを事あるたびに職員に聞くようにすれば、ビジネスモデルは制度として機能すると思います。

日立:
今、業務上の悩みや課題があれば教えてください。

[写真] 島村 秀世 氏

島村氏:
悩みというよりは孤独ということですね。これはどうしようもないですよ。一人で握らないといけないものが多いですから。

日立:
作業的にはやはり個人で行ったほうがいいのでしょうか。民間から導入する場合にチームで入るということもありえると思いますが。

島村氏:
具体的な作業段階に入ったら、チームの方が機能すると思います。ただ、思想や考え方の部分はやはりチームではなくて、個人で持つべきだと思っています。

日立:
思想がぶれてしまうと、効果が出なくなってしまいますよね。

島村氏:
その通りです。

日立:
島村さんの思想は、着任される前から固められていたのですか。

島村氏:
いえいえ、来てからですよ。でも、思想といっても私の場合はそんな難しくありません。
ついこの前(2004年3月)に総務省の委員会で説明させていただいたんですが、
一つ目は、システムが自動連係することで、手作業をなくすこと。
二つ目が、複数の業務を同時並行に処理し、トータルの処理時間を削減すること。
三つ目がオープン化を進めること。オープン化とはシステム仕様やノウハウのオープン、業務システムのオープンソース化、大手地場を同じ条件で競争させるオープン化です。

日立:
実際に固められるのにどのくらいかかりましたか。

島村氏:
考えはじめてから6ヶ月、いや9ヶ月くらいかかりました。

日立:
糸口は日ごろの活動からいくつも出てくるはずですが、やはりこの三つが大切だからこれでいこうと決断されるのにはそれくらいかかるのですね。

島村氏:
システムに携わった者なら誰でも、行政の無駄は山のように見えるはずです。ただ、その無駄を削減するだけではトータルでみた成功は難しいと思っています。目指すべきものは何かということを見つけ、それに向けた具体的な施策を実施することが重要になります。
例えば、給与計算のように長年かけて電算化が終わった業務をさらに効率化しようとして、サーバをオープン系にするなどの入替を実施するケースが多いようです。「給与計算=ホストコンピュータ=高い=無駄=入替れば効率化」と考えてしまうからです。問題はホストコンピュータにあるのではなく、給与計算をする前に各人が行う残業時間記入事務や庶務担当者のチェック、計算後の発送事務や本人からの問い合わせ事務などの手作業にあるのにそこにはなかなか目が向かないのです。

日立:
シンプルなことですよね。

島村氏:
そうなんです。でも、みんなついつい改善した業務をさらに改善することに必死になります。
「違うよ。こうですよね。」と単純に言えるもの、納得してもらえる言葉や図にするのが難しかったです。システムにはBPRとかEA (Enterprise Architecture)とか横文字がよく出てきますが、思想とは違うと思います。横文字を聞いて意味を調べて「そうだよね」とは思うものの、「腑に落ちる」という感じは抱けるでしょうか。日本人は、「腑に落ちる」気分を味わったとき初めて思想を感じるようです。職員だって同じですよ。

日立:
トップのコミットというのが重要になると思いますが、それは十分に得られていると思いますか。

島村氏:
今は十分に得られていると思います。

日立:
得られるように何かやられたのでしょうか。

島村氏:
思想を打ち出し、実践し、成果を出す。それしかありません。
電子自治体を例にとると、「他県は○○億です。長崎でもこれくらいかかります」ではなく、「この考えに基づけば、こことここが削減できます。よって○○億です。」と説明し、実際そのように動かしていくことしかありません。電子自治体は、どの県も試行錯誤なんですから手本なんてありません。納得いく思想とその実践のみです。
ビジネスモデルにしても、言うだけじゃなく実践したから制度化されたんじゃないでしょうか。

10. 国に期待すること、ベンダ・地場企業に期待すること

日立:
最後にメッセージということで、国やベンダに期待することがあればお伺いしたいのですが。

島村氏:
国に期待するのは、中央集権的にコントロールするのではなくて、地方分権に合わせ各自治体で考えさせるようにすることではないでしょうか。ただ、互いに交換する情報がバラバラでは困りますから、お互いをつなぐためのプロトコルは国が決めることだと思います。
いい例かどうかわかりませんが、車のハンドル、アクセル、ブレーキの位置はルールとして決めるが、どんな車にするかは各社のセンスであり努力に任せるということと同じです。
大手ベンダには、既得権益に固執するのではなくて、自らをオープンにし他社と切磋琢磨すると信頼が上がるということに是非気づいてほしいですね。今の状況はいびつだと思います。大手ベンダさんは誠実に提案し、十分な品質を確保したシステムを作り、安心確実な運用をしてきているのに独占と言われてます。いいかげんな事は何一つしていないし、行政側の無理難題に答えているのにです。

日立:
地場企業に対してはどうですか。チャレンジしてほしいといった感じですか。

島村氏:
チャレンジもありますが、地場企業には自立をお願いしたいです。今までは大手ベンダの傘下で、営業し開発を行ってきた「もちつもたれつ」の関係でやってくることができた。しかし、グローバル化の中で、開発の仕事はインドや中国に行こうとしています。ブロードバンド化により、リモート監視もリモート保守も自由自在で、中央ですべてコントロールできます。大手ベンダにとって地場企業の重要性は明らかに低下しています。

[写真]
平和のシンボル・平和祈念像

ならば、「頼る頼られる」の関係ではなく、互いに自立し対等な立場で競争/協力ができる形を目指すべきだと思います。地場企業は、地域にいて需要を直接聞くことができるのですから、自分で提案し仕事を獲れるチャンスは十分にあります。地域にいるというメリットがあるのにそれを放棄して、大手ベンダに提案書を書いてもらうようでは自らチャンスを逃がしているとしか思えません。

日立:
地場企業は地域にいることの利を生かしていけるという強みをもっているし、なおかつコストは当然安いですよね。

島村氏:
安いですね。
話題は変わりますが、長崎の場合、女性の「がんばり」に目を見張ることがあります。県立大学のシステムの入れ替えがあり当初13億の見積もりだったのですが、総合評価制度でプロジェクトマネージャーを選出した結果、地場企業の女性が仕事をすることになりました。この女性が、お話したビジネスモデルを用いて一つの仕事を16に分割して入札にかけ、6億までコストダウンさせてしまいました。
残念ながらすべてがうまくいったというわけではありませんが、これだけのコストダウンに成功したのです。凄いことだと思います。

日立:
慣れてわかってくると地場企業の方でもちゃんとやれるようになるということですね。
それでは今日は長い時間に渡り、貴重なお話どうもありがとうございました。

(2004年3月16日取材)

最終回はCIOの役割・存在理由などご経験にもとづいた興味深いお考えや、ベンダ・地場企業に対する期待まで詳しくお話しいただきました。民間出身のCIOならではの着眼点を活かしてはじめられましたこうした取り組みは参考になった点が多かったのではと思われます。今後も長崎県の動きに注目していきたいと思います。

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