電子町内会を基盤としたe!プロジェクトを展開
2003年(平成15年)7月の「e-Japan戦略II」と「電子政府構築計画」の策定により、日本の電子政府・自治体は、基盤整備の着実な進展を背景に、そのインフラをいかに活用するかという「利活用のフェーズ」へと移行しました。
![[イメージ]岡山県の地図での岡山市の位置](/Div/jkk/jichitai/interview/staff/staff006/image/map_s.gif)
この間、高速・大容量の光ファイバーをいち早く敷設し、「電子町内会」に代表される意欲的なコンテンツ開発に取り組んできた岡山市では、平成14年度より国が主催する「e!プロジェクト」のモデル自治体として幅広い実証実験を展開。そのプロジェクトの一端を日立製作所がお手伝いさせていただきました。
ブロードバンド・インターネットの爆発的な普及を背景に、社会の情報化とライフスタイルの変革が加速度的に進展しています。
一方、地域社会では少子・高齢化の進展、地方分権の推進、地域経済活性化など、さまざまな課題が山積し、自治体にはこれまで以上に効果的な事業と施策を選択し、迅速に課題をクリアしていくことが求められています。
そこで岡山市では、これらの課題を解決する有効な手段としてITに着目。ITを活用した市民生活の向上と地域経済の活性化を目指し、「市民と企業があたかも水道の水のように、インターネットから情報が取り出せる」ことをコンセプトとした「岡山市地域情報水道構想」を1998年に策定しました。
モデル地区となった市東部の西大寺地区と西部の御南地区に2000年から敷設が始まった高速・大容量の光ファイバー網は、現在700以上もの世帯・企業によって活用されています。
また、こうした先進的なインフラ整備とノウハウの蓄積を「市民参加型の電子自治体」の構築に生かすため、2001年より市民のIT活用能力を向上させながら、地域コミュニティの活性化を図る取り組みに着手。これが日本初の試みとなった「電子町内会」です(図1)。
図1 電子町内会のイメージ
![[イメージ]岡山市・町内会長連携システムと電子町内会システムによって、市役所、町内会長、町内会員の各々が結びついているイメージ](/Div/jkk/jichitai/interview/staff/staff006/image/zu01.gif)
![[写真]](/Div/jkk/jichitai/interview/staff/staff006/image/pic01.jpg)
岡山市企画局
情報政策部情報政策課
電子自治体担当課長
粕谷明氏
「岡山市における電子自治体ビジョンでは、『効率的な行政の実現』『行政サービスの付加価値の向上』『行政運営に関する市民の理解と参加』を基本目標としています。特に「市民の理解と参加」なしには、電子自治体は有効な機能を果たすことができません。
そこでまず、ITを活用していただくための知識を蓄積する場と、自立的なIT活用に向けて相互に支援、協調しながら、地域コミュニティを活性化できる場の双方を提供したいと考えました。前者の具体的な施策が、公民館で定期的に開催するIT講習や、情報ボランティアと市民との人的交流などの活動拠点となる市民情報コーナーの整備、市民のIT活用を支援するITヘルプセンターの設置などです。そして後者の施策として考えたのが、全世帯の約90%が参加している町内会の活動をWeb化することで、若年層を含めた幅広い層の参加を促しながら、住民の情報発信力を向上させることをねらいとした電子町内会でした。」(岡山市企画局 情報政策部 情報政策課 電子自治体担当課長 粕谷明氏)
2002年、まずは七つのモデル町内会で実証実験がスタート。市と町内会の代表者が共同作成した「わがまちの町内会ホームページ」には、町内会活動の報告や地域からの情報発信を行う外部向けのページのほか、その町内会の会員だけがアクセスできる電子回覧版・掲示板・会議室機能が備えられました。ホームページは、身近な話題から市政に対する提言まで、自由でフラットな意見交換の場であるとともに、会員の趣味やボランティア活動の報告などにも活用できるなど、リアルな日常生活とも密着したコミュニティとして機能。利用者からの反応を確かめながら、活性化のための各種イベントを開催したり、サイト機能のリニューアルを図るといった的確なフォローもあって、近隣町内会や市民からのアクセス、新たな参加希望などが徐々に増え、現在は34町内会、約1,700人もの参加者を数えるまでに拡大しました。
「この間、町内会の皆さんには事業の趣旨をご理解いただくため、何度も説明会に参加していただいたり、Webページの作成と運営、また町内会での役割分担を明確化するための調整作業などで、さまざまなご苦労をおかけしました。
いま電子町内会を通して取り組んでいる市民の情報化とは、まだほとんどの自治体が手をつけていない「最後の砦」に近い部分。ここにストレートに切り込んだわけですから、市も市民も苦労に直面するのは当たり前のことだったのかもしれません。それでも自治体が情報化に対して真剣に取り組むなら、高齢者で、しかもITに苦手意識を持っている人々と真正面から向き合わなければならないということを改めて実感しました。
それでもこの事業では、説明会やホームページ作成のお手伝いなどで、私たち職員が直接市民の皆さんと触れ合う機会が頻繁にあります。このため、庁内業務の電子化や行政手続きの電子化などでは反応が把握しにくい、皆さんの「生の声」を感じることができたのが非常に嬉しかったですね。」(粕谷氏)
こうした市民参加型のコミュニティ・ネットワークをゼロから構築した実績と、ブロードバンド・インフラの整備を背景に、岡山市は2002年、e-Japan戦略の一環として世界最先端のIT国家の姿を国民にわかりやすく提示する「e!プロジェクト」(総務省、経済産業省)の全国モデル地区の一つに選ばれました。
平成14年度の「e!プロジェクト」で岡山市は、発展型地域社会づくりのカギを握る子供・主婦・高齢者を中心とした町内会の単位で「大規模光ネット活用による市民参加型まちづくりショーケース事業」を展開。ITを活用した活力ある地域づくり、まちづくりを実現するため、「行政との連携におけるIT化(e!Public)」「学校・地域・国際間とのIT化(e!Communications)」「地域経済のIT化(e!Markets)」「地域・家庭におけるIT化(e!Homes)」という4種類の場面での実証実験を行いました。
図2 平成14年度(経済産業省)e!プロジェクト概要
![[イメージ]市や学校、商店街、住民を光ファイバーのネットワークでつなぎ、ITによるまちづくりを進めていくイメージ](/Div/jkk/jichitai/interview/staff/staff006/image/zu02.gif)
図3 平成14年度e!Public
![[イメージ]e!publicにより、行政から住民への情報発信、住民から行政への発言といった、行政と住民のコミュニケーションが活発になるイメージ](/Div/jkk/jichitai/interview/staff/staff006/image/zu03.gif)
平成14年度のe!Publicでは、パブリックコメントを収集する目的で、日立の「コミュニティメディアシステム」が利用されました。
(製品詳細:/Div/jkk/press/030122.html)
平成15年度も、各システムの機能拡張を行いながら、それぞれ継続した事業を展開。これら一連の「e!プロジェクト」を、市の協力のもと、地元企業とコンソーシアムを組みながら取りまとめたのが日立でした。
![[写真] 「Lit cafe」の様子](/Div/jkk/jichitai/interview/staff/staff006/image/lit.jpg)
岡山駅前商店街の「Lit cafe」で
展開されている「e!ショーケース」
では、e!プロジェクト各カテゴリの
実験内容の一般公開をしています。
内容としては、例えば平成15年度の「e!Public」では、市民ディレクターと町内会員が共同でバーチャルコミュニケーションのためのコンテンツ(町内会紹介ビデオ)を制作し、その制作を通して地元に対する新しい発見や見直し、リアルなコミュニケーションを実現していく過程をドキュメントタッチで映像化。このビデオ紹介手法コンテンツにより、地域情報発信映像の制作促進を図りました。
また「e!Communications」では、国際友好交流都市である台湾・新竹市とTV会議システムを利用した岡山−新竹間のリアルタイム交流を実施し、岡山側(かわい保育園)と新竹側(光復高級中學附設托兒所)の親密な交流を促進しました。
そして、これらの事業内容をショールーム「e!ショーケース」とポータルサイトから、岡山市内外に幅広くご紹介しました。
図4 平成15年度e!プロジェクト概要
![[イメージ]平成14年度のe!プロジェクトで開発・整備したシステムをベースに、さらなる拡張、および住民への理解を促進を進めるイメージ](/Div/jkk/jichitai/interview/staff/staff006/image/zu04.gif)
「例えばe!Publicで町内会が主体となって作った動画コンテンツを見て、『自分たちの住んでいる場所の価値を再発見した』という意見が数多く寄せられました。作った人にとっても、活発な意見交換とビデオ製作の過程を通して、故郷を愛する気持ち、自慢したい気持ち、住民どうしのコミュニケーションの素晴らしさを再認識できたのは、この事業の大きな成果だったと思います。これだけ広範囲なe!プロジェクトを取りまとめることができたのは、やはり日立の総合力があったからでしょう。そのノウハウとパワー、住民とのコミュニケーションなどには、さまざまな場面で大いに助けられました。特に住民との調整や住民サポートといった、いちばん現場寄りの部分まで対応してくれた真摯な姿勢には非常に感謝しています。」(粕谷氏)
![[写真]](/Div/jkk/jichitai/interview/staff/staff006/image/pic02.jpg)
岡山市企画局
情報政策部
情報政策課主事
岡山博林氏
そして同じくe!プロジェクトに従事した岡山博林氏(情報政策課主事)も、「一般的にベンダーは、システムは請け負うが、現場のことは「市にお任せ」するという姿勢になりがちです。しかし、新しい事業では自治体にとっても市民と触れ合う場面を多く設けることが重要であり、市民であるエンドユーザのニーズを把握するには、自治体とベンダーが一体となって考え、行動する視点が重要です。」と語ります。
また粕谷氏も、「住民に利することなら、行政、民間を意識することなく、同じ目的を持ったフラットな関係で事業を推進していくのがいちばん。」と強調します。
今後は電子町内会やe!プロジェクトで蓄積された、市民のIT活用のベクトルを、行政運営に関する市民の理解・参加へと、いかに融合させていくかが課題になると語る粕谷氏。その先進的でチャレンジングな電子自治体の構築を、これからも日立は強力に支援していきたいと思います。
(2004年2月3日取材)
本サイトにて、「岡山市 萩原誠司市長へのインタビュー」も掲載しておりますので、そちらも是非ご覧下さい。