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自治体向けソリューション

第2回 実現に向けた課題1「技術面の課題」

1. データベースの疎結合がカギになる

「DB同士を疎結合して、データを相互に利用できるように。この技術開発は非常に大切です。」

日立:
第1回でお聞きした事例のような次世代電子行政サービスを実現していくためには、さまざまな課題をクリアしなければならないと思います。まず、技術面の課題から教えてください。

[写真]東京大学大学院情報学環 須藤修 教授

須藤修 教授:
特に重要な技術としては、データベース(DB)の疎結合が挙げられます。部門をまたいだワンストップサービスを実現したいと考えたときに、各部門がもっている個人情報などをお互いにマッチングしたり共有したりすることは必ず必要になります。各部門が持っているDBをすべて物理的に統合するというのは不可能だと思いますから、DB同士を疎結合して、データを相互に利用できるような仕掛けを検討していく必要があります。この技術開発は非常に大切です。

データの標準化でいえばXML技術が鍵となるでしょう。現状のシステムでは、XMLデータ同士の粒度の違いなどが問題となっているケースがかなりあります。これを安定的に操作できるようにするために、データを扱う上での共通基盤が必要だと考えています。ミドルウェアについても、現在の形態が完成された技術ではないと思っています。SOAなどの分野に関しては、まだ進化の余地があるのではないでしょうか。

日立:
複数のDBを疎結合させるためにデータ同士の整合性をとるというのは、これは簡単なことではありません。ある二つのデータを「何を持って同一とみなすか」という判断は、実は業務によってケースバイケースであったりすると思います。技術屋としてはやりがいがあるなと思う反面、なかなか難しいなあと感じてしまいます。

須藤氏:
そうですね。XMLで言えば、スキーマを厳密に定義しておく必要がありますし、「方言(ローカルな文法規則)を作るな」といったようなルールを徹底しなければならない。ただ、疎結合という観点で言えば、定義の異なるXMLが動くのは悪いことではないと思います。むしろ、異なるXML同士をどうやって翻訳するのか、どこまで一致していてどこからが一致していないとみなすのか、といった点を明確に定義できれば良いと思います。そういう意味では、そういった分析を行う第三者機関が必要になるかもしれません。その機関で、先ほど述べた翻訳や同一性の定義――レポジトリとでも呼ぶべきでしょうか――を貯蔵してチェックするわけです。そんなサービスがあっても良いと思います。こういった考え方はアメリカの国防総省から学びました。こちらのメンバーと国防総省のメンバーで情報交換をしていたのですが、さすがに進んでいるなという印象ですね。

日立:
なるほど。そういった優れた仕掛けが作れれば、生まれる価値は大きなものになりますね。

須藤氏:
そうですね。自治体の業務を考えてみても、そもそも税務や住記といったバックオフィスが持っているデータベースが分断されています。そのせいで窓口が業務ごとに幾つもに分かれていて、「何番窓口に行ってください」となってしまうわけです。そうではなくて、すべての窓口でデータベースがチェックできるようになれば、いわゆる「総合窓口」が実現できるんです。バックオフィスの連携ができれば、従来のようにリアルの紙ベースで申請したいという人が一つの窓口で手続きを済ませることができますし、オンラインでやりたいという人にももちろん対応できます。
今まではシステムの連携ができていなかったから、こういうワンストップの対応ができなかったわけです。個別のシステム最適化はやってきたが、連携までは実現できていなかったんですね。

[イメージ]ワンストップサービスを実現する技術要素
ワンストップサービスを実現する技術要素
(出典:次世代電子行政サービス(eワンストップサービス)の実現に向けたグランドデザイン(次世代電子行政サービス基盤等検討プロジェクトチーム) 図III-1)

2. セキュリティは、レベルに合わせて選択肢を用意することが必要

「バランスを考えたうえで何が最適化を考えるべき。大事なのはバリエーションを持たせること」

[写真]東京大学大学院情報学環 須藤修 教授

須藤氏:
セキュリティも課題のひとつに上げられます。特に、セキュリティの高さと利便性のバランスはきちんと評価する必要がありますね。例えば、クレジットカードの暗証番号は一般的に4けたの数字ですが、これで絶対に安心だと考えている人は少ないと思います。とはいえ、高い利便性があるのでみんな使っています。このように、バランスを考えたうえで何が最適化を考えるべきであって、0か100かという議論をしてはいけないと思います。
大事なのはバリエーションを持たせることです。高いセキュリティを確保しないと危ない、怖いというものにはしっかりとした仕掛けを、若干低いセキュリティでもいいから利便性が高くてスピーディな処理ができる方がいいというものにはそれなりの仕掛けを、という風に取り組むべきでしょう。そして「こういう利便性を実現するために、セキュリティはこのレベルに設定しています」ときちんと国民の皆さんに説明し、理解いただくことが大切だと思っています。

ただ、面倒くさいと思えることをやってでも、セキュリティを確保しなくてはいけない場面は当然あります。例えば個人の病歴や財産などを守るためには、きちんとしたセキュリティの仕掛けが必要です。医療やDNA関連、それに相続税や固定資産といった情報は、そう軽々しく扱えません。利用者が「不便になっても、この情報が人に見られてしまったり、盗まれてしまうよりはましだ」と思う場面を見極めて、高セキュリティな仕掛けも用意すべきと思います。

また、アメリカ政府では民間のデータベース、例えばクレジットカード会社のデータベースとか銀行のデータベースで認証されれば、公共機関の手続きでもその認証を引き継ぐという取り組みもやっています。そういう官民が認証システムで連携する、といった取り組みも拡大すべきですね。もっとフレキシブルに考えるべきだろうなと思っています。

日立:
なるほど。わかりました。セキュリティ面での課題というのは他にもありますか。

須藤氏:
そうですね。次世代電子行政サービス基盤等プロジェクトチームの会合で、ある企業の方が「特許情報とか企業秘密は、セキュリティに不安のあるインターネットではやり取りできない」とおっしゃっていました。対策として専用線を引いていらっしゃるんですね。この方は、福岡や茨城で民間向けに提供されているような仮想専用線(IP-VPN)サービスが全国的に普及することを切望されていました。今すぐに全国でというのは難しいと思いますが、ある程度ネット社会が発展してネットを介して個人情報が大量に飛びかうような時期になれば必要になってくると思います。

(2008年5月取材)

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