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自治体向けソリューション

第1回 次世代電子行政サービスの目指す姿

1. 「利用者目線」を重視

「最も重視したものが「利用者目線」です。業務中心ではなくて、国民の利益・利便性の最大化にどれだけ貢献しているのか」

日立:
本日は次世代電子行政について色々な角度からお伺いしたいと思います。まずは、今なぜ「次世代電子行政サービス」という言葉が盛んに語られるようになってきたのか教えていただけますでしょうか。

[写真]東京大学大学院情報学環 須藤修 教授

須藤修 教授:
政府のIT戦略本部が「IT新改革戦略」構想を打ち出して、約3年が経過しました。「IT新改革戦略」では、産業・公的組織・医療機関などさまざまな分野の社会的課題を解決するためにITによる構造改革を推進することが謳われています。具体的なイメージで言えば、企業における生産性向上、行政におけるサービスの質向上、行政効率の向上といったものですね。
この取り組みを評価するため、2年前に評価専門調査会が創設されトヨタ自動車の渡辺社長が会長に就任されています。また、私が電子政府改革の評価委員長に指名されました。
この評価委員会では、残念ながら「IT新改革戦略」に関する取り組みの効果はそれほど見えていないという評価をしています。

日立:
なるほど。評価専門調査会では、どのような観点で現在の取り組みを評価したのでしょうか。

須藤氏:
最も重視したものが「利用者目線」です。業務中心ではなくて、国民の利益・利便性の最大化にどれだけ貢献しているのか、ということですね。これが大前提になります。例えば官公庁のシステム最適化計画を見ると、利用者である国民や法人との接点部分ではなく、官公庁自身の内部プロセスとりわけIT周りに限った範囲で最適化が考えられています。メインフレームを維持するのか、オープンサーバー化するのか、という観点ですよね。
そうではなくて、国民や法人に対するサービスの質を高めるという観点で、利用者との接点からバックオフィスまで一気通貫で進めないといけないということです。これは縦割り組織の考え方では難しく、公的機関の業務サービス改革につながる話なので、簡単ではありません。

2. 次世代電子行政サービスの二つのビジョン「ワンストップ」と「知識社会」

日立:
では、次世代電子行政サービスでは現状で達成できていない利用者目線でのシステム構築を目指していくということでしょうか。

須藤氏:
大きくはそういうことになります。具体的なビジョンとしては二つあります。

[写真]東京大学大学院情報学環 須藤修 教授

一つ目は「ワンストップな行政サービス」の実現です。システムを連携させることで、部局間や政府機関−自治体間をまたいだ処理ができるようにしていきます。なぜ「ワンストップ」なのかといいますと、今まであった業務を単純にオンライン化して「インターネットから電子申請ができますよ」というだけでは、利用者はそれほどメリットを感じないからです。もう一歩進め、窓口へ出向く手間が省けたり、手数料が安くなったり「活用すれば経済的に得をする」というインセンティブが必要です。例えば銀行の場合、定期預金の口座を窓口で作るよりもインターネットで作った方が、金利が高く設定されます。銀行が業務を簡略化できて生産性が高まった分を受益者である預金者に還元しているわけです。この発想を行政でもとるべきだということです。

このような仕掛けには当然のことながらITの利活用が不可欠です。国や省庁間のデータ連携を推進し、官民が連携してサービスを供給できるようにすれば、国民はもっといろいろな申請サービスを受けられるようになります。

[イメージ]次世代電子行政サービス基盤のイメージ図
次世代電子行政サービス基盤のイメージ図
(出典:次世代電子行政サービス(eワンストップサービス)の実現に向けたグランドデザイン(次世代電子行政サービス基盤等検討プロジェクトチーム) 図I-3)

日立:
よくわかります。ただ、そのような高度なシステムの構築には当然コストがかかりますよね。

[写真]東京大学大学院情報学環 須藤修 教授

須藤氏:
はい。ですから、必ずしも省庁や自治体が自分でシステムを持って管理する必要はないと思っています。サーバーやデータベースなどのインフラ部分の運用はASPSaaSといった形態を利用して企業にお任せし、行政はサービスへの対価を企業に払って国民や法人にサービスを提供する、という考え方がマッチするのかなと思います。このような仕組みを前提として、ワンストップな行政サービスを提供すべきと申し上げたわけです。さらに、国民が行政を信頼し、不信感をもたないように、このような行政プロセスを可視化し、公開する努力も必要でしょうね。

日立:
ビジョンの一つ目、「ワンストップサービスの実現」はわかりました。では、もうひとつのビジョンについて教えてください。

須藤氏:
二つ目は、イノベーションを生む知識社会の創造、ということです。次世代電子行政サービスでは、本当の意味でICTを有効利用しながら知識・情報を融合させて、知識をベースにした活力ある社会、すなわち「知識社会」を創造していくことが最も重要です。クリエイティビティの高い社会と言ってもいいです。官も、民も、地域社会のコミュニティも、みんなが活性化する方向に持っていきたいと考えています。
ITを単なる効率化ではなくさまざまな分野の知識を蓄積し、連携させることに活用できれば、例えば企業は色々なアイデアをそこから引き出してどんどんイノベーションが生まれるかもしれません。さらに、官および民間企業間のコラボレーションが活性化され、新たな付加価値が生まれます。そうして生まれた新たなサービスを供給することで、企業は収益率の高い活動が可能になる。これが、二つ目の大きなビジョンですね。

3. インセンティブを実感できるサービスを

「訪問先は転入地の役所のみ1回だけ、添付書類はなし。削減できる金額の大きさもさることながら、国民にとっては時間のロスがなくなるのが嬉しいと思っています。」

日立:
今少しお話いただいたものもありますが、次世代電子行政の二つのビジョンが達成されたとき、国民あるいは企業は具体的にどのようなサービスを享受できるのでしょうか。

[写真]東京大学大学院情報学環 須藤修 教授

須藤氏:
そうですね。では具体例として、国土交通省が運営している自動車登録の電子申請システムをベースにお話ししましょう。このシステムでは、従来紙で行っていた申請をオンラインで処理できるうえ、希望するナンバープレートの申請もできるようになっており、官ができる権限の範囲を考えれば良く頑張っていると評価されるシステムです。ただ残念ながら、このシステムの利用率はあまりかんばしくありません。

なぜかと言いますと、自動車ディーラーに任せれば、行政手続も税金の処理もやってもらえるからです。自動車ディーラーがそういったサービスを提供しつつ、中古車の売買を行っているというのは、良くできた仕組みだと思います。国土交通省の提供している電子申請システムも悪いものではありませんが、これと比べてしまうとそれほど魅力的な仕組みにはうつらないでしょうね。ではどうするべきなのか。これはやはり、民間のサービスと連携する、中古車ディーラーと連携することが必要になると思います。連携した結果として、中古車ディーラーが提供するサービスがより便利になれば、みんな喜んで電子申請システムを使いますよ。それで手数料も減れば、なおのことです。

日立:
まさに先ほどおっしゃられていた「民間サービスと連携したワンストップサービス」というわけですね。

須藤氏:
はい。次世代電子行政サービスではこのような考え方を基本に据えています。この考え方の実践編として、退職手続きと引越しに関するワンストップサービス提供のプロジェクトを他の取り組みに先駆けて立ち上げています。例えば転職する際の退職手続きでは、色々な機関を訪問して15種類もの書類を提出することが必要になります。これを、訪問は公共職業安定所だけ、添付書類はなし、という形にまで持っていきたいと思っています。この取り組みで官民合わせて1,200億円のコスト削減を見込んでいます。
引越しに関しても、訪問しなければならない機関が7個所で添付書類は13種類必要になります。これも今後は、訪問先は転入地の役所のみ1回だけ、添付書類はなし、というようにします。これで年間1,000億円の削減効果が見込めます。削減できる金額の大きさもさることながら、国民にとっては時間のロスがなくなるのが嬉しいと思っています。私自身も経験がありますが、忙しい合間を縫って申請に行くのは結構なストレスですから。

[イメージ]引越ワンストップのイメージ のイメージ図
引越ワンストップのイメージ のイメージ図
(出典:次世代電子行政サービス(eワンストップサービス)の実現に向けたグランドデザイン(次世代電子行政サービス基盤等検討プロジェクトチーム) 図II-1)

この二つの取り組みのような、企業の方々にも個人の方々にも利益がはっきりと出るような形に、行政手続を変えていこうと考えています。もちろん行政内に閉じるのではなく、先ほどの自動車登録の例のように民間サービスとの連携も進めていきます。

(2008年5月取材)

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