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茨城県 橋本昌知事「元気で住みよい いばらきづくり」:第2回

誰もがうれしいと感じるITネットワーク社会づくりを目指して

第2回 誰もがうれしいと感じるITネットワーク社会づくり

第2回目の今回は、県と市町村とのパートナーシップのあり方や、最近話題のサイバー空間でのセキュリティ上の課題などについて、橋本県知事に詳しくお伺いします。

4. 市町村との共同開発成功の秘訣

日立:
全国を回っていますと、どの都道府県でも電子申請や電子入札などで市町村との共同利用を検討されているようですが、実際に実施されている県となるとまだあまりありません。それに比べ茨城県では、本当に先進的な取り組みをされていると思います。その経緯と共同利用で得た成果をご説明いただき、これから取り組まれる皆様に、課題となる点や注意すべき点を示していただければと思います。

[写真] 茨城県 橋本昌知事

橋本県知事:
どの都道府県でも共通した傾向ですが、一番の根底にあるのは地方に行けば行くほど市町村のパワーが弱くなることです。県レベルでは「e-Japan計画」などに関しても積極的に取り組めますが、市町村レベルではどうしても進捗率が低くなります。一方、県と市町村が共同で行えば、比較的低いコストで高い水準のシステム構築・運用が可能となります。もともと、本県ではさまざまな施策について県と市町村が共同で取り組んでいる事例が多く、県と市町村との友好的な関係を築いておりましたから、電子自治体の構築についても最初から一緒に取り組んでいこうということになりました。
そこで、まず共同の情報通信インフラが必要ということで、「いばらきブロードバンドネットワーク(IBBN)」(*1)を整備することになったわけです。この時、整備費や運営費も共同で負担できないかという発想を持ちましたが、各市町村では運営費はともかく、整備費についてはなかなか手が回らない、あるいはこうした整備の必要性はわかっても、すぐに必要かどうかがわからないと、逡巡される場合があります。
そこで、茨城県市町村振興協会がもっている基金を使用することを前提として話を始めました。この基金を使えば、市町村サイドはそれほど抵抗感を持たずに県と一緒に協力していただけるだろうと考えたからです。
それから、県から市町村に対してきめ細かな説明やフォローを随時行ってきましたし、町村会や市長会でも講師を呼んで勉強会を開催していただきました。このような形で足並みを揃えて進めてきた結果、全国で初めて県と全市町村との共同による情報通信基盤を整備することができたのです。

日立:
市町村との共同アプリケーションの構築という点では、いかがですか。

橋本県知事:
例えば、「いばらき電子申請・届出サービス」などは、共同利用方式としては全国で2番目と、他の自治体の先陣を切る形でスタートすることができました。
この共同利用のシステムを構築・運用する上で最大のハードルとなるのは、すべての参加団体が納得できる費用負担のルールづくりです。多くの都道府県ではこの費用負担のルールづくりに腐心されていると伺っていますが、本県ではIBBNの費用負担ルールが前例にありましたので、比較的スムーズにルールを作ることができました。そして、このル−ルの詳細について共同利用と単独利用それぞれの場合での1市町村当りの負担額を比較提示し、いかに共同利用が効率的であるかを十分説明することにより、全市町村から同意を得ることができました。
次に、様式や申請内容などの標準化作業が問題となりました。各市町村で用いられている様式や手続フローは、試行錯誤の結果、今の形に辿りついたものであり、各市町村にとってはそれが最もふさわしいものに違いありません。それをオンライン化のためとはいえ、全市町村共通のものとして一本化するわけですから、手続きの担当窓口は相当困惑するものと思います。一方、誰もが利用しやすく、必要以上に経費がかからないようにするためには、できる限りスリムなシステムにする必要があります。また、今後の行政全体の業務の見直しにも多大な影響を及ぼすことから、市町村の要望を十分踏まえたうえで徹底的に標準化を進めていく覚悟が求められることになります。
そのほか、共同利用を進める上では主導的な立場にある県の意向が強く働く傾向にありますが、できるだけ多くの市町村に検討の場に直接参加していただきながら、市町村の意向を最大限に反映させるとともに、お互いに責任と義務をきちんと果たしていくことが必要と考えております。

5. 利用しやすいシステムづくり

日立:
ITの利活用では、行政側も単にITを導入するだけではなく、帳票や様式の統一、あるいは庁内の多くの業務に対してBPR(Business Process Reengineering)などを併せて実施することが、非常に重要なポイントになると思います。その辺りは、どのように対応されていますか。

橋本県知事:
現在、税金関係の証明を例にとっても、市町村ごとに申請様式が違っていて大変だという議論があるわけですが、そうした申請様式の統一を進めるきっかけとして、一方では、グローバル化の進展やオンライン手続の普及が考えられます。
例えば、海外貿易の場合、外国の船舶が入港時に必要な手続きを船の上からすべてできるシステムになってきています。もしも、日本でこのような手続きができなければ、日本は住みにくい、仕事がやりにくいと、国際的な評判も落ちてしまいます。欧米並にインターネットでほとんどの届出ができるようにするには、どうしても行政側が変わらざるを得ません。そこを端緒にすることで、県民や民間企業に対する利便性も向上できると考えています。
本県でも、目下最大の課題は、いかにサービスの利用率を高めていくかに尽きます。利用率を高めることが県や市町村のBPRにつながってきますので、今後さまざまな利用促進策を進めていかなければなりません。
県民の利便性向上の観点から、手続きのワンストップ化ということを念頭に置いて、手数料決済機能や代理機能をシステムに加えながら、オンライン化できる手続きを増やしていきたいと思っています。

日立:
それと、ITを利用する際の垣根を少しでも低くするには、たとえばテレビ電話を使って操作方法をガイドするなど、デジタルデバイドといった情報格差を少なくする工夫も必要になってきますね。

橋本県知事:
実際に使っていただいて、やはり難しいと感じる方がたくさんいらっしゃいます。今後、どうやって利用者を増やしていくのか、ということを考えると、今よりも使いやすいハードやソフトを作っていただくことが重要だと思います。
その背景には、高齢化と市町村合併があります。これから合併が進めば、どうしても本庁舎は遠くになります。お年寄りにすれば、その遠くなった所へ、ちょっとした届出のためにいちいち行かなければならないのか、という気持ちになるはずです。それがインターネットを使って、全部自宅から、あるいは近くの施設からできれば、大変便利になります。お年寄りが集まる際の会場予約もネットワーク経由でできるわけですから。ところが、こういったシステムをどうやって使えばよいかがわからないのでは、絵に描いた餅です。 いずれにしろ、今後はIT化がますます必要な社会になることだけは明白ですから、システムの構築を進めると同時に、利活用をどう進めるかを絶えず考えていかなければいけません。

日立:
それに加えて、皆様にサイバー空間に入っていただいた後、安心できる対策が必要になってきますね。

[写真] 茨城県 橋本昌知事

橋本県知事:
このところ、NHKのニュースや「クローズアップ現代」という番組でもやっていましたが、フィッシング(Phishing)詐欺という問題が出てきました。
これは犯罪者が、クレジット会社や銀行のホームページとそっくりな偽のホームページを作って、言葉巧みに「あなたのカードナンバーを教えてください」などと誘うわけです。見た目には偽物だとわかりませんから、本物から照会されたと信じ込んで、個人情報を打ち込んでしまいます。すると、それが犯罪者の手元に届いてしまう。
日本ではこのフィッシング詐欺が昨年から出始めたということですが、アメリカでは数年先には年間被害額が百億ドルを超えるという試算があるそうです。日本でも、これからかなりの勢いで起きてくる可能性が高い状況です。
振り込め詐欺なら、何となく怪しいと気づけますが、このフィッシング詐欺はなかなか見分け方が難しい。ですから、尋ねられるままに、カードの内容や生年月日など、全部を教えてしまいかねません。重要な個人情報を手に入れられてしまったら、どんなことをされるかわからない状況になります。
こちらが便利だ便利だと宣伝をしても、そうしたニュースを聞くだけで、IT社会に対する不安感は募る一方です。お年寄りに、そうしたサイバー空間の危険性に対して、「これはこう防いでください」と伝えても、「私らにはそんな難しいことを言われてもわからない」と、敬遠されるに決まっています。ですから、システム的に防げるようにしないといけないと考えています。そうした面で、是非、各企業の皆様にも、安全・安心なIT社会というものを築くために一層の努力をしてもらいたいと考えています。

6. IT企業に求めるもの

日立:
今ご指摘いただいたような情報セキュリティの問題点などを含めまして、今後、我々IT企業がどうお手伝いしていけばいいのか、あるいはこういう方面に進んで欲しいということを、最後にお聞かせいただけますか。

橋本県知事:
重要なことなので繰り返しますが、やはり安心して、安全に使えるということに尽きると思います。先程のフィッシング詐欺のような巧妙なネット犯罪が、もし日本で多く発生するようになってしまえば、かなりの人が利活用を控えてしまいます。警察庁のサイバーフォースなども動いてくれるはずですが、IT企業の皆様にも、早めに押さえ込む方法を開発していただきたい。加えて、ハードやソフトがどんどんと複雑化しているという問題にも対処していただきたいと思います。
ユニバーサルデザインということで、お年寄りに限りませんが、最初から使う人が使いたい機能だけを盛り込んだものであれば、現状よりも安く提供していただけることにも通じると思います。高価で多機能でも、実際はその75%は使っていないということはいくらでもありますから、そうした工夫を是非していただきたいものです。
それと、日常生活とどれだけ結びついた提案ができるかも、とても大事だと思います。たとえば、20年くらい前から博覧会などがあるたびに、いくつかのパビリオンでは未来の家庭生活として血圧を測って、どこかに登録をするという健康管理の提案が行われています。ところが、いつになっても実用化されていない。
あるいは、外出先から電話でお風呂を沸かせるという話は、もう10年も15年も以前から言われていますが、これもなかなか一般化していません。
そうした提案に意味があるかどうかも含めて、使う側に本当にメリットのあるものとしてIT企業の皆様がさまざまな利用方法を提示できるかどうか、ですね。我々も「つくばエクスプレス」の沿線に、IT社会のモデルハウスを作れないかと、現在、提案をしています。本当は、いろいろな企業が考えているものをトータルにして県民に提案できると良いのですが、まずは一部の企業と話を進めており、IT利用の最先端のモデルハウスが一戸できる予定です。そういったものも参考にされて、いろいろと開発を進められることを期待しています。

日立:
私どもとしましても、実際利用されている方々とご一緒にシステム開発を進めさせていただければと思っております。実際に使っていただく県民の皆様、あるいはそれをサポートしていただく県や市町村の職員の方々と、使い勝手を含めまして、ご協力をいただきながら、ご一緒に考えさせていただけると、非常に良いものができると思います。

橋本県知事:
本県には、IT社会の急速な進展に対応するため、さまざまな対策を検討する「IT戦略会議」というものを設けておりまして、日立製作所さんを初めとする県内の産・学各界の方にもご協力をいただいて、平成18年度以降の本県の新たなIT戦略について議論していただいております。今のところ、基盤の整備という面ではかなり進んでいると思いますが、今後は、これをより有効に活用できるように努力してまいりたいと考えています。

日立:
わかりました。本日は、大変お忙しい中を、いろいろと貴重なお話を伺うことができました。どうもありがとうございました。

(2005年2月8日取材)

IT企業に対する鋭いご指摘もいただきましたが、「元気で住みよい いばらきづくり」を目指して地域経営を進められている橋本県知事からのメッセージは、多くの皆様にとって示唆に富んだ内容になったのではないでしょうか。

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